続
今、何時だ。
すごく喉が渇いてる。
枕元の携帯を探そうとしたら予想していたものとはまったく違う感触に驚く。
「ん、なまえさんまだ寝てていいよ。俺ちゃんと起こしてあげるし」
「ま、なみさん…」
声が枯れている。
そうだ。そうだった。
なんだか凄く屈辱的なことがあった。
体だけでなく自分の心の中までもぐちゃぐちゃにされるような。
それでも久しぶりに肌を重ねて少し満足してしまっている自分もいてなんと情けない。
自分はやっぱり人肌が恋しかったなんて、知りたくなかった。
「はぁ」
「ちょっと、あれだけ気持ちいいことした後に溜め息は聞きたくないなぁ」
「まなみさんうるさい。7じにおこして」
「いいよ」
行為中に散々真波さんに対して暴言を浴びせたからか、最早うるさいごときでは何とも思わないのだろうか。
声色が優しいのもなんかむかついてしまう。
どういうつもりなのか、わからないから嫌だ。
「まなみさん喉かわいた」
「はいはい、台所適当にさわるね」
また優しい声色だ。
なんかグラグラするからやめて欲しい。
自分への好意を試したくなってしまう。
水の入ったグラスを片手に持ってきた真波さんをジっと見つめる。
「はは、俺なりにちょっと反省してるんだよ。何せあんなに罵声浴びるの初めてだし」
「これだからイケメンは」
「でも俺のことちゃんと意識してくれたでしょう」
差し出されたグラスを取り一気に飲み干す。
いつの間にかお互いに砕けた言葉で話しているのが可笑しかった。
あんな行為でここまで距離が縮むのか。
確かに言う通りただのイケメンというカテゴリーから真波さんという独立した存在にはなった。
それがちょっとどうかしてる遅漏、絶倫、巨根だとしても。
「俺だって女の人を抱くときはもうちょっと時間かけるんだけど思ったより自制が効かなくてさ」
「そう言ったら私が喜ぶと思って言ってるの」
「もちろん期待させてみたいのもあるけど、事実だよ」
「その、〜してみたいって実験されてるみたいですごく嫌だ」
「だってなまえさんの反応面白いし」
「イケメンは全ての現象が自分のためにあるとでも思ってるのかな。むかつく」
「ほら、そういうとこ。でもイケメンは好きじゃん」
そりゃ、好きだ。
ちょっと私のこと解り始めているのもむかつく。
やはり楽しそうな表情に優しい声。
そりゃ、好きだ。
「黙っちゃうのかわいいね」
好きって言ってるようなもんじゃん、とささやきながら自然に近付いてくる顔。
なにかこの顔に強制力でもあるのか吸い込まれそうになる。
唇どうしが擦りあって気持ちいい。
ハムハムされてる。
気持ちいいけど眠気が襲う。
「もうむり、ねる」
「えー俺ちょっとたっちゃったんだけど」
「勘弁してよ」
殺す気か!
もうすでに腰が壊滅的に痛いのに。