孤独がふたつ
早朝、初めて夫の墓参りに行く。
野菊を持って村の西へ、少し遠い。
墓地の一際大きな墓が嫁ぎ先だった家のものだ。
近付くと墓の前になんと狼がいた。
たぶん山で会った狼だ。あの時と同じように身体を横たえている。
「…お墓参りかしら」
驚きはしたもののやはり狼に警戒心は無いようでこちらも好きにやらせてもらう。
その横を通りすぎ花を手向けた。
「山で狼に会った話を聞いて頂こうと思って来たんです。でももう狼のことはご存知ですね」
狼の耳がピクピク動いた。
まるでこちらの話がわかるみたいで少し笑ってしまう。
「でも狼以外にも不思議なことがあったんです。秘密にするには荷が重いから聞いて下さい」
そして山神様と御使いの天狗のことをこっそり話した。狼はそわそわ周りを気にしていた気がする。
「怪我も痛みがひいてきたので明日からまた薬草採りを再開しようと思います。じゃあ、また」
墓前でこっそり話した。
「狼さんもまたね」
少し出来心で話しかけてみたら驚いたようにこちらを見た。やっぱり言葉がわかるのかな。賢い。
そして何故だろう。この狼には初めからどうしてか親近感を持っていた。寄り添いたくなるような、、
「なんだか突然不思議なことばかりです」
笑われた気がした。