呪縛を紐解く



「あれから街に戻った巻島さんが倒れてしまってまだ目が覚めないんです。そこに狙ったみたいに御堂筋が現れて、」

先日追いかけられた怪物だ。
思い出しただけでもゾッとする。


「とりあえず新開さんが間一髪で巻島さんを街から近い金城寺に運んで匿って貰っています」

「きっと荒北さんにやられた傷を癒すために大物の獣を食べたいんだね。金城寺には山神様と同じくらい強い大蛇が生きながらに祀られているからあの御堂筋でも絶対近寄れない。一先ず安心して大丈夫だよ」


真波くんが落ち着かせようとゆっくりと説明してくれる。
今は荒北さんも万全の状態ではないし、こんな私に何が出来るだろう。



「それで名前さんにお願いがあるんです。この御山の薬草を採って頂きたいんです」


「そんなの、御安いご用です!」


「よかった。実は巻島さんは今まで呪い返しの症状を名前さんが持ってくる薬草で緩和してたみたいで」

そうだったのか。
ここ1ヶ月ほどまともに売りに行けてなかったから巻島さんは倒れてしまったのかもしれない。とはいえ福富家の後継が絶たれた今、巻島さんは呪う必要はないし、荒北さんも呪いを跳ね返す必要がない。
きっと薬草で今の症状が落ち着いたらその後はもう呪いで誰かが苦しむことはないだろう。


「名前ちゃん、この御山で山神様の恩恵を頂けるのはこの集落の人間だけなんだ。だから名前ちゃんが採った薬草じゃないと意味がないんだよ」

「なんでそんなこと」

「それが福富家の罪なんだ。
東堂さんが神に召し上げられるとき力の象徴である角を奪って無理やり契約を結んだ。僕はもともと只の雀だったけど行き場をなくした山神様の気を吸って天狗になったから記憶も気持ちも少しわかるんだ」


あの角は人間によって奪われたものだったのか。きっと大きくて美しい鹿だったと想像できるような立派な角だった。


「角を揃えて山神様にお返しすることって出来るかな…」

「名前ちゃんなら出来るし、みんなそれを望んでいるよ」

もちろん荒北さんも、と言った真波くん。
荒北さんと山神様、どちらも人間の都合で魂を縛られてしまった存在。立場は違えど解り合える関係だったのだろうと思うと何だか胸がぎゅっと締め付けられる。


「薬草とってくるね!」









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