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「あれ、荒北さん、」
「なんつータイミングっしょ、通りで最近呪い返しの症状が出ないわけだ」
「どうして、ですか」
なんで。
寿一さんのお父さんは頭を下げて両手を合わせて何か唱えてる。その後ろにお母さんも来て同じようにしる。
「巻島さんのせいですか、」
「原因は俺だが、自業自得ってやつだな」
「どういう意味ですか」
「福富寿一が死んだことで俺の呪いがお前にいくとでも思ったんだろ、いつも通り呪い返しすればいいのに自分で食らった結果だ。荒北は福富家しか守れねーからな」
そんな
寿一さんの想いを、私が、
荒北さんが、
「名前ちゃん!」
「ま、なみくん」
急に部屋に飛び込んで来たのは真波君だった。
荒北さんのご本尊が粉々に砕けているのを見て何か合点がいったらしい。
「…やっぱり。
名前ちゃん泣かないで。荒北さんの姿はなくなっちゃったけど気配はあるよ。きっと大丈夫」
そこで寿一さんのお父さんとお母さんが唱える声がより一層大きくなった。
「名前ちゃん、今はとにかく荒北さんの存在を信じて」
真波君が大丈夫って言ってるんだ、きっと山神様もそう思ってる。大丈夫。
目を瞑って自分に言い聞かせる。
大丈夫。
すると私の心の中で小さな狼が寂しそうに丸まっているのが見えた気がした。
いとおしい狼を抱きしめたい、
そんな感覚で見えない何かを腕の中へ抱き込む。
さっき全部が終わったら伝えようと思ったけど、これで繋ぎ留めることができるのなら。
「荒北さん、
私の家族になって」