うさぎ



目覚めると狼はいなくて何故か兎がいた。

「は、うさぎ?」

「おめさん、ちょいと一緒に来てくれねぇかい」

小さい体がちょこんと私の前に佇んでいる。
可愛いらしい見た目に反して町で見るような色男みたいな喋り方だ。

「どちら様?」

「説明は後だ、取りあえず着いてきてくれ」

ぴょこり、方向転換してこちらを振り向く。
かわいい。
ただそれだけの理由で着いていこうと思った。





山神様の屋敷は大きい。
入ったことのない部屋だらけだし、こんなに中を歩くのは初めてだ。

「ここだ」

兎に続いて部屋に入ると大きな祭壇があり、古びれておらずよく手入れされているのがわかる。

「これは、山神様の、、」

「そうだ、祭壇に祀られている物が見えるかい」

兎と一緒に部屋の奥へ足を進めると、祭壇の中心にある物が見えた。

「…角?」


鹿のような枝分かれした大きくて立派な角だ。
でも、

「どうして一本だけなの」

「この片角はおめさん達の言う山神のものだ」

「え、」

どういうことだ。
山神様って元々は生き物なのか。

「俺や真波はこのもう一本を探してる」

「…どうして?」

「知りたかったら一緒に来てもらうぜ、巻島のところへ」



この兎、さっきから肝心な事は教えてくれない。
でも荒北さんに蜘蛛と言われていた巻島さんの事は気になる。そして巻島さんに言われたことも。

「荒北が気付く前に決めてくれ」

「行きますよ」



現状を変える、きっとこれが私に求められてることだ。







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テーマ「人外ファンタジー」
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