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幼い寿一さんが狼の背に乗って遊んでる夢をみた。
「あ、らきた、さん?」
夢の中の幼い寿一さんが非常に可愛らしかった。
凛々しい眉は幼い頃から凛々しかった。
「呼んだか」
夢の余韻を楽しんでいるとトコトコ近付いてきた狼の荒北さん。
狼の姿で喋るのは初めて見た。
「あの、とりあえず触らせて」
すごい嫌な顔してるので返事は聞かずに触ります。
初めて会ったときからずっと触りたかったのだ。
ああ、ふあふあ。
耳の後ろが気持ちいいらしい。
「狼の荒北さんかわいいなあ」
フスっと鼻を鳴らしてそっぽ向いてしまった。
照れ屋さんめ。
「夢で幼い寿一さんが狼の背に乗って遊んでました」
荒北さんですよね?
なんて聞いてしまったら野暮だろうか。
いつになったら全てを知ることが出来るのか。
「…懐かしいな」
狼の眼が細められた。
ここまで巻き込まれたのだから真実を知る権利くらいあるだろうと思っていた。
でも荒北さんや山神様にとっては単なる記憶ではなく思い出なんだ、それを簡単にこじ開けることは私にはできない。
額を撫でると気持ちよさそうに眼を瞑る。
初めと比べると随分と無防備だ。
「名前さん!?」
縁側の軋む音に振り替えると元義理の母がいた。