口から手が出る程に
「荒北先生の家に泊まった!?」
「だから先輩声大きいです」
昨日は事実何も起こらず、ただのお泊まりだった。
先輩には隠す必要もないから正直に話したところとても驚かせてしまった。そりゃそうだ。私だってまさか荒北先生の家に泊まるなんて思ってもみなかったし。
「20代後半の男女が同じ部屋で一夜を過ごして何もなかった訳?」
「ほんとに何も無かったです。残念なくらいに」
ほんとに残念だ。
あの後荒北先生に欲情して火照った身体がなかなか治まらず冷たいシャワーまで浴びたのだ。
「ていうか彼氏いるのに違う男の家に泊まるなんて…」
「別れましたよ?」
「は!?じゃあ別れてその後泊まったてこと?」
「まあ、そんな感じです」
「それもそれで問題ありな気がするわ」
先輩さっきから声大きいんだけど荒北先生のファンに聞かれたらどうすんだ。睨まれたら嫌だな。
「何の話してんの名字ちゃん」
「…珍しいですね。荒北先生がナースステーションに立ち寄るなんて」
いつも素通りなのに。
ああ、隣の先輩がギョッとしてる。
「名字ちゃんと仲を深めようと思って」
「とても目立つのでこんなところで止めて下さい」
「昨日と違ってつれねェな。またウチ来る?」
「…」
行きたいという言葉が出かかったがなんとか飲み込んだ。
行ってどうする?
また熱をもて余すのは勘弁だ。
この人は私とどういう関係になりたいのかよくわからない。
「今度は好きにしていいヨ」
「…誘われてるんですかね、私」
「名前ちゃん私に聞かないで」
先輩ごめんあそばせ。
つまりそういうことで良いのだろうか。
身体が荒北先生に反応してしまうのだからこの際気持ちのことなんて考えてない。後から付いてくるでしょ。
「じゃあ今度休みが重なったときに。」
「ん、連絡先交換ネ」