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荒北先生の部屋はなんというか、意外と生活感があった。
キッチンも普段からよく使ってるように見えるし窓辺にはサボテンまで置いてある。
「サボテン、お花咲いてますね」
「可愛いデショ。で、名字チャンは酔った俺に引きずられて来ちゃったワケ?」
「そうですね」
「悪かったな。でも名字チャンが目の前にいてビビった」
「あの、荒北先生なんで私のこと知ってるんですか?」
「…有名だから」
「?」
「目が死んでる美人ってなァ」
それ犬山君にも言われた。
いやしかし無愛想な凄腕の荒北先生に言われたくない。どっこいどっこいだ。
「でもさ、俺の首見てたときの目は生きてたヨ?」
「はい?」
「だから一瞬誰かわかんなかった。ギラギラした美人がいんなって思った」
もしかして喉仏を見てたときだろうか。
思い出して再び荒北先生の首に目をやると何故だかそこに唇を押し付けたくなった。
「そう、その目。」
そう言って目尻を親指でなぞられる。
堪らなくなって口を開くとその口を人差し指で止められた。
オアズケらしい。
散々枯れてると言われた私がこんなに悶々としているなんて。
「名字チャン可愛いネ」
でも今日はオヤスミィ。