送り羊?
「犬山の彼女って名字さんだったのか〜」
「さっき別れましたけど」
何故かどっと笑う外科の先生方。
医者の恋愛なんてそんなもんだと背中をバシバシ叩かれる。
「ちょっと待て名字!俺は彼氏いるなんて聞いてないぞ!?」
「東堂先生に言う必要ありました?ていうかなんでいるんですか、あんた麻酔医でしょ」
「荒北に誘われたのだよ!」
ビシィ!と東堂先生に指さされた荒北先生は歳上の先生方に酔い潰されていた。
普段の無愛想なイメージしかなかったから新鮮だ。
あれ、ていうか皆さん飲んでて大丈夫なんでしょうか。明日も仕事なんじゃ…
「明日昼から仕事あるやつそろそろ帰れよー」
当直と朝からの方は来てないのか。そりゃそうか。
「私昼からあるんで帰りますね。」
「じゃあこいつも連れて帰ってやってよ」
そう言って押し付けられたのはベロンベロンに酔った荒北先生だった。
「え、」
「こいつのことよろしく頼むな〜」
あー。なんて面倒な。
全力でもたれ掛かってくる荒北先生の腕を肩にかけ店を出る。普通私に頼むかこれ。
「荒北先生、大丈夫ですか?」
「…あ?」
「家はどちらでしょうか」
聞くと病院のすぐ近くのマンションだった。よし
タクシーだ。タクシーに荒北先生ぶちこんでサヨナラだ。
「今タクシー呼びますからねー」
「んあー、歩いて帰るからイラネ。ほらコッチ」
「は?」
何故か私の手を引いてふらふら歩き始めた。
どうやらまだまだ帰れなそう。