腹黒ワンコ
結果から言うと研修医君はとってもいい子だった。
仕事終わりに電話でいつ会えるか聞くと「今すぐ行きます!」とダッシュで病院の最寄り駅までやって来た。
外科の先生方と病院の近くの居酒屋にいたらしい。
「別れよ?」
「…え、ええええ!?」
「自分で言うのも可笑しいけど私ってなんか落ちついてるっていうか何ていうかさ」
「ずばり枯れてますよね!名前さんって!」
「ええええ。お前この野郎」
とりあえずグーパンチだ。
笑顔で生意気言う研修医君、結構気に入ってるけど今回ばかりは流石に殴ってしまった。
「あははは、すいません」
「まあ解ってるなら話は早い。
だから犬山君の有り余る生命力に着いていけないの。枯れてるから」
「温度差はありますもんねー。
でも俺名前さんの枯れてるところも含めて大好きなのに」
「犬山君って可愛い顔して腹黒いよね。私そんなところも含めて気に入ってるよ」
「えへへ」
「ははは」
今更だけど研修医君こと犬山君はただの可愛い後輩タイプではないのだ。
「で、別れよ?」
「名前さん、すごく軽いノリで告白OKしてくれたからいつフラれてもいい覚悟はしてたけどやっぱ落ち込むなー。これからも構ってくれます?」
「私犬山君のこと可愛がりたい気持ちは変わってないからね、もちろん」
「じゃあ、しょうがなく!しょうがなく別れてあげます」
「よしよし。いい子」
腹黒ワンコと穏便に別れることが出来ました。
「フラれれちゃったし飲み屋戻ろうかな。
あ、名前さんも行きません?」
「私は良いけど外科の先生方に悪いよ」
「そんなことないっすよ?名前さん来たらみなさん喜びます」
「いやいや別れたてホヤホヤの元カップルなんて皆さん気を使うでしょうが」
「外科に気を使うような出来た人間いないんで!!心配無用っす!」
失礼だな。仮にも上司でしょう。
お酒飲みたいから行くけども。