君の涙の塩辛さも愛しくて
珍しく荒北先生が落ち込んでいる。
私と違って精神的コントロールがとても上手だと日頃から思っていたので驚きだ。
さっきからくっつき虫のようにひっついてくる先生の頭を撫でれば素直に擦りよってくる。
相当きてるのかな。かわいいけど。
「いつもと逆ですね」
「ンー」
医者なんてたまには色々とっぱらって裸にならなきゃやってられない仕事だ。
そのためのロードみたいだけど、今回はロードでは済まないようなストレスを抱えているみたい。
「大丈夫」
「…」
「なんて無責任ですね、ごめんなさい」
「それ、もっかい言ってェ」
ゴロンと私の膝を枕にして寝転がって下からじっと見つめられる。
すごい甘え方。
「大丈夫です」
「ン」
なんか靖友さんには申し訳ないけど可愛くて、おでこにキスしちゃった。
普段私が甘えてしまうとき、靖友さんもこんな風に感じてるのかな。
こう、何かに躓いたり憤りを感じたり、現在進行形で生きてる姿が愛しくて仕方ないような気持ち。
「名字ちゃんの言葉なら無責任でも何だって呑み込めちまうナァ…」
いつもより低くて掠れた声だ。
泣いてしまわないようにまた頭を撫でてキスをすれば
それは逆効果だった。