至高、日常のマリア
「で、そんなやり取りしておいて結婚っていう選択肢はないわけ?」
「結婚…?」
今日は先輩と休みが重なったから久し振りにランチに美味しいパスタを食べに来ている。
案の定、先日のクルージングパーティーでの様子を斉藤先生に聞いた先輩には心配をかけてしまったらしい。
それにしても結婚なんて考えたこともなかった。
「結婚して、関係って何か変わるんでしょうか…」
「私はかなり精神的に落ち着いたわ。これ以上に好い人はいないってくらいの人に出会えたからさ、もう探さなくてもいいっていう安心感があったな。医療関係者同士だから同じ屋根の下にいても中々顔を合わせることってできないけどね」
「相性のいい人と出逢うって幸せなことだなって思います」
「うん、だからほんとにお互い楽してる。お互い忙しいのが好きだから理解しあえるし、子どもは絶対欲しい訳じゃないって言ってくれるから仕事続けられる。でも最近はちょっと子ども欲しいなって思うの」
そう言った先輩は何だか神聖でいつも以上に綺麗に見えた。
「子ども…」
想像も出来ない。荒北先生にくっついてることしか考えてなかった。自分のことでいっぱいいっぱいだ。
また悩んでしまうのは嫌だから今はまだそれだけ考えていよう。
焦らなくたって荒北先生はどこにも行かないし。
「名前ちゃん、表情豊かになったね」
「?」
「顔見てたらなに考えてるのか大体わかった。荒北先生も名前ちゃんも付き合い出したころから大分雰囲気柔らかくなったよ」
それは自覚があるかも…。
「悩むことが増えて不安定になりやすくなったんですけどね。なんかそれのせいか感情も出やすくなった気がします」
「うんうん、私は嬉しい」
「あの、先輩と斉藤先生の子ども、絶対可愛いと思います。すごく見たくなっちゃいました」
「いつになるかはわかんないけど楽しみにしてて」
うん、やっぱり綺麗。