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彼女の印象といえば真面目で一生懸命、そして空回り。特別関わりがあるわけでもなくただの仕事仲間。

「ずっと前から好きでした」

そんな後輩ナースに告白された。

「もちろん荒北先生とお付き合いされてるのは知ってます」

「…そう。」

「すみません、迷惑ってわかってて告白したんです。私近々別の病院に移るんです。だから…」

なんだろう。
真剣で誠実な想いだ。私のことを好きなのはすごく伝わってくるけど一方的に感じる。
好きだからどうなろうが伝えたいって気持ち、とても若くていいと思うけど共感出来たことなんてない。

「ありがとう。病院移っても頑張ってね」

どう取り繕ってもそれしか言えなかった。
とにかく荒北先生に会いたい。





先生は確か今夜当直だったか。
構わず貰った合鍵で先生の部屋にあがり一目散に寝室のベッドに潜り込んだ。

匂い。先生が生活してる匂い。
喉の奥でピリピリしたものが落ち着いてきてやっと自分が苛々してたことに気が付いた。

彼女はほんとに真剣だったけどそんな想いを突然丸投げされた私の気持ちはわかっているのかな。
今まで付き合ってきた人達と彼女の告白は何が違うんだろう。別に同性愛に偏見はない。とれとも私が変わったんだろうか。

考えるのも嫌になってきた。
もうふて寝しちゃおう。







「名字ちゃん」

撫でられてる。すごく気持ちいい。
目を開けると荒北先生がいて思わず抱きついた。

「…ダイジョーブ?」 

寝てだいぶスッキリしたけど大丈夫じゃない。
もっと強く抱きしめ返してくれなきゃ嫌だ。

「名字ちゃんの先輩から様子がおかしいって聞いたけど結構ヤバイじゃなァい」

「ヤバイです。だから暫くくっつかせて」

「クルージングパーティー、明日だろォ。元気ないと犬山が可哀想じゃねェか」

「それまでには回復すると思います。こうしていれば」

もし荒北先生と付き合ったから自分が変わって彼女の告白に嫌悪したのなら後悔はない。荒北先生がとにかく好きだ。そこに後悔なんてない。

そもそも告白してくれた相手のことで考えるなんて始めてだ。
悪気はなくとも精神的に若干振り回された。
珍しく考え過ぎたと思う。


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