どこへでも
「クルージングパーティー?」
「そうっす。研修もそろそろ終るんで記念にって」
もうそんな時期か。
犬山君に研修医達が企画したクルージングパーティーに誘われてるのだけど、若いこたちに混ざるのに凄く抵抗があって迷う。
「研修医って暇なの?」
「名前さんひどい!!」
ほっぺを膨らませてかわいこぶる犬山君。
犬山君も研修医ではなくなるのか。感慨深いな。
「うーん、行こうかな。犬山君のこれからに乾杯しなきゃね」
「ちょっとやめて、名前さんにそんなこと言われたら泣いちゃう」
「はは、私もなんか泣きそう」
犬山君に思いっきり抱きつかれたのは荒北先生には内緒だ。しばらく背中を擦ってたなんて絶対内緒だ。
「んー、イイヨ。行っても」
「はい」
クルージングパーティーのことを荒北先生に話すとあっさり許可を貰えた。
「そーいえばさ。ちゃんとしたレストランとか行ったことねェな」
「まあ居酒屋が多いですね」
居酒屋といってもちょっといいところに連れてってくれてるから美味しいし居心地がいいところばかりだし何の不満もない。荒北先生はいいお店をたくさん知ってる。
「連れていってくれるお店、どこも好きですよ?」
「オンナってフレンチとか好きじゃなァい?」
「私は美味しくて緊張しないお店が好きです」
「俺もー」
少し上機嫌にコテンと首を傾けて体重をかけてくる荒北先生。
かわいいかわいい。
ちなみに今先生の家のソファで先生が入れてくれたコーヒーを飲みながら並んで座ってる。
「あ、あと靖友さんの作ったご飯も好きです。野菜いっぱいだし」
「名字チャンて野菜好きだよネ」
「旬の野菜がさいこー」
「俺、放っとけば肉ばっか食うから実家からたくさん送られてくんの」
「消費するために野菜料理ばっかりなんですね」
「体にいいのは間違いねェから」
うんうん。
旬の野菜を食べるとすごくエネルギーを取り込めてる気がするから好きだ。
「あ、レストランはもういいけど、今度箱根行かねェ?」
「温泉!」
クルージングパーティーの話をしたから思い立ったのか、荒北先生はフレンチレストランと言ってみたり私を何処かへ連れていってくれる気らしい。
お互い忙しい身ではあるからすぐには行けないだろうけど、先生と温泉にはやく行きたい。