枯れてなんかない、はず。


「荒北先生って怖いよね」


ナースステーションの前を足早に通り過ぎる外科の荒北先生を見て先輩がそう言った。

荒北先生の何を見てそう言っているのかわからないけど確かに無愛想な表情は職場の人間を萎縮させてしまっている。
私の2つ歳上だったか。
無愛想であってもあの若さで一目を置かれているからやはり仕事ができる人なのだろう。

そういえばオペ室に配属されている友人ナースは教授のアシストをする荒北先生の手際の良さにいつも驚かされると言っていた。


「でも荒北先生ってファン多いですよね」

「新人ナースは毎年キャーキャー言ってるわよね。なにがいいんだか」

「先輩には素敵な旦那様がいらっしゃいますもんね」

「そう、一郎君が一番だわ」

誇らしげに言う先輩はとても可愛い。
ちなみに先輩の旦那様は小児科の貴公子とよばれている笑顔が爽やかな先生だ。

「ところで名前ちゃんは彼氏とどうなの?」

「それが、、実は別れたくて」

「あらま!どうして?あの研修医の子よね」

「ちょっと先輩声大きいです」

実は初々しい研修医君とお付き合いしているのだがどうもうまくいかないのだ。

一目惚れしました!と告白されたときは可愛くていいなと思っていたけど付き合い始めてからも大好きアピールがすごくて最近はあの若さについていけなくなってきた。
特にセックスだ。研修医君と私との温度差がひどい。聞いて先輩は爆笑しているが笑い事じゃない。

「由々しき問題ですよ先輩。もう私後半いつも死んでるんですから」

「名前ちゃんてそんな淡白だっけ?」

「…普通だと思います」

「じゃあやっぱドン引きしちゃってるんだね」

「はい、まさしく。」

また爆笑する先輩。
もう心身ともに限界だし別れよう。決めた。
仕事終わったらさっそく連絡しよう。


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