狼、舌鼓みを打つ


後日、隼人さんから改めて連絡がきた。
新居が決まったそうだがまたペット禁止らしい。
もういっそ動物病院に住み込んだらいいのに。

「名前さん、首どうしたんすか!?」

「怪我?したから包帯まいてみた」

荒北先生に首中に噛み付かれ、吸い付かれて人様に見せられる状態ではないため包帯でグルグル巻きにした。これもこれですごく目立ってるけどしょうがない。
実際首だけではなく、体のいたるところに痕があるけどそこは服で何とか隠せた。

「ふーん」

なにやら疑ってる犬山君はスルーしよう。

「なぁに話してんのォ?」

「荒北先生離して下さい」

「ヤダ」

突然背後から抱き締められ、振り向くと荒北先生。
ヤダってかわいいけど職場では止めて欲しい。
ほら、犬山君がすごく驚いてるじゃないか。

「え、ええ?どういう関係っすか?」

「恋人?」

「いいんじゃナァイ?それで」

「ええええええ!!いつの間に!!!」

「あっという間によ」

ほんとにあっという間だ。
満足気な荒北先生は私の肩に頭を擦り付けている。
それを見た犬山君はどこかげんなりした様子で何処かへ行ってしまった。

「それにしてもさァ、ナース服に包帯ってエロい」

「なに言ってるんですか、先生のせいで…」

少し睨んで見上げるけど先生は嬉しそうに笑ってたので続くはずの文句が引っ込んでしまった。

「ハァ、やっと俺のものになった」

そう言ってまた抱き締められる。
私にとってはあっという間でも先生にとっては違うらしい。
ほんとに嬉しそうでかわいいし照れる。
なんだか先生の腰辺りにフサフサの犬の尻尾が揺れてるのが見える気がする。
いや、犬じゃなくて狼か。

だってこの人は前から獲物の匂いを嗅ぎ付けてそして狙ってたんだから。


「ああそうだ、俺のことも靖友さんって呼んでヨ」

「え?」

「新開のことはそう呼んでんじゃん。名字ちゃんに先生って呼ばれるの好きだけどさ」

「…やすともさん?」

「…」

慣れなくてちょっと恥ずかしい。
しかし呼んでって言ったくせに黙るのはどうだろうか。

「あの、やすと」

もう一度呼ぼうとすると触れるだけのキスで止められてしまった。


「ウン、それ二人っきりのときだけネ。それ以外禁止」


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -