アーントペグズ・ヴィレッジストア
「あれは何だ。」
とユウに促されて見た先には何も無かった。ううん、何も無かったというのはちょっと意味が違って、目を引く物が無かったという意味で、今日も相変わらずディズニーシーはとても混んでいた。
「…どれ…?」
「あれだ、何か、抱えてるヤツ。」
何か抱えているヤツ、と言われてそれがアトラクションとかじゃなくて違うやつだとやっと理解できた。抱えてる、という言葉で何となく予想は出来てたけど、一応ユウの視線の先を辿ればやっぱり。道行く人達がふわふわの可愛いぬいぐるみを抱えていた。それも一人とかじゃなくて、すれ違う人達の大半。
「ダッフィー知らないの?」
「いや、知ってる。そうじゃくて、何で抱えてるんだ」
ユウの言ったそれはディズニーの人気キャラクター、テディベアのダッフィーで、ダッフィーが何かを説明するのはここではカットしときます。
「可愛いから?」
「乗り物乗るときどうすんだよ。」
「落とさないよう頑張る。」
「……土産で最後に買えばいいだろ。」
なんて言われて私は首を振った。ああ駄目!駄目だこの人!ダッフィーの何たるかをわかっていない!私はユウの手を取り、丁度アメリカンウォーターフロントの橋を越えた所だったので、そのままケープコッドに入って赤い板張りの雑貨店に入った。(途中ミルクティー味のポップコーンが見えたので後で買います!)
ユウの手を引いて入ったそこには(一瞬ユウが顔を顰めたのは見なかった事にしておきます)、360度、ダッフィー、ダッフィー、ダッフィーの山だった。
優しいキャラメル色をしたふわふわの生地にミッキー型の顔。真っ黒な目はくりくりとして目が合ったら抱き締められずにはいられない。私は堪らず、入ってすぐあったダッフィーのぬいぐるみを抱き締めた。
「あぁ可愛いっ」
「……………」
そんな私を理解できないとばかりに冷たい目で見下ろすユウに私はむっとなってユウの腕を取ってダッフィーを渡した。
「ね、可愛いでしょ?一緒に連れて行きたいって思うでしょ?」
興味なさそうにダッフィーを片手で抱えてぬいぐるみを見下ろすユウの目は本当に興味が無さそうだ。…帰りにダッフィーとシェリーメイの何かを買おうと思ってたけど止めておこう…。私は「もういい」とユウからダッフィーを取り上げて、元に戻す前にもう一度ダッフィーを抱き締めた。ごめんね、理解のない男の人で。まぁ、道行く男性同様腰にダッフィーをぶら下げろとは言わないけど(というか想像できない)、でもこの可愛さを理解できないとは…、と謝罪の意味を込めてダッフィーを撫でているとユウが私から一歩下がるようにして私を見た。
「……………」
「…ユウ…?」
「……いや。」
何でもない、と言ったユウだけど何だかすごい見られてる…。ユウからの視線が何となく居心地悪くて、逃げるようにダッフィーを戻そうとするとユウがそれを止めた。
「待て。」
「え?」
止めたついでにユウが私の手からダッフィーを掻っ攫って(あぁっ、ダッフィーが愛のない感じに掴まれている…!)、そのままレジに行こうとしているのを見て今度は私がそれを止めた。
「えっ、ゆ、ユウ?」
まさかダッフィーの可愛さに目覚めたの!?だ、だったら私、シェリーメイ買おうかな!お揃いで持ったりなんかしちゃったする!?そうユウがダッフィーを買うのをじっと見ていたら、会計が終わったダッフィーがぽん、と私の腕の中に戻って、きた。
「……?…ユウ?」
「やる。」
「え…っ」
まさか、私が可愛いなんて抱き締めたから、私が欲しいとか思って買ってくれたの…かな…?ど、どうしよう。また私ユウに買ってもらってしまっている…。どうしよう…。あぁ、もう私のばか…。
「あ、あのユウ…」
「落とすなよ。」
「あ…う、うん…。ありがと…。」
なんて思いながらも、実はダッフィー買ってもらってすっごく嬉しかったりする。だってダッフィー可愛いし、抱えながら歩くのちょっと羨ましかったし、何より、ユウが買ってくれたから。そう、嬉し恥ずかしいのをダッフィーを抱えることで隠してお礼を言えば、ユウはそんな私に満足そうに笑ってくれた。(やばい、今の顔かっこよかった…。)
アーント・ペグズ・ヴィレッジストア
(ダッフィー抱えた彼女が可愛かったのです!)
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