僕のアイ




かちゃり…


あまりの量の書類が床に散らばっているため司令室か部屋なのかわからない部屋にナマエは足を入れた。もちろんノックはしたし、微かだが「どうぞ」と死にかけた声が聞こえたからナマエはコムイの部屋に入った。どれが処理済みでどれが未処理、または重要書類かわからないので靴は脱ぎ、ストッキングからひやりとした床の冷たさが伝わって思わず身震いした。


「床、寒いです。」

「靴履けばいいじゃないか。」

「どんな内容かわからない書類の上を土足で歩けません…。」

「どれもシュレッダー行きだよ。」


むくり、ベッドの上でぐったりと寝ていたコムイが起き上がってナマエは眉を下げた。


「寝たままでかまわなかったのですが…」

「ナマエがせっかく来てくれたのにそれはないよ。」


おいで、と言うようにコムイに手を伸ばされてナマエはその手に自分の手を重ねた。重ねるとコムイの腕に力が入ってナマエの体はベッドに引き寄せられ、あっと言う間もなくコムイの腕に包まれた。後ろから強く、しかし優しく抱きしめられるとナマエの鼻はコムイの香りでいっぱいになる。多忙で入浴できないため付けた香水とインクの匂い。あと少し、リナリーと同じ匂い。きっとリー家の匂い。


「し、室長、仮眠を…、」

「キミが来てくれたのに?」


寝ないで待ってたのに、とコムイの声がくすくすと笑ってナマエの首筋に唇を当てる。ぴくんと揺れたナマエの髪を耳にかけて今度は冷たい耳たぶを甘噛みする。


「ですけど…、三日ぶりの仮眠、時間を…っ」


どこか逃げ腰のナマエの腰に腕を回して逃げなくさせることは簡単だ。ナマエはコムイからの甘い刺激に思考がうまく回っていないから。


「ナマエ、…二人の時はどうする約束だった?」


しかしそれでも逃げようとするナマエの手を捕まえて指の間に指を入れる。コムイの長い指がナマエの指と交わる。唇を、声を、耳の触れるか触れないところで止めればナマエの熱くてとろけるような吐息が零れる。愛しくて、コムイはつい自分の指を彼女の口の中に突っ込んでしまう。小さい口に指を突っ込めばこれまた小さい舌がコムイの指を舐める。なんて可愛い、僕のモノ。


「どうするんだっけ?」

「ぁふ、…ん、ムイさん…コムイさん…、」

「そうだね。」


ナマエの唾液がたっぷりついた指を口から抜いて、今度は指をスライドさせて唇に塗る。最初は濃く、最後は薄く、まるでグロスのように光るナマエの唇はとても官能的だ。しかもそれがグロスではなく唾液、というところがまた、(興奮する、)


「ナマエ、自分の唾液でキミの唇が濡れているよ。」

「ん、やぁ…っ」


ゆるゆると首を振るナマエを喉奥で笑って、コムイはナマエの首に口付ける。


「…っ、」

「そういえば、今日は神田君と何を話していたんだい?」

「み、見てたの…?」


少し短いタイトスカートを少しだけ捲ってストッキングを履いた太ももに触れる。撫でるように、しかしイヤらしく触れるコムイの手つきにナマエの吐息は温度を上げる。


「楽しそうだったね。何をそんなに楽しそうにしてたんだい?」

「…話して、た、だけ…」

「そう…、話してただけね。」


ぐ、と軽く食い込むぐらいに太ももを掴む。男のコムイとは違って女のナマエの太ももは柔らかく簡単に指が食い込む。「痛…」「痛いの?ちょっと掴んだだけだよ。」ナマエの潤んだ瞳がひどく扇状的でコムイを静かに熱くする。


「ねぇ、ナマエ。キミは誰のもの?」

「こ、こむいさんの、もの…」

「そうだよねぇ…、なのに他の男と仲良くするのかい?ヤキモチをやいて欲しいの?妬いてほしいのなら言ってほしい。そうしたら僕はキミを監禁するから。僕とキミだけの空間になればそんなくだらない事を考えなくてすむだろう?どう、ナマエ?そうするかい?」

「や、…やだぁ…」


コムイの片手はナマエの心臓を隠す胸を掴み、もう片方の手はタイトスカートの中に入った。胸を掴んだのはナマエの心臓はコムイのものだから。タイトスカートの中に手を入れたのはナマエの足がコムイから逃げないようにするため。


「ナマエが好きな人は誰だい?ナマエが話しかけていい男は誰だけ?」

「コムイ、さん…。」

「うん。正解。…ナマエ、ご褒美をあげるよ。こっちを向いて。」

「…ん、」


すでに溢れている蜜をこぼさないようにしているのかナマエは足をもじもじさせているがコムイは気にせずナマエを持ち上げて馬乗りにさせた。小さく「ぁ、」と上げたナマエの声はすでに嬌声。収穫時期を過ぎたような熟した林檎のナマエをこちらに向かせてコムイは口端を上げた。


「さぁ、ご褒美だ、ナマエ。」



































愛って人それぞれ。
これが、僕のアイ。


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