誰かが望んだ未来




どうもあいつ等は気が合うようで。俺が居ない間二人でずっといるらしい。リナリーがこの間それについて俺に文句を言ってきた時は本当にどうすればいいのわからなかったし、俺だって文句を言いたい。それはどちらに言えばいいのかわからないのだが、でも言おうとする前に、こいつ等の顔を見ると、本当にどうでも良くなるのだ。


(本当…どうでもよくなるアホ面達だな。)


深夜の静かな談話室。一番奥のソファはあいつ等の指定席だった。たくさんの菓子と本を何処からか持ってきて二人はそれに埋もれるように寝息をたてていた。ソファの上で互い凭れ合うように寝ているアルマとナマエに自分でも気付かない内に頬が緩む。アルマはクッションを抱え、ナマエは薄い毛布を二人分に膝掛け、寝ている。こんな時間までこいつ等は一体何をしているのだか、団服を脱いで二人に掛けようとして俺はその手を止めた。ぴすぴす言って寝ているアルマ、また薄着のまま寝ているナマエ。その幸せそうな寝顔を見つめて、片方は右を、もう片方は左の頬を、抓り上げる。


「い゛ったたたたた!!」
「〜っっいっ〜〜〜!!」


悲鳴と共に開かれた目に緩んでいた頬を引き締め、思いっきり抓っていた頬から手を離した。すると二人は抓られた頬を抑えて涙目になりながらも、俺を視界に入れて一瞬嬉しそうな顔をしたのだが、自分達の赤い頬にすぐさま目を吊り上げる。


「痛いって!!何するんだよ!ユウ!!」

「もっと別の起こし方ないの!?」


アルマは持っていたクッションを俺に投げつけ、俺はそれを受け取って投げ返す。ばふっとアルマの顔に埋まったクッションにナマエが数秒固まって、笑う。それにつられて俺も少し笑えば、ずるっと落ちたクッションから、アルマも歯を見せて笑った。
ひとしきり笑いが収まれば、ナマエが笑い涙を拭って、俺の手を取った。続いてアルマも俺の手を取り、二人は俺に一番心休まる表情をくれる。


「おかえり、ユウ。」

「おかえり、ユウ。」


そして俺は


その優しい言葉に、


瞳に、


声に、


空気に、


存在に、


静かに目を伏せるのだ。




「ただいま。」








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