■ 私のカノジョをチャージ
「れおっ、頑張ってね!私!いっぱい応援するね!」

「ええ。たくさん応援してちょうだい。私だけをよ?」

「うん!いっぱいいっぱい応援するね!」


ウィンターカップ決勝戦。名前はわざわざ京都から新幹線で(名前が一人で新幹線乗れるから激しく心配だったけど)駆け付けて応援に来てくれた。決勝当日だけでなく前日の試合まで応援に来てくれたおかげで、すっかり大会の熱に感化されていつもより少々興奮気味だ。試合が終わってミーティングを済ませた後、一番に名前が玲央、玲央、さっきの試合すごかったね!かっこよかった!綺麗だったよ!って目をきらきらさせて言ってくる姿がもうそれはそれは可愛くて他の観戦なんて放って置いてホテルに持ち帰りたいのを何度我慢したか。「ふふ、ありがとう」っていつも通りの笑顔を浮かべても征ちゃんに「次の試合のことも考えとくんだぞ、玲央」なんてエンペラーなアイで心が読まれてしまっていて迂闊に手を出せなかった(もう、フラストレーション溜まりまくりよっ)。


「ああどうしよう。次で優勝決まっちゃうんだよねっ。なんだか汗かいてきちゃったよ…。頑張ってね!洛山側の観戦席で応援してるからね!私ずっと応援してるからねっ」

「名前、少しは落ち着いて?」


決勝戦前の10秒チャージならぬ名前チャージをしようと人のまばらなホールで名前を呼び出したけれど、始終こんな感じではふはふと息を荒くしている。どうやら次の決勝戦が自分のことのように緊張して興奮が止まらないようだ。苦笑して名前の肩に両手を置けば、「そ、そうだよねっ、わ、私が興奮してても意味ないもんねっ」と一人すーはー、すーはー、深呼吸するものだから、ああ私の彼女は今日も可愛いわ。


「で、でも、やっぱり落ち着かないよ…。だって次で優勝決まっちゃうんだよ?もっ、もちろん!たくさん練習してる洛山が勝つに決まってるけど、でも、相手のチームもすごい強いんでしょ?油断ならないよねっ」

「だぁいじょうぶ。私達が勝つに決まってるけれど、でもその前にうちのチームには征ちゃんがいるのよ?」


キセキの世代キャプテン赤司征十郎が、洛山にはいる。それが居て負けることなどありえるのかしら?確かに私も無冠の五将なんて名前をもらっているけれど、そんなものキセキの世代の前では霞んでしまう。そんなキセキの世代のキャプテンが、洛山にいる。そんなもの、優勝しかありえないわ。そう名前に微笑むと、名前はまあるい瞳でぐっと私を見上げて一歩詰め寄った。


「玲央もいるよっ!」


力み過ぎたのか、大きな声がホールに響いて何人かの人がこちらを見たけれど、名前はじっと私を見上げていた。小さな手で拳をぎゅっと作って、私のジャージの裾を掴む。


「た、確かに、あかしくんもすごいけど、でも、玲央も強いもんっ、わ、私の中では、れ、れおが、いちばんっ、だよ!」


頬を赤くさせて、力強く訴える名前をきょとんと見下ろしながら、名前がくれた言葉をゆっくり自分の中で噛み砕き、反芻する。玲央も、強い……。名前の中で、私が、一番……。名前のなかで、わたしが、いちばん……いちばん………。


「……………名前、」


裾を掴んだままの名前の腰にゆっくりと腕を回して、そっと、ぎゅっと抱き寄せる。名前の華奢な体が、ぴったりと私の体に吸い寄せられる。


「…………もういっかい、いって…。」

「………え……?え?な、なに、」

「……さっきの、もういっかい、おねがい。」


名前になんて顔を向けていいのかわからなくて、表情の整理がついていない顔を前髪で隠して、少し早口で言った。すると名前は「れ、れお…?」と心配そうにこちらを見上げて、それからおずおずと先程の言葉を繰り返した。


「私の中で…、玲央が一番、だよ…?」

「……ああ、もう駄目。」


ふつり、と頭の中で何か頼り無いものが切れた音がした。
名前の体を壁に押しやって、私がかぶさってちょうど人から見えない位置に隠す。「れ、れお?」って不安そうにこちらを見上げる名前に、私という影を落としてキスをする。


「んっ…、」


しっとりを濡れた柔らかい唇に私の唇を押し付けて、逃がさないように小さな頬を両手で包む。人がいつ通るからわからないからか、「玲央、待って、」と名前が微かな抵抗を見せるけど、今の私にはそれを受け入れる余裕がなくて、連戦続きで気が立ってるのもあるし、次が決勝というのもあるし、早く名前と二人きりになっていちゃいちゃしたいていうのが混ざって散々私の中の名前という瓶が空だったのを思い出して貪るように名前にキスをする。


「ん、ぁ…、れ、おっ」


何度してもキスに慣れる様子のない名前が息苦しそうにしてるのを見て、少しだけ呼吸の隙を与える。はぁ、と一つ呼吸をしたのを見てすかさず薄く開いた唇に自分の舌をねじ込む。まさかそこまですると思ってなかった名前は(正直、私もそこまでするとは思ってなかった)(けど、一度名前っていう甘い水を啜ると駄目ね。次、次ってどんどん欲しくなっちゃう)ぎゅう、と私の胸元を強く握った。でもそれが批難のものなのか、もっとと言っているものなのか、私には判断つかなかった。いいえ、関係なかったの。だって名前を急激に求めていたから。


「…………ん……っ」


名前の小さな舌を追い掛けて散々くちゅくちゅと音をたてて遊んでもらったあと、上顎を舌先で撫でると名前の小さな体がぴくりと震えて膝がかくんと落ちた。崩れ落ちる前に名前を抱き抱えて、腕の中でくったりとした名前を見下ろし、自分が満足そうに微笑んでいることに気付く。


「あら、ごめんなさいね名前。抑えが利かなかったわ。」

「…れ、お……っ」


ふにゃ、と崩れかけた名前を立たせて、名前の甘い匂いが濃く香る首筋に鼻を埋めてちゅ、と口付ける。それにもふるりと震えた名前が可愛くて可愛くて、はぁ、このままセックスしたい!


「でもそんなこと言ってられないわね。」

「ん…、け、けっしょう…、」

「ええ。名前のためにスリーたくさん決めちゃうわよ?」


艶っぽく濡れさせてしまった唇を親指で拭って、少し乱してしまった名前の髪やら襟元やらを正してゆっくり体を離す。


「観戦席まで送るわ。」

「えっ、だ、大丈夫だよ。玲央、すぐアップ入るでしょう?」


だからこそ、よ。こんな顔した名前をふらふら一人で歩かせといてアップなんて落ち着かないわ。ぷっくり色付いた唇にとろんとした瞳、何をしてたか男なら察することできる蕩けた表情。どうぞ食べてくださいって言ってるようなものじゃない!
心配する私と大丈夫だと言い張る名前の前に、


「玲央、そろそろ行くぞ。」

「…征ちゃん。」


征ちゃんが時間を告げに来た。
けれど何やらもたもたしている私達、名前を引き留める私に、とろんとした表情の名前を交互に見ると、「ああ」と納得したような顔をして、くすりと笑った。


「観戦席まで送ってやるといい、玲央。」

「だ、大丈夫だよ赤司くんっ!私迷わないよ!」

「玲央、チャージは済んだのか?」

「ええ、観戦席まで送ったら満タンよ。次の試合、楽しみにしてて。」

「だ、そうだ。名前、大人しく送られてやってくれ。」

「そうよ、名前。」

「〜〜〜…っ」


名前の細い腰を抱いて並んで歩けば、この子が誰のモノか皆に知らしめることができるし、その虫除けが私のチャージにもなる。にっこり笑った私に、名前はまだ不満そうな顔を浮かべていたけれど、ダメよ、そんな顔されたら離したく無くなっちゃうじゃない。

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