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常闇のような場所だった。

暗くてひんやりした部屋に白い団服を着た人が数人。中心に一人用の大きな椅子があるに関わらず座っているのはもう一人座れるのではないかと思ってしまうほど細い人。骨と皮のような細さで、性別がよくわからない。異質な光景に、私は目が離せなかった。


「ここで話しても構わん。もう耳は聞こえていない。」


白い団服の一人がいった。耳が聞こえていない?病気なの?
白い団服の一人がいった。


「前回のシンクロ率は?」

「報告できるほどの数値は取れていない。」


シンクロ率?報告?数値?


「体にも機能障害が起き始めているし、やはり適合者でない者には無理ではないか?」

「何を言ってる。成功例が一人いる。」

「発動限界15秒じゃ成功例と言えんだろう。あれはこの実験を続けるための繋ぎのようなものだ。」

「この検査で最後かもな。」

「諦めるものか。エクソシストの血縁者だ。きっと上手くいく。」


痩せこけた頬と生気のない目の下に落とした隈に、目がそらせなかった。食い入るような視線に気が付いたのか、それとも耳が聞こえない分、感覚が鋭いのか、病気の限度を超えたその細い子と目があった。隙間から見たその行為とその子を見つめすぎた行為に後ろめたさを感じたけど、目を離すことができなかった。


「時間だ。始めるぞ。」


静かに立ち上がったその子。見つめ返された目は何を伝えたいのかよくわからなくて、私は見つめることしかできなかった。だけど、あの子はそんな私に、小さく、骨のような指で親しみを込めて手を振った。見知らぬ私に、手を振った。


「ヘブラスカ。イノセンスを彼に入れてくれ。」


そこで見た光景は信じられないものだった。白い団服の人間がヘブラスカに命じて生身の人間にイノセンスを入れる光景。イノセンスの光がその子の体に入り込んで、シンクロしているのではなく、蝕んでいるような光景。イノセンスがシンクロしようとしている音とその子が苦しみ叫んでいる声が部屋中に響いていた。


「ダメだ限界だ!これ以上は危険だ止めろ!!」

「続けるんだヘブラスカ!まだ…まだいける!!」

「シンクロするんだ!!!」


光の中、あの子が苦しんでいるのがわかった。入れられたイノセンスにもがき苦しんでいる様子。


「やめて…」


苦しみ叫んで、


「やめて」


イノセンスに侵されて、


「やめて」


結局イノセンスに吐き出される光景。


「あああ…くそ…」


イノセンスに拒絶されたあの子は、白い、何かに、なって、


「また咎落ちだ。」


血の涙を流していた。




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