へいちょとようじょ(7/15)
窓の外で鳴く小鳥の囀りを聞きながら、ユリアはいつもと違う固い布団で目を覚ました。
固い、すごく。いつも寝ているベッドとは比べものにならないくらい固い。以前、ヴァンがお米で作ったお菓子…確かセンベイという固いお菓子を思い出すくらい固い!
そう目を覚ますと、目の前に自分を見詰める目があるのに驚く。
「よお、チビってはないようだな。」
「ちび…?」
「しょんべんのことだ。」
そう言ってリヴァイは起き上がり、ユリアもならって起き上がった。どうやら、昨日寝かしつけられたベッドの中に、後からリヴァイも入ってきたようだ。つまりここは、リヴァイのベッドということになる。
「ハンジから着替えを預かった。そこにあるから適当に着替えとけ。」
「はいっ」
「一人でできるか。」
「だいじょうぶです…!」
そりゃ良かった。とリヴァイはベッドから足を下ろし、兵服に手をかける。ふと、ハンジから預かった服を両手にじっとこちらを見ているユリアに気付き、ああ、と後ろを向いてやる。すると後ろで着替える音がし、その音が静かになるまで待ってやった。
頭の装飾も外し、白い法衣ではなく、普通の子供が着るような服を着させると、そこら辺を駆けまわる子供と変わらない印象になった。
「少しデカイか…?」
「だいじょうぶ、です…!」
借り物の服を、ユリアは少し珍しそうに裾を引っ張ったりしていた。そのユリアの手を引いて食堂へ向かえば、いっせいに浴びる視線にリヴァイは目を細くさせた。すると集まった視線が蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
「あ、いたいた。おーい、リヴァイ!」
ユリアを椅子に座らせると、後ろにミケを連れたハンジが手を振りながらやってきた。子供だから更に大きく見えるのだろう、長身のミケにユリアが目を丸くしていた。
「お、服着てるんだね、似合ってるよユリア。ミケ、この子がユリアだよ。」
「………」
「…ひゃぁ…!」
ミケはさっそく、とばかりにユリアの匂いを嗅ぎ、鼻を鳴らした。
「…リヴァイの匂いがする。」
「そりゃそうだ。一緒に寝たからな。」
「おや、もうよろしくやっちゃってるの?」
「ど頭かち割るぞクソメガネ。」
「冗談だよ、ほら言っただろ?適任だって。」
「…ベッドが一つしか無かっただけだ。」
「私はキミのそういうところ、すごく好きだよ。」
当たり前のようにユリアの向かい席に座るハンジの隣にミケが座った。朝食はこの4人で取るようだ。そして食堂にある椅子ではユリアが机に届かないので、椅子を二つ重ねてユリアを座らせた。
クソして寝ろ、それだけしか面倒はみない。と言っていたリヴァイだが、食堂でとれる朝食の準備をしてくれたのはリヴァイだった。「次からは自分でやれ」と言われたが、しっかりパンとスープを用意してくれた。おまけに、
「おい、口の横パンついてんぞ。」
「ん、ん…?」
「動くな、とってやる。」
食べ終わったユリアの口を拭ってくれるものだから、ハンジは「いやぁ、ホント、キミのそういうところ、私すっごく好きだよ!」と笑っていた。その言葉にリヴァイがどんな顔をしてたかは…、いうまでもないだろう。