へいちょとようじょ(4/15)
「じゃぁ、ユリアはここを知らないんだね!この地図わからないんだね!」
「このせんは、なんですか?」
「壁だよ!」
興奮するハンジに、今にも泣きそうなユリア。それを止めたのは誰でもない、エルヴィンだった。
「ハンジ、落ち着きなさい。ユリア、こちらへ。」
エルヴィンの優しげな声に、ユリアはとことことエルヴィンの前へと立った。今にも涙が零れてしまいそうな瞳のユリアに、エルヴィンは大きな手で頭を撫でた。
「安心しなさい、ユリア。私もキミが家に帰れるよう全力を尽くそう。」
「エルヴィン。」
知らない単語を連発し、地図もわからない、壁も知らない。これでもう完璧に身元が怪しすぎる少女に何を言っているのか、とリヴァイは目を鋭くさせたが、エルヴィンの目はこれといって決まっていた。
「ユリアをしばらくここで預かろう。皆にもそう伝えといてくれ。そしてユリアのダアトが少しでもわかるものが居たらここに来るように。」
「りょーかい♪」
「エルヴィン、」
「リヴァイ、せっかくの壁外からのお客さんなんだ。キミも、少し外の世界に興味はあるだろう?」
興味なんて、ない。あるのはお前たちだろ。と言いたいのを堪え、もう決まりきった目をしているエルヴィンにリヴァイは小さく溜息をついた。
「仮に、お前の言う通りコイツが壁外から来たと想定する。だが、俺の部屋に突然居たことはどう説明する。コイツが嘘をついていたら?お前の命を狙っていたら?」
「ほう……リヴァイ、キミが私の心配をしてくれるのかい。」
「エルヴィン、」
「そうだな…。そんなにユリアが心配なら、キミがついていればいい。」
「………は…。」
良い事を思い付いた、というよりも、話の流れで言いだそうとしていたものを、今だとばかりに言った様子のエルヴィンにリヴァイは頬を引き攣らせた。
「あの程度の子供くらい、なんとかなるだろう。」
「…エルヴィン、テメェぼけるにはまだ早いんじゃないか。俺はガキのお守をするためにここに居るんじゃねぇぞ…。」
「ああ、……だからこそ、だろう?」
試すようなエルヴィンの瞳に、リヴァイは舌打ちをした。