マーボカレー


この世界に来て一番安心したことは食文化が同じこと。ただ、少しの違いはあるのだが…、


「マーボカレー、美味しい?」


ナマエは目の前で美味しそうにマーボカレーを食すユーリを見て首を傾げる。ユーリはマーボカレーを乗せたスプーンを止めた。ナマエは夕食にパンとスープをもらっていた。


「あ、お前またそんだけか。もっと喰えっつんてんだろ。俺はもうちょい肉付きのある奴の方が好きだぞ。」

「ユーリ・エローウェルさんの好みなんて聞いてません。で、美味しいの?どんな味がするの?」

「…別に?普通にイケるぜ。」

「ふーん。」


マーボカレー。その名の通り、ピリ辛のマーボーと定番のカレーが同じ皿の中仲良く混ぜ合わさって乗っている。これがこの世界の食文化か…、と最初は驚いたが意外に皆美味しそうに食べているので少しは気になっていた。
じっくりと自分がマーボカレーを食べている姿をナマエに見られていてユーリは少し座り直してマーボカレーを乗せたスプーンをナマエに向けた。


「食うか?」

「いいのっ?」


食べたければ最初から言えばいいものを、とユーリは小さく笑ってナマエにスプーンを差し出した。ナマエは小さな口をはくりと開けた。


「……………。」


てっきりスプーンを受け取って食べるのかとユーリは思ったが、ナマエがそのままだったので、そのままスプーンをナマエの口に入れた。


(…逆あーん…だな。)


なんて一人思っては、なんだか少し照れた。ナマエはそのままマーボカレーを何処か考えるようにもぐもぐと食べて、飲み込んだ。


「どうだ?旨いだろ。」

「…ふむ…。麻婆豆腐のあとをひく旨みをカレーにいかした、て感じかしら。カレーに豆腐はどうかと思ってたけどこれはこれで…美味しいかも。ユーリ、もう一口!」

「だったらマーボカレー。もらってこいよ。」

「もう入らないよ。お腹一杯になっちゃう。」

「小盛りにしてもらえばいいだろ。」

「あっ、そうか。」


じゃ、もらってくるね。と早速マーボカレーが気に入ったのか、ナマエはカウンターへと席を立った。小さい碗を手で表してカウンターで注文しているナマエをお新香代わりにユーリは微笑みながらマーボカレーをまた食べ始めた。





(…あ、間接キス。)


なんて一人ごちに思っては、まるでガキのような自分に溜め息が出た。




アイツの行動にいちいち過剰反応してしまう。(…ガキ。)


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