深紅の髪紐


いつも綺麗に結ってあるナマエの団子には深紅の飾り気のない結い紐がある。一目で男物だとわかる。彼女には、少し地味だと思う。


「ナマエの結い紐…、」


エステルは木陰で腰を降ろして本を読んでいたナマエの隣に座った。


「え?あ、変…かな…?」


ナマエはすぐに本から顔を上げて結い紐を抑えた。いつもなら読書中話しかけても(エステルより)集中して返事が返ってこないと言うのに。何か大切なものだろうか。エステルはこの若木のように陽に光るエメラルドの瞳を細めて首を振った。


「いいえ、とても素敵です。」

「でもそれ、男物よね。」


エステルの後ろから現れたリタにナマエは苦笑した。するとそのリタの後ろから今度はジュディスが現れてくすりと笑った。


「もしかして、ナマエの恋人?」

「えっ、な、ジュディ…!!」


図星なのか違うのか、とにかくナマエは見てわかる程顔を赤くして慌てて膝の上の本を落とした。


「あら、違うの?てっきり男避けに自分の結い紐をナマエに付けさせた、と思っていたのに。」

「そ、そんなんじゃ…、これはっ、落ち着いた時に、また渡してくれって…!!」

「なにそれ。立派な虫除けじゃない。」

「リ、リタまで…!」

「素敵ですナマエ!恋人がいたのですね!あっ、結い紐が必要ということはその方は髪が長いのです?」

「え、えぇ!?…あ、ま、まぁ…私と同じくらい…かなぁ…。」

「ナマエ、どんな方なんです?」

「あっ、ちょっ、エステル近い…!!」



***


きゃあきゃあと木陰で盛り上がる女性メンバー達に外れてレイヴンは先程からやたら剣の手入れを念入りにしている青年に苦笑してから独り言のように言った。


「虫除け、だってさ。」


それは自分に言っているのか、それともユーリに言ってるのか、ユーリは手入れに集中して聞いてなかったとでも言うようにとぼけて笑ってみせた


「何の話だよ、おっさん。」








人のモノって知ると、

もっともっと欲しくなるよな。


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