獅子戦吼!


「獅子戦吼ッ!」


フレンの掛け声と共に、フレンと対峙していた魔物が大きく吹き飛ばされた。フレンが発した闘気は獅子が魔物に食らい付くように襲いかかり、吼えるように戦吼が響いた。吹き飛ばされた敵はフレンの闘気により跡形もなく飛び散る。それを横目にナマエも自分の得物で魔物を串刺しに、最後の一体を仕留めた。遭遇した魔物の群れを殲滅し、フレンは足と手首の甲冑を留め直しながら皆の無事を確認した。


「まずまずだったね。」


そう言ったフレンにナマエは武器を足に仕舞いながらフレンの元へ駆け寄り、戦闘終了すぐにフレンの元へと走るナマエにユーリは何事かと目で後を追った。


「フレン!」


ナマエが呼んだ声は弾んでいて声だけでナマエがどんな顔をしているのかわかる程だった。


「すごい!すごいよ!今の技とってもかっこよかった!!」

「今の…?獅子戦吼の事?」

「そう!それ!獅子戦吼っていうのね!確かに獅子が吼えてる姿が見えたわ!」


がおーっ、とフレンの繰り出した技に見えたその姿を真似るナマエは余程興奮している様子で、フレンの技にとても感動しているようだった。


「あれ、どうやってるの?」

「あれは…何て言えばいいかな…。…闘気を敵にぶつけて吹き飛ばす、かな。」

「闘気…!」


キラキラともメラメラとも言えるナマエの目が眩しい。いつも使っている技が彼女には特別珍しくもかっこよく見えたようだ。それもそのはず。今フレンの目の前にいる彼女は(ユーリ達曰く)『ここではない何処か』からやって来た女の子なのだ。黒を基調とした服に胸元の銀色のクロス、日に当たるとダークエメラルドに輝く黒髪、同色のくりくりとした瞳。何処にでも居そうな可愛らしい少女だが本人曰く軍人に近い聖職者、らしい。もちろんフレンもユーリも軍人に近い聖職者なんて、ましてやナマエの言う『黒の教団』なんて聞いたこともなく、ナマエはまったく違う別の処から来た、としか言いようがなかった。更にエアルから魔導器(ブラスティア)まで知らなかったという。
とにかく、目の前のこの女の子は見るもの全てが新しく、手に取ったもの全ての名前もそれがどんなものかわからない。ユーリ達はそれをいちいち説明……、せずとも自ら何となく察して何となく理解しているようだと言う。順応性と洞察力がひどく優れているようで、軍人というのはあながち嘘ではないようだ。そしてこの戦闘に対してのレベルと興味。戦闘能力は問題ない。むしろその柔軟性と機敏性から学ぶことは多い。


「ねね、獅子戦吼、私にもできるかな?」

「えっ?ナマエが?」


小さな手をきゅっと握り拳を作り、やる気満々な様子をみせるナマエにフレンはナマエの体を下から上へと眺める。頼りない程の足の細さと腰のラインに何とも言えなくなる。細い。細すぎるのだ、彼女は。


「うーん、難しい、かもね…」

「そう…やっぱり剣じゃないと駄目?」

「いや、そういうわけじゃ…。」


獅子戦吼はもともと体術だ。剣や得物が、という話ではない。自分はナマエの細さに難しいと言いたいのだが。そうフレンが苦笑しているとユーリが肩を落としたナマエの手首を持った。


「こんなほそっこい腕じゃあの大技は出せないってことだよ。」


ユーリが持った手首は本当に細かった。こんな細腕でよくあんな鋭い攻撃が出来るな、と思うほどだ。ユーリの言葉にナマエはむっと軽く顎を引いてみせた。


「失礼な。筋肉ちゃんとあるわ。」

「あったとしても細過ぎる。」

「そんな事…!〜〜〜フレン、型だけでも教えてっ」


ユーリの言葉にナマエはやって出来た方が早いと思ったのかユーリの腕を払ってフレンに向き直った。まるでナマエを煽るような言い方をしたユーリにフレンは諫めるような目を向けたが、ユーリはむう、と頬を膨らましているナマエを何処か…。


(ああ…、ユーリ…君はもしかして、)

「フレン?」

「へ?あ、…あぁ、ごめん。それじゃ、足を肩幅よりちょっと大きく開いて、そう。次は腰を落とし……」


フレンの指示通り、ナマエは足を開き腰を落とし軽く前を見据えて次の指示を待ったが、フレンの声が途絶えた。どうしたのだろう、とフレンを見れば何やらふいっと顔をそらされた。


「フレン、どうしたの?」

「ああ…や、やっぱり止めた方がいいよ。…その……格好が、」

「格好?」

「おいおいフレン、お前どこ見て…」

「え、大丈夫だよ。中はいてるもん。ホラ、」

「わーーーっ!!」
「わーーーっ!!」





(あ、でも見とけば良かった。)


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