Sweet voice




ユーリの声ってどうしてあんなにも甘いのだろう。あんな性格とナリしといて甘いもの好きで見えないとこで結構ばくばく食ってるからかな。それで体内にお菓子とかの糖分が蓄積されてその成分が声帯に送られて、だから声があんなに甘いのかな。おまけによく通るし、耳に響く。なんていうのかな、体内に響いて鼓膜が震えるの?(あれでもそしたら私の体、耳より先に音を拾ってしまっている。仕事しろ私の耳。)でもユーリの声は本当に甘くて響くの。ちょっとユーリが咳払いするだけで私の体は吸い込むようにユーリの声を吸収して耳の奥がほわわ〜ってなるんだ。そして、なんだかとても甘えたくなるんだ。


「…ん、悪い、起こしたか?」

「ううん、起きたの」


ユーリの膝の上で少し寝返りを打って、ユーリの顔を覗き上げるようにした。夜みたいに綺麗なカーテンはユーリの黒髪だ。男の子のくせにこんなに伸ばして、でも似合うからいいんだ。かっこいいし。その綺麗な髪に指を通してくるくると指に絡めばユーリは「どうした?」と優しく頭を撫でてくれるけど、ううん、何でもないの。何でもないけど、ごめん、やっぱり何でもない。ただユーリに触れたいだけなんだ。ユーリに触りたくて、ずっと引っ付きたくて、離れたくないんだな。私。


「ユーリ、今日はずっとお家にいるの?」

「最近開けっぱなしだったからな。しばらくはイヤと言うほど構ってやるよ」


なんて言われて私の心臓はきゅぅぅってなった。やったぁ、今日はユーリいるんだ。しかもしばらくはお仕事お休みだなんて(ナマエ的解釈)。ユーリ、最近ギルドとか用心棒とかでなかなか帰って来なくて、ずっと一人で寂しかったんだよ私このまま消えちゃうんじゃないかってぐらい寂しかったんだよ。でもユーリはお仕事で出掛けているから何も言えないし、怪我とかも心配だけど、私は何も言えない。私はただ、ユーリの帰りを待って、「おかえり」を言うだけの簡単で本当はものすごく寂しいお仕事を尻尾振ってする。


「ユーリ、」

「なんだよ、やけに甘えただな」


だって、だってだって、ずっと待ってたユーリがいるんだもん。何だかんだまたお仕事に行っちゃうんじゃないか、と思って私はユーリのお腹に顔を埋めて腰に手を回した。固い、ユーリのお腹。少し目を上げれば開けた胸が映って、こんなに開いて冷やさないのかちょっと心配。でもだからと言って全部締め上げてるユーリもなんか心配。


「だって、久しぶりなんだもん。」


ユーリと一緒にいるの。と言えばユーリはちょっと困ったように笑って「そーだな」とまた頭を撫でてくれた。ユーリ、困った?ちょっと困った?ごめんね、だけど、謝らないよ。ちょっとくらい、わがまま言っても許されると思うんだ、私。いつ帰ってくるかわからないユーリをずっとずっと待ってそれに合わせてご飯もお風呂も準備してるんだもん。でもユーリはそれを知ってて優しい人だから私がわがまま言っても怒らない。ごめんね、ユーリ、だいすき。ぎゅうぎゅうとユーリの腰に抱き付けばユーリもそのまま私をぎゅうぎゅうと抱き締めてくれた。


「ユーリ、もっと」

「ん?もっとって…、この状態でもっと何すんだよ」


腰に顔を埋めた私の上にユーリがまるで覆い被さるような格好。それにユーリが小さく笑った。うーん、そうだな、と少しだけ顔を上げればユーリの手が私のほっぺを撫でるように添えられて、何となくキスの流れになりそうだ、と私はユーリの手を止めた。


「ナマエ?」

「待って、ユーリあのね」


や、違うんだ。うん、いや、キスもいいよね、いいけど、ちょっと今は待って。キスじゃなくて。


「ユーリ、名前呼んで。」

「ナマエ」

「もっと」


いきなり何だ、と思いながらもユーリは私の名前をぽろっと言ってくれた。でも足りない。一回じゃたりないよ。よいしょ、と体を起き上がらせながら、ユーリによじよじと体を寄せる。


「ナマエ」

「もっともっと」


起き上がらせた体をユーリの胸にぴったりとくっ付けて胸板に顔を埋めるとユーリが「擽ってぇよ」と私を抱き締めついでにぽんぽんと叩く。


「どうしたんだよ、自分の名前でも忘れたか」


そんなわけないでしょう、ばか。違うんだよユーリ。私はあなたの声が聞きたいの。あなたが近くにいるって証拠が欲しいんだ。帰ってきてくれたって実感が欲しいの。


「ユーリの声がたくさん聞きたいの。でも、ただユーリの声を聞いてるだけじゃもったいないから。せっかくだから私の名前を呼んでもらおうと思ったの。」


だから、いっぱい私の名前を呼んでほしいの。大好きなユーリの、大好きな甘い声で私の名前をたくさん呼んでください。いっぱい、いっぱいいっぱい。


「ナマエ、」

「うん」

「ナマエ、ナマエ」

「うん」

「ナマエ」

「ユーリ、」


なんて、甘い響きなんだろう。幸せで溜め息がでちゃう。ぷう、そう幸せ溜め息を出してユーリの胸にほっぺをぺったりくっ付けて見上げる。


「ユーリ、ユーリ」

「ん?」

「キスはまだですか?」

「お前な…」


一度止めかけたのはお前だろ、とほっぺをつねられたけど(いひゃい)いいじゃないか、その時はそれよりもユーリの声が聞きたかったの。でも今はユーリのキスが欲しいの。調子いいやつ、なんて言われてまだキスが来ない。私は我慢ができなくて、自分からユーリの唇を求めた。ちう、と小さくすればユーリは私の腰を撫でる。


「ユー、リ、ユーリ」


ちゅ、ちゅ、と、好き、好き、の意味を込めてキスを繰り返すと細めた視界からユーリの楽しそうな顔が見えた。それからニッと白い歯を見せたと思ったら腰を引き寄せられて長めのキスが始まる、の。


「ナマエ…」


唇が離れた合間に囁かれる甘い声に私の体がほわわ〜って溶けて耳が痺れる。本当、ユーリの声って甘い。大好き。ううん、ちょっと違う。ユーリの声が甘いんじゃなくて、ユーリの声だから甘くて、私大好きなんだ。


「名前は?まだ呼ぶか?」


とろとろっと溶けた私の体はユーリの体へと流れ落ちる。ユーリはそれを一つの動作のように受け入れて、閉じ込めるように私を抱き締めた。私はそれに力なく頷いて、ユーリにぎゅうぎゅう抱き付いてそれを返事とした。


「じゃ、今日はずっと呼んでてやるよ。」


囁かれたユーリの声は、甘くて甘くて、もっと甘えたくなった。




Sweet voice




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