オオカミ青年にプレゼント


「ローウェル。」


胡散臭いカラスことレイヴンを見送って戸を閉めると何かどっと疲れた気がして椅子に座り込む。するとナマエがスカートの裾をひらり翻して、うふふと嬉しそうに俺を見下していた。なんだ、その可愛い顔は。俺の心臓に爆破装置でも仕掛けるつもりか。


「腕出して。左腕。」

「あ?ああ。」


先程の表情を打って消すような楽しそうな顔に心ん中のもやもやしたもんがスッキリどっかに行く。言われたまま左腕を出せばナマエは軽い足取りで俺の後ろに回って…、座ってる俺の肩から手を伸ばす。


「って、ナマエ…?」

「だーめ、動かないで。」


そんな、まるで、後ろから抱かれてるみたいな体勢においおいこれ何事だよって腰を浮かすがナマエがそれを制した。い、いいのか。この態勢許されるのか。許されるも何も動かないでっつったのナマエだからな!お前が言ったんだからな!しかもさっき俺の耳のそばで言ったな!くっそドキってした!だーめって言われた!だーめって!!
俺の左手首にナマエの小さな手と手が回って、カチリと何かが嵌る音がした。ほっとしたような息とゆっくりと離れていく手から現れたのは金色のバンクルに嵌った俺の腕環だった。


「良かった、サイズぴったりね。」

「何だ、これ。バンクル?」

「そうよ、これに合うように作ってもらったんだから。」


元々していたピジョンブラッドが嵌めこまれた腕環に、それより一回り大きいバンクルがそれを固定していた。元サイズが少し手首を余らせていたが、ナマエが付けたバンクルによっていい具合に手首にしっかりと嵌ってくれた。バンクルについてる装飾も元の装飾に倣うように馴染んでいる。


「………なにこれ。」

「少し遅れてしまったけど、ガットゥーゾのお礼よ。」

「ガットゥーゾって…」


あれはもう俺の中で毒物事件とかそういう感じで処理されていたんだが…。それにお礼なんて…、だいたいあれはナマエが俺の食事を作ってくれるから少しでもそれの足しになればって…。ああでも毒を食らってもナマエは俺に「勿体ない」と言ってくれていた。
左手首にきらりと輝いたそれが眩しくて目を細めた。


「これ、もらっていーの?」

「もちろん、そのために作ってもらってレイヴンに持ってきてもらったのよ。」


そう言ったナマエの手にはレイヴンが持ってきた布袋があって…、ちょっと待て、アイツナマエが来る前それを机にごつごつ鳴らしてたぞ。…あんの野郎…。


「…ローウェル、」

「ん?」

「…ごめんなさい。もしかしてその腕環、とても大切なものだったかしら。」

「え…、あ…?」


レイヴンに寄せた眉に、ナマエがそれがバンクルと自分に向けられたものかと思ったのか急にしおらしくなった。しょんぼり、という言葉がしっくりくるナマエに慌てて立ち上がる。違う、そうじゃない、さっきのはお前にじゃなくて、おっさんにであって、ああだから、そんな顔するな。


「違ぇよ。確かにこれは大切なモンだけど、それにどうかしたからって怒ったわけじゃない。」

「そうなの…?」

「そうなの。むしろありがとう、だな。バンクルのおかげでしっくりきてる。」


安心させるよう、左手首を顔の横に持ってきて笑ってみせる。するとほっとしたように肩を落としたナマエに俺の内心はごろごろとのたうち回りたい気分だ。くっそ可愛い。何だ今日のナマエはすさまじく可愛いぞ。いやいつも可愛いのは変わらないが何かこう確実に俺を殺しに来ている。確実に俺の心臓に爆破装置仕掛けらている。いやもう爆破した後なのか?この心臓の高鳴りは爆発した後なんだろ!って心ん中は暴走しているが、もちろんナマエにそんな素振りを見せるわけもなく、やんわりと笑っている、はずだ。


「さんきゅーな。大事にする。」

「良かった。大事にしてくれたら、嬉しいわ。」


大事にするどころかもう絶対外さねぇよ。何があっても外さねぇよ。つうかそのふわふわした顔も可愛いな、おい。


「うっし。何か作るか!」

「そうね、そろそろ本格的にお腹が空いてきたわ。」

「何かリクエストは?」

「特に。」

「じゃーコロッケな。」



オオカミ青年にプレゼント


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