イミテーションブラッド
「ジェイドの瞳ってすごく綺麗。」
ピジョンブラッドの瞳にミルクティー色のさらさらストレートヘアー。35歳とは思えないすべすべの肌に、ヤキモチ通り越して嫌味か!と言いたくなる程整い過ぎた鼻、唇、顎。そして特に一番目を引くのが、このピジョンブラッドの瞳。トレードマーク(?)の眼鏡を隔ててもその美しさはくすみもしない。
私はジェイドの膝に乗って、ジェイドの顔を両手で包み上げた。いつも通りの、私は何があっても面倒なことに顔を突っ込みませんよ的な涼しい顔が腹立つけど、悔しいくらい、とても、綺麗な顔。
「そうですか?よく血の色だと言われますが。」
「ピジョンブラッドって宝石知ってるジェイド?」
「鳩の血ですか?」
「だーれが直訳しろっつったよ。宝石だって宝石。」
「冗談です。知っていますよ。」
貴女が知っているものを私が知らないわけがないでしょう、と鼻で笑うジェイドに口端をひくつかせながらも私はジェイドの瞳を見つめた。
「ジェイドの目、それみたいですごく綺麗。」
「…宝石みたいで、ですか…。そんな事を言われたのは初めてです。」
「まぁ、ネクロマンサー様のお顔をこんな至近距離で拝見できる機会なんてそうそうないもんね。」
「そうですね。」
くすくす笑うジェイドの笑い声が耳に擽ったい。笑うジェイドの眼鏡をゆっくりと外して、ピジョンブラッドに魅入られながらキスをした。小さくリップノイズを立てながら顔を離せば今度はジェイドが私の顔を両手で包み上げた。
「貴女の瞳はよく見ればジルコンのようです。」
「じる…こん…?」
「ブラウンジルコンです。」
「ブラウン…?あぁ、色素薄いからね、私。日本人だから遠くから見れば黒目だけど、近くで見れば茶色ってよく言われる。」
「近くで?」
「うん。ほら、ブラウンでしょ。」
と目の下を引っ張って大きく瞳を見せれば目の前のピジョンブラッドが不快そうに細められた。と、思ったら腕を取られて視界がぐるんと回った。ぼすん、と背中に柔らかいベッドが当たってスプリングが鳴いた。ミルクティー色のさらさらストレートが私に向かって簾ている。
「まったく不愉快ですね。」
「な、何が。」
ジェイドが私のお腹の上に跨がり手袋を噛んでするりと外した。現れた白い指先が私の首筋をつっと撫で上げ、唇、頬、眦に触れる。
「っ…」
「本当に、不愉快です。」
そうジェイドは言っているけど、ピジョンブラッドはやけに楽そうに歪められていた。
「貴女の瞳をこんな至近距離で見た輩がいるとは。」
「えっ、ちょ…ジェイド…?」
「さてナマエ。ここで私に気持ちいいお仕置きをされるのと、後できつーいインディグネイション、どちらがいいですか?」
「ひっ…!」
「さぁ、どちらになさいますか?」
「どちらにって……あっ、んんっ…!」
イミテーションブラッド
さぁ、行きますよ。
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