転職は慎重に(TOW)




ちょうど自分がロックスから乾いた洗濯物を受け取ったところで本当に良かったとユーリは思った。いつもなら何とか言ってそういう係り分担系から逃げていたのだが、ロックスとクレアにばったり会ってしまった以上逃げられない。クレアににっこり微笑まれて自分の洗濯物を受け取り自室に戻るとこだった。ホールを出る扉を開けたその時、ユーリは受け取った洗濯物を落とすかと思った。


「お…っ、まえ…!!」

「…え?」


ユーリはアンジュと一言二言会話をしていたナマエを見付けて、その格好に今世紀最大であろう驚きを見せた。
慌てて自分の洗濯物の中から適当なバスタオルを広げてその格好をしたナマエを包むようにして抱き締めた。


「ユ、ユーリ?何…!?」

「何はこっちの台詞だ…!」


バスタオルで包んだナマエは白い肩を剥き出しにし、バスタオルから出てしまう足は靴も履かずに綺麗な脚線美を見せていた。


「何してんだよ…っ」

「何って……転職。」


何か問題でも。とでも続きそうな、さも当たり前に言った我等がディセンダー様に呆れを通り越して何も出てこない。ユーリが見付けたナマエの格好というのは、転職したばかりのナマエの姿だった。
転職はいい。転職はしてもいい。だがしかし転職するとその職業とレベルに応じて装備できるものとできないものがあるのを考慮して欲しい。つまり何が言いたいかと言うと、転職をしたナマエは先程まで装備していたのものが装備できなくなり、真っ裸に近い下着姿の格好だったのだ。


「自分の格好考えろよな…」

「だって…。転職したんだから仕方ないじゃない。これからピッポの所にいこうと思ったの。」


ピッポの所と言っても…、ピッポの所までその格好でいくつもりだったのか。ユーリはそんなナマエに(呆れて)何も言わず、同じく当たり前のように会話していたアンジュを睨む。


「アンタも止めろよ。」

「あら、転職したらそんなのしょっちゅうじゃない。知らなかったの?」

「しょっちゅう…?」


そうなのか、と抱き締めたナマエを見ればきょとんとした顔が戻ってきてユーリはひどく混乱しそうになる。(と言っても周りから見たらそんな風には見えないのだが。)ナマエが転職したら下着姿はしょっちゅう…?自分の覚えでナマエはよく転職を繰り返していた。つまり何だ、その転職した分ナマエは下着姿になったというのか。


「ナマエ、この間も転職してたよね。あの時は装備品がなくてそのまま任務に行ってもらったんだっけ?」

「うん。霊峰アブソール。けどジューダスがマント貸してくれたんだ。さすがに寒かったよ。」

「なっ…!」


霊峰アブソールを下着姿、かつジューダスのマントを借りた、なんて。


「わっ、ユーリ!?」


ユーリはすぐにバスタオルで包んだナマエを抱え直し、ホールを出る扉を蹴るようにして自室へと向かった。ホールを出ればユーリの自室はすぐなので助かる。おまけに同室のフレンとエステルとジュディスは任務中だ。扉が開いていく時間さえも惜しく、ユーリは開いた瞬間に滑り込むようにして部屋に入った。それから自分の特等席であるソファにナマエを投げて、一緒に自分の着替えもナマエに投げる。


「着てろ。着れる装備品は俺がもらってくるから。」

「え、いいよ。ピッポの所行くし。それに、確か倉庫に着れるの何着かあった気がするし…。いちいち着替えるのめんどくさ…」

「あー、言い方が悪い。違う、そうじゃない…。くそ、」


渡した着替えを返されそうになってユーリは首を振る。そして何処か決まりが悪そうにがしがしと頭を掻いて、ソファに座ったナマエのすぐ横に手をついた。


「っ」


長身を屈めて近付いてきたユーリの顔にナマエはぎゅっと目を瞑ったが、こつん、と優しく当たったのはユーリの額で。恐る恐る目を開ければユーリの綺麗な顔がそこにあった。


「俺が嫌なんだ。」


包んだバスタオルでナマエを引き寄せるようにして再度、ユーリはナマエを抱き締めた。改めて、バスタオルの下は下着姿なのだとわかる程柔らかい抱き心地にユーリが溜め息を吐いてそのままソファに座った。もちろんナマエを膝に乗せて。


「転職は、俺がいる時だけにしてくれる?」


まるで拗ねたように言う渋面ユーリにナマエはやっとユーリの言葉を理解したのか、ぽっと頬を染めた後、嬉しそうに頷いた。

こうして、ナマエが転職を繰り返すたび、その横にはユーリが立つようになったのであった。




転職慎重




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