特濃ミルク

賑やかな教室に人であふれてる廊下、色とりどりの装飾。木々の葉も色付き、秋の深まりを感じる今日は学校の文化祭。どのクラスも隣のクラスに負けじと各々の出し物に精を出していて校外校内と人の出入りが激しいのだけど、どんなに人が多くてもやはり人離れした身長を持つこの人だけは見失うことは絶対ない。


「あ、敦くん!」


「文化祭とかお菓子食べれるだけであとはめんどくさいし。」と早々にクラスから姿を消していた敦くんがやっと教室に戻ってきた。手にはわたあめの袋とりんご飴と焼きそば、口にはバナナチョコを頬張りと収穫は絶好調のようで、随分と楽しんできたみたいだと苦笑して駆け寄った。


「敦くん、オサボリお疲れ様です。」

「何それ。」


私が駆け寄ると敦くんは眉を顰めてそう言ったので、朝から出し物を手伝わないで方々に食べ物を買いに行った人をオサボリ以外のなんて呼べばいいんです?と唇を尖らせると、敦くんはますます顔を険しくさせた。


「だから、何、その恰好。」

「恰好…?」


サボリと言われて機嫌を損ねてしまったのかと思えば、敦くんが顔を苦くしているのはどうやら私の格好のようで。私は改めて自分の格好を見直す。


「…メイドさんです?」

「だから何でそんな恰好してるの。」

「えぇ…?だって、うちのクラスは喫茶店ですよ?敦くんだってほら、執事さんの衣装が用意されてるんですから、一度は袖を通してあげないと作ってくれた子が可哀想ですよ?」


そう、うちのクラスは女子はメイドさん、男子は執事さんの格好をした『喫茶店』の看板を下げている。クラスに手先が器用な子がいて、喫茶店をやるならありきたりにメイド&執事喫茶をやろうということになり多数決でそれが決まった。目の前の敦くんはそんなの初めて聞いたみたいな反応してましたけど、ちゃんとホームルームで多数決取ってますし、委員の子が生徒会本部にプレゼンを頑張って少ない飲食枠を勝ち取ってますし、役割分担もちゃんと割り振られている。まぁ、その全ての時間を敦くんが寝ていたわけなのですが。


「聞いてない。」

「出し物決めてた時、敦くん寝てましたもんね。」

「起こしてよ。」

「起こしました。それでも起きなかったのは敦くんです。」

「それでも起こしてよ。」

「……………。」


こまりました。でも私はちゃんと起こしました。とむっと頬を膨らませると、敦くんはますます顔を顰めて食べ掛けのバナナチョコをがつがつとその場でたいらげ、食べ終わった割り箸をゴミ袋に投げ入れて、その手で私の腕を掴んだ。


「ちょっと、こっち来て。」

「えっ、で、でも私、まだ休憩の時間じゃ…」

「いいから。」


いつもはまったりとした口調の敦くんが少し早口になるのは、敦くんの機嫌を損ねた時か、心落ち着かない時だ。少し強めに腕を引っ張られ教室から連れ出される私と敦くんの背中に委員の子が「紫原テメー働けー!」と叫んでいたのを申し訳なく見ながら、私は文化祭中は物置になっている教科準備室に押し込まれた。
電気が消され、外から物置だとわからないようカーテンが引かれた準備室は少し薄暗く、敦くんの表情が見えないこともあって少しだけ怖く感じだ。


「あ、あつしくん…?」

「あのさぁ、」


なんだかとっても機嫌が悪いように見える敦くんを見上げると、やっぱり苛々とした口調の敦くんが髪をかきあげて溜息混じりに声を発した。それからだるそうに壁に寄りかかり腕を組まれると、ますます敦くんの怖いオーラが強くなって私はつい身を小さくしてしまう。


「ねぇ、こっちきて。」

「う、うん…。」


敦くんに言われて敦くんの目の前にびくびくと立つと、敦くんが私の格好を下から上へと眺めて、また深い深い溜息をついた。


「なんでメイドなの。」

「き、喫茶店するなら、やっぱこれじゃないとって…多数決で…」

「なんで名前ちんもメイド着てるの?メイド以外なかったの。」

「あ、こ、これは敦くんが…」

「俺が、なに?」

「あ、あの、一応、私、厨房の役割だったんだけど、執事役の敦くんが、あ、朝からサボるから、私が代わりに中で動けって、委員の子が…。」

「………………。」


ちょうど同じ服のサイズの子が居たから、それを押し付けられて「お前紫原の保護者なんだから代わりに出ろ」って言われてこれを着るはめになったのだ。本当はメイドや執事の服を着る子はクラスでわりと顔の整った子たちが自然と配役に回って、敦くんもその枠に入っていたのだけど、朝から本人は居ないし配膳役は足らないしで、朝は落ち着くまで少し大変だった。そう敦くんに言うと、敦くんは少し気まずくなったのか組んでいた腕を解いて「……おいで」と私をその腕の中に呼び出した。解いた腕と一緒にすこしだけ柔らかくなった敦くんの声にほっとしたけど、でもおそるおそるその腕の中に行くと、ゆっくりと腰を抱かれた。


「はー……、自業自得ってやつね…。」


そう言って敦くんは項垂れた。


「あ、あの、敦くん…その、ご、ごめんなさい…。」

「いや、謝るのこっちデショ。ていうか、俺が怒ってた理由もわからず謝るのやめて。」

「ご、ごめんなさい…」

「謝んなくていーよ、もう。つうか俺のせいだし。」


額と額をすり寄せてきた敦くんに、もう怒っていないのを感じて完全に肩の力を抜いた。ほっとした私の姿を、敦くんはじっと見詰めていて、そんな敦くんに首を傾げてみせると敦くんはまた難しそうな顔をした。


「…こうなるならちゃんと起きてればよかった。」

「…?」

「ううんー、もう過ぎたことだし。でも名前ちんはもうその恰好でウロウロするの禁止ね。」

「えっ…!わたし、戻らなくちゃいけないんですけど…!」

「いいよもー。俺とサボろ。ていうか俺から離れちゃダメ。」

「怒られます…!」

「今、出ていったら俺が怒るー。」

「そ、それもこまります…!」

「でしょー?ならここに居て。」


ほら、わたあめとりんご飴と焼きそばあるから。と物置場と化した机の上に敦くんの戦利品が転がっていた。それから敦くんは私の着ているメイド服の襟に触れたり、後ろでしばったエプロンのリボンをつんつんと引いたり、スカートの裾をひっぱったりを繰り返した。


「スカート短くない?」

「い、いえ、こんなもんですよ。」

「そー?なんかいつもと違うから短く見える。」

「す、すみません…、似合わないのは自覚、してるのですが…。」

「うーん。似合わないなんて言ってないけど、でもそれ着るの俺の前以外禁止。」


あとで部活のジャージ持ってくるからそれ着てね。と敦くんに言われてハテナマークを浮かべながらもこくりと頷く。それから敦くんは「ふーん…」「へぇ…」と言いながら衣装を隅々まで見られて、あの、そ、そろそろ恥ずかしいかな…というところで敦くんに顎を取られてキスをされた。


「あ、あつし、くん…?」

「んー。ちょっと我慢できなくなってきたかも。」

「え…?え、…んっ…!ちょ、あつくしくん…!」


腰を抱き寄せられて再度キスをされる。びっくりして目を瞑ったのだけど、太腿に敦くんの大きな手を感じてすぐに目を見開いた。さわさわと敦くんの指先がスカートと太腿の境目に触れていて、なんだか不穏な指の動きに敦くんを見る。


「ねー、シテいい?」

「だ、だめです…!絶対駄目!むり!ここ学校です…!」

「んー、でも我慢できない。ちょっとだけ。触るだけだから。」

「さ、さわるって…!」


何を言ってるんですか…!と敦くんの胸を押し返したけれど、べろりと唇を舐められて、その隙間を舌先で開けられる。すぐに敦くんの舌が入ってきて、きっと甘いものたくさん食べてきたのだろう(そう言えばさっきバナナチョコ食べてた)甘い敦くんの舌が脳内をじんわりと痺れさせる。鈍い甘いしびれだ。


「んっ、ふ、」


敦くんの甘くて濃厚なキスに意識を奪われている隙に、敦くんの指がするりとスカートの中に入っていく。内腿を触れるか触れないか、擽るように触られるとひくひくと体が動いてしまう。するとキスをしていた敦くんがふふっと笑った。


「…くすぐったい?」

「う、うん…。」

「でも好きでしょ?」


口元でそう言われ紫色の瞳にとじ込まれると、私はどうしても身動きができなくなってしまう。いつもはふわふわゆるくて可愛い敦くんなのに、こういう時だけすごく男の子を感じる。バスケをしている時の鋭利な瞳とかそういうのじゃない、また別の色を持った瞳。どきどきするの。
内腿を触れていた手が私のお尻を大きく撫でて、それでめくれるスカートの裾が恥ずかしかった。だってこんな抱きしめられてる姿勢でお尻撫でられたら、敦くんに、お尻が丸見えで…。


「ねぇ、なんだっけ。この長い靴下。」

「ニ、ニーハイ…?」

「うんそれ。超エロイね。」


そう言って片方の手でお尻をやんわりと掴まれながら二―ハイと肌の間に指を入れられて、そ、それだけなのに私の体はびくっと震えてしまった。恥ずかしくて敦くんの胸に顔を埋めたら、また敦くんが笑った気がした。


「今度二人きりの時、これ履いてきてよ。」

「え…、ど、どうして。」

「舐めたいから。ここ。」


二―ハイとパンツの間の太腿を指先で撫でられてぴくんと背中が伸びる。な、なめる、なんて、な、なにをいってるのだろうあつしくんは…!!と気が動転してしまい、「も、もってない!」と嘘をつけば、すぐに「…そういうことにしておいてあげる。」と言われて、ばればれだ…!!としがみ付くように顔を埋めた。


「あっ…、んんっ、」


敦くんの指はお尻の割れ目にそって足と足の間に滑り込む。そのまま奥の方を中指で撫で上げられて声が出そうになったのを敦くんのセーターに顔を埋めて堪える。


「ちょっとくらい大丈夫でしょ。周りうるさいから。」

「い、いやぁ…っ」

「あぁ…、うん……そうだね。こんな可愛い声、俺以外の奴らに聞かれたくないね。」


確かに、教室の外は色んな音楽や声やらで多少の物音は聞こえないだろうけど、こ、こんな恥ずかしい声、敦くんに聞かれるのも恥ずかしいのに他の人なんて、い、イヤ。唇を噛んで敦くんの指先に耐えていると、敦くんがちゅ、と口付けてきて、その唇に応えようと唇を薄く開けると、また声が出てしまう。敦くんに「しー、だよ。名前ちん。」って言われてこくこく頷くけれど、だめ、だよ、敦くんが触ってる限り、声出ちゃう。「あつ、しくん…」って名前を呼ぶと、敦くんがキスをしてくれた。下唇を吸われる甘いキスに頭の中がふわふわして気持ちよくて、「あつしくん、あつしくん」って意味もなく名前を呼ぶと、敦くんの指が不穏な動きを見せた。


「あつし、くん…!だ、だめ…!」


指先が、下着の中に入ろうとしている。


「さ、触るだけ、言った…!!」

「えー?だから、触るだけでしょー?」

「こ、これは、触るいわないよ…!」

「んー?じゃぁなんていうの?」


目を細められ、敦くんの指先が下着の中に入り込む。自分でもわかるくらい、とろりとしたものを撫でられてぎゅうっと敦くんに抱き着いた。


「ぁっ、だめぇ、」

「ほら、名前ちん、静かにしないと。」

「う、うんっ、ん」


くちくちと入口あたりを撫でられて、腰が揺れてしまう。でも、敦くんの腕がしっかりと私を抱いていて、これだと、敦くんの体に自分の体押し付けてるみたいで、もっと恥ずかしい。


「あ、ねぇメイドさん。あれ言ってよ。お決まりのやつ。」

「あっ、…えっと、…っ、ご、ごしゅじん、さま…?」

「あ、嘘。やっぱ言わなくていい。我慢できなくなる。」

「ふぁっ…!」


敦くんの指がつぷりと中に入った。自分の中に敦くんの長い指が入ってきて、自分でもわかるくらいその指をしめつけてしまう。


「はぁ、可愛い。ねぇ、もっと見せて感じてる顔。」

「や、やぁ…」

「だーめ。みせて。」


くちゅくちゅと入口が恥ずかしい音をたてているのがわかる。敦くんが喘ぐ私を楽しそうに見下ろしていて、額に目尻に頬にキスを落とす。


「ただでさえ誰にも見せたくないような恰好してるのに、そんなとろとろの顔されたらもうずっと外だしたくない。」

「あっ、で、でも、もどるっ…んっ、」

「こんな恥ずかしい顔で出るの?駄目だし。俺が絶対許さないから。」

「で、でも、ぁっ、」

「名前は今メイドでしょ?俺の言うこと聞けよ。」


メイドじゃなくても、い、いつも聞いてるし…!と言いたいのは溢れる声で掻き消されてしまう。中に入っている指の本数を増やされて「だ、駄目…!」と敦くんにしがみ付いて言っても、敦くんは美味しいお菓子を見詰めているようにぺろりと舌なめずりをして目を細めた。


「美味しそう、名前。出店の食べ物なんかよりずっとずっと。」


これ食べられないとかまじ辛い。と言いながら唇をかぶりと塞がれ、私はあっけなく達してしまった。




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