溺れる

酸素濃度が圧倒的に低い。交わる呼吸が濃密で、ガラス窓なんて曇ってしまうんじゃないかというほどの空気の薄さと、汗と、匂いと、声と体とその他いろいろ。息苦して気が狂ってしまいそう、いや現に狂っているかもしれない。ただただ名前を求める一心(一身)で腰を動かし、中を穿ち、抉る。そうすれば俺は彼女の一部として彼女の中に何か残せるだろうか。俺の下で羞恥と快楽の海にのまれ、艶やかに濡れた表情を魅せる名前を更に追い詰めながら、ふと頭の中が真っ白になりかける時がある。一つになれた快感を下半身から全身に、脳天から抜けていくような気持ちよさを感じつつも、喘ぐ名前を冷静に見下ろし、懸命に(嬌声混じりの)呼吸を繰り返す名前を愛していると感じる。俺が主導権を握っているせいで、逃げ場のない、やり場のない気持ちよさに戸惑っている名前は溺れているようだ。何に?…俺に、なぁんてクサイか。いや、悪い気はしないけどな。汗ばんだ胸元は俺の動きに合わせて痛いぐらいに揺れててこぼれ落ちてしまわぬよう両手で包むように揉みしだいた。名前は「だっ、だめっ」と喘ぎながら俺の手を掴む。何が駄目なのか、そこんとこ詳しく知りたくてこの間つい聞いてしまった。そしたら名前は何て言ったと思う?「怖くて…」「怖い?俺が?」「違っ…、あの、ど、どうにかなっちゃいそうで…」なんて泣きそうな顔で俯かれた時、ああこれが禿げる瞬間なのかと実体験した。どうにかなってしまえばいい。むしろなって構わん、そしてどうにかなってしまうのは多分俺の方だ、と。俺の動き、手に、名前の中が収斂して笑っちゃうような、溜め息のような息が出た。ハッ、気持ちよすぎるっつーの。名前は気持ちいいだろうか、多分、俺がすげぇ気持ちいいから名前も気持ちいいんだろうけど。でもきっと、恥ずかしいんだろうな。気持ちいいと思ってる自分が恥ずかしくて悶えてる。そう見える。いいのに、気持ちいいって言ってくれて。そんな堪えたような顔すんなよ、すげぇそそるからさ、それ。もっと見たくて、またはそれ以上にどうにかなっちゃいそうな顔見たくて、酷いことしたくなる。くそ、想像しただけでぞくぞくする。華奢な腰に手を添えて緩急をつける。どうにかなっちゃいそうな名前の気持ちを斟酌なんかしてやんない。だって、なぁ?はやくどうにかなったところを俺がみたいから。どうなるんだよ、どんな声で啼くんだよ、どんな表情で魅せてくれんだよ、どんな名前で俺をいっぱいにしてくれんだよ。すげぇな、俺はこんなに名前でいっぱいいっぱいなのに、まだ名前が入る隙間ができる。たくさんの名前が俺に入ってくる(実際のところ入るのもいれるのも俺の方なんだけど、)。新しい名前を見るたび俺はまたお前に恋をする。

お前に、




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