スイーツ男子三点盛り


*神田


白いクリームをたっぷりとすくった俺の指は、迷いなく名前の唇へと向かう。形のよい、本人に似た控えめな唇に撫でるようにクリームを塗り付け、滴り落ちる前にはくりと噛み付いた。口の中に籠るような濃厚な甘さが広がり、いつもなら顔を顰めて文句の一つくらい言うのだが、口先に名前の柔らかい唇が触れているので今はその甘さが心地よい。塗り付けたクリームを拭い取ってやるよう、名前の唇に噛み付いては優しく舐めとった。何度かそう繰り返している内にクリームは綺麗に無くなってしまう。俺は再びクリームをすくい、名前の唇へと指先を向けるのだが、瞳を潤ませる名前がやんわりと俺の肩を押した。


「も、もう、終わり…、」

「なんで。」

「な、なんでって……、恥ずかしいよ…。それに、ユウ、ケーキとか嫌い、でしょ?」

「大嫌いだな。」

「生クリーム食べ過ぎてあとで気持ち悪くなるよ。」

「そしたらお前が口直ししろ。」

「くち、なおし…?」


訝しげに俺を見詰める名前の唇にクリームを塗りつける。再度クリームがついた唇を舌先で撫で、僅かに空いた隙間から自分の舌をねじ込んだ。


「んっ、」


クリームの音か唾液の音か。お互いにたっぷり濡れた舌が絡み、勢いのまま名前をゆったりとベッドに寝かせた。キスを交わしながらぷつぷつと団服のボタンを外し、白い胸元を晒す。このクリームにも負けず劣らずの、白く滑らかで甘い肌。クリームが無くともこの肌は十分に甘く、誘うような香りも強い。


「わかんねぇのかよ。」


どうせクリームで後の気分が悪くなるのだ。それならば、最高に悪くなるところまでお前の肌に塗りつけ味わってやろう。肌蹴た団服から手を忍ばせ、迷いなく触れた小さな飾りを指先で転がした。


「『お前』で口直しさせろ。」





*ユーリ


(………あ…)


名前は口の中のそれが微かに上を向き始めたのを感じた。先程まではくったりとしていたものがまるで意志を持ったかのように固く、熱く、張り始めた。名前は一度顎を引き、その全景を見るため口を離せば、それは枷を外したかのように上を向いていた。


「……気持ち、い?」

「…おかげさまで。」


確認を取るかのように彼を見上げれば、見上げられた彼、ユーリは拗ねたような顔でそう返した。その顔に照れというか恥ずかしさというか、なんとも言えない、いつもの余裕そうなユーリの顔はなく、それが名前にとって嬉しかった。名前は先程まで二人で食していたチョコレートソースを指に取り、ユーリの鈴口にそれを垂らした。


「……ッ、」

「ユーリ、なんか可愛い……。」

「嬉しくないんだけど。」

「もっと気持ち良くなるよう、わたし頑張るね。」

「別にお嬢さんが頑張る必要は……っ、」


ユーリの雄の形をなぞって垂れるソースを落とさないよう、名前はユーリのそれを再び口に含んだ。ユーリの敏感なそこはソースを垂らされただけで全身が反応してしまうのに、その刺激を逃がしてやる前に名前が食い付く。名前の小さな口では到底ユーリのそれは収まりきれないが、その眼下の光景はユーリをひどく興奮させた。息が自然と荒くなってしまう。小さな唇の端から茶色いソースが零れ、今すぐ自分の舌で舐めとってやりたいと思うも、今この状況を逃すのは惜しい。誰だって好きな女に奉仕されれば、その行為が例え拙いものでもあっても嬉しくも気持ちいい。


「ユー、リの、もっとおっきくなる…?」

「くっ、わえたまま、喋んないでくんない?」


いつもの顔を浮かべているつもりだが、名前には今のユーリがどう映ってしまっているだろうか。名前はチョコソースを潤滑油としユーリの雄を頬張り、舌先で敏感な鈴口ちろちろと舐める。


「……っ、名前ッ、それ、やめろ…」


ユーリの唇から洩れる吐息は名前でもわかる。気持いいと感じてくれているのだ。ユーリの雄を思い付く限り愛撫すればするほどユーリのそれは固く大きくなる。その様が内心楽しく思えた名前はもっともっととユーリの雄を刺激し、ユーリを快楽の海へと泳がせるのだった。




*雲雀


逃げ場がなくておびえてる名前の目って本当にぞくぞくする。逃がすつもりも逃げれるつもりもないのにどうして最後まで抵抗するんだろう。いつもこれぐらいになったら僕に任せてくれるのに。なんて、やっぱり両手に手錠は怖かったかな。ごめんね、名前。でもそんなキミも可愛いよ、なんてつい舌舐めずり。


「ひ、ひば、りさん…っ、はず、してっ…」


机に名前を座らせ挿入するとすごく犯しやすい。名前は見下ろせるし奥まで入りやすいし脇に手をつけば唇が触れるか触れないかの距離に縮まれるし、ああこの机に新調して良かった。名前は僕が腰を動かすたび甘ったるいあえやかな声をあげ、頬を林檎色に染める。可愛い、可愛いな、僕の名前は。誰の目にも触れさせず僕だけのものにして閉じ込めたくなる。だから名前も悪いんだよ。僕にここまで執着させなかったら手錠なんてしないし。


「どうして?いつもと違って気持ちよさそうだけど。」

「そ、そんなぁ…っ」


ぐんっ、と自身を奥に押し込むと名前の体がくねる。気持ちいい。熱くてどろどろしてて僕をきゅうきゅう締めてて。


「言ったよね?お仕置きだって。簡単に許しちゃったらお仕置きじゃないでしょ。」

「んんっ、お、おしおき、受ける、こと、してな…、ぁっ、い」


したよ。僕より先に草壁にケーキあげたんでしょ。キミ手作りの。まぁ、冷静に公正に考えれば仕置きを受けるのは草壁の方だけど、今の名前には考えられないよね。それでいい。僕はキミに触れられる理由があればなんでもいい。


「あっ、や、そ、そこやぁ…っ」

「ん?いやなの?」


奥にぐりぐりと押し込むと名前がイヤだ弱弱しく首を振ったので、それは可哀想に、と一気に抜ける一歩手前まで腰を引いた。


「…あぁっ…!」


すると名前のナカはまるで「いかないで」とばかりに僕を締め、名前もぞくぞくと肩を揺らした。手錠で拘束した手で口元をおさえ声を漏らす名前は犯罪級に可愛い。うん、手錠してるから犯罪者だもんね。それでいい。


「困ったね。どこも名前は辛そうだ。僕はどうすればいいかな。」

「んっ、ぁ…」


浅くゆるく、決して大きくは動かず。奥にも行かないしナカからも抜かないし、嬲るように名前を苛める。決定打のない、じれったいゆるゆるとした快感が背中を走っているのは名前も同じだろうね。ああ早くひどくしてあげたい。でも仔犬みたいに呼吸して物欲しそうな顔で僕を見上げる名前もずっと見ていたい。気持ちいいのに苦しいんだね、わかるよ。僕も同じ。


「なに?なにか言いたそうだね。」


名前の濡れた唇を指で撫で、言葉を促す。


「…、は、はずして、ください…、これ…」

「どうして?お仕置きだから最後までだよ。」


カチャカチャとなる金属音が部屋に響きながらも、僕と名前の結合部からは粘着質な音が鳴る。決して激しい音ではなく、あくまでも練るような、音。


「ぁ…あ、こ、れじゃ…、やだ…」

「だから、どうして?」


じっとりと濡れた涙目の名前は美味しそう、実に美味しそうだ。
名前の顔色をうかがうよう、ゆっくり、ゆっくりと奥に身を沈める。名前の顔は苦しそうに歪むけど、声は正直だね。


「あぁっ、ん、…きょ、ちゃ…」


…わぉ。
ここで『恭ちゃん』なんて。名前も随分と狡賢くなったもんだね。僕が名前にその名前で呼ばれるのが好きだって、知ってて言ったの?深い深呼吸と一緒にみっちりとした空間を味わう。狭い、熱くて、気持ちよくて、甘い。


「恭ちゃ、はず、して…おねがい…」


埋まったまま、名前が僕に懇願の瞳を向けて、なんて絶景だと思った。あざとい。僕の名前はあざといね。キミが手作りした甘いケーキを一番に食べれなかったぐらいで拗ねる僕に、『お願い』なんて。
そんなこと言われてしまったら僕は―


「悪い子だ。そんな可愛い顔でお願いされたらきいてあげたくなっちゃうね。」

「じゃぁ…!」

「言っとくけど、きいてあげたくなるだけできくなんて一言もいってないからね。」

「!」


可愛い可愛い僕の名前。
僕にとってはケーキなんかよりもキミの方が比べ物にならないくらいの甘味だ。



スイーツ男子三点盛り

それ以上食べたら太るよ?




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