D長編


「あっ…」


秘かな水音を鳴らして、神田の指が名前の柔肉の間に滑り込んだ。ゆっくりと差し込んだ指は入った分だけ名前の熱に温められ透明な蜜を滴らせる。神田の前でふるりと震えた名前の小さな尻は白く、柔らかく、滑らかだ。ライティングテーブルに上半身を預け、残りは神田に捧げるままの自分の姿勢に名前は恥ずかしくて消えてしまいたかった。
どうしてこんな姿勢になってしまったのか、どうしてこんな行為をすることになったのか。改めて説明するのも恥ずかしい。

(報告書、書いて、た、だけなのに……っ)

そう、報告書を書いていただけなのに。何故かこんなことになってしまった。最初だって名前はきちんと机に向かい、椅子に座っていたはずだ。なのに後ろに神田が立ってから、何故か椅子は神田に取られ、後ろ抱きにされ膝に座らされたと思えばあれよあれよとこんな淫らな格好に。


「ゃ、…ゆう、ばか、だめ…っ」

「うるせぇ、大人しく待ってただろ。」

「待ってた、って、か、書き終わるまで、待ってて、よっ、…んんっ」


奥に入り込む神田の指先が上向きからぐるりと返され下向きになり、名前の下腹部が神田の指先に翻弄される。神田の指が動くたび、膣内をなぞるたび、下腹部から得体のしれないぞくぞくとしたものが全身にかけ巡り、全身の力が入らなくなる。テーブルから体がずるりと落ちそうになるのを、神田が覆いかぶさるようにして受け止める。書きかけの報告書は既に名前が何かに縋るようにして握ってしまいくしゃくしゃで、ペンも未だ握ってはいるものの、字を書くということはもうできない。


「ん…、は、ぁ…!」


机の一部が名前の吐息で湿っていた。神田はじんわりと温まったそこに手をつき、名前の耳朶を吸うように口付けた。耳が弱い彼女はそれから逃げるように肩を強張らせるがそんなもの知ったことではない。構わず耳朶を甘噛み、耳殻を舌先でなぞる。


「やぁぁ…っ」

「好きなクセに。」


最後にワザと耳元でリップノイズをたてれば、弱々しくも首を振られた。そこから見える頬は先程よりも美味しそうに色付いており、目の前のご馳走に神田は一人舌舐めずりをした。ベルトのバックルを片手で緩め、もう片方の手は自分を受け入れるそこを十分にほぐす。


「ぁっ、ん、んんっ、…は、…んぅ」


爪先立ちに、膝を擦り寄せながら愛液を流す白い腿。ひくひくと震える肩に紅潮した顔、鼻にかかった甘い吐息。それは神田でなくともひどく官能的で、しかし自分以外の誰にも見せたくない光景だった。自分の下で乱れる彼女をもっと乱させたくて、早く楔を打ち付けたくて、神田は反り上がる自身を取り出し、名前のそこにぴたりと宛がった。びくりと名前が震える。


「欲しいか…?」

「や…っ、そんな、こと、」

「名前」

「…あっ…!」


くちり、と音をたて奥に沈めていた指を抜き、その代わりとばかりに神田の切っ先が触れる。鈴口に愛液を塗り付けるようにして、名前の膣口を嬲る。名前はそれに甘い声を漏らしながらも、まるで拳銃を突き付けられたかのように体を固くしていた。少し乱れた前髪から見えた瞳はたっぷりと潤み、言わずとも神田にこの先を促せていた。


「言わなきゃいれない。」

「…ひ、ひど、…っ」


ここまでされたらさすがの名前も耐えられない。名前の体は、神田のせいで性の快楽を知ってしまった。他では補えない、二人の最も密度の濃い行為、二人だけの世界へと誘われる感覚、二人が溶け合い一つになる瞬間。知ってしまったらもう、知らないところまで引き返せないのだ。


「やだ……ゆう…っ」

「ほら、報告書はいいのかよ。」

「んんっ、ぁ、」


焦りじりと、切っ先が入ってくれそうで入らない。今更書けるわけもない報告書を促されるも名前はただ首を振るだけだ。しかし神田はあくまで名前が欲しがるまで挿れてくれる気はないのか、名前のペンを握る手ごと握り、くしゃくしゃの紙に続きを綴らせる。書けない、書けるわけがない、そんなことよりも早く彼が欲しい、そう名前は首を振り、弱々しくも唇を動かした。震えてしまう。


「…い…、」

「……ん?」


微かな声に神田が口端を上げ、名前の口元に耳を持っていく。


「ほし…い、の……」


自分の下で、震えながらこちらを見上げる名前はまるで捕食される兎のようで。


「ちょう、だい…」


潤んだ瞳はこれ以上苛めると泣いてしまいそうだ。…別に可愛い彼女が更に可愛くなるだけなので泣いてくれても一向に構わないのだが、そんな顔でそんなことを言われ何もしてあげないのは男としてどうなのか。神田は震える名前の唇に口付け、目尻にキスを落とした。
―たまらない、抱けば抱くほど愛しさが増す。


「報告書はいいのか…?」

「いい、もういいから、…ユウが、ほしいのっ、」


最初はただつまらなかっただけ。
名前が報告書に黙々と打ち込む姿がつまらなくって、少しだけこちらを向いてキスの一つや二つもらえれば大人しくしといてやろうと思っていたのだが…。

(それだけじゃ足りない…)

名前という存在に触れたら、あともう一つ、あともう一つ、もう一つと全部が欲しくなる。止まらない、彼女に対しての欲が際限無しに止まらないのだ。


「…は…、ぁんんっ…!」


媚肉を割り、名前に自分という楔を打ち込む。この細い体に自分を打ち込むこと程罪悪感溢れるものはない。それでも一つになりたい、溶け合ってしまいたい。彼女を、愛したい。


「ぉ、く……、くるし…、いっぱい、で、」

「は…、今日は、よく喋るな…」

「わ、わかんな、いの…、もう、ユウ、いっぱいで……やぁぁっ…!」


ぐりぐりと最奥に押し込めば名前の膣が神田を締め付ける。一瞬全部持って行かれそうになるも、ここまで言ってくれた名前をたっぷりと可愛がってやらなければお返しにはならない。名前の腰を抱くようにしてぴったりと奥まで押し込み、全身を痺れさせる気持ち良さに深く深く息を吐く。


「一回で済むと思うなよ。」

「…あっ、」


くちゅり、愛液が絡んだ。





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