ユーリ


滑らかな肌を辿って触れた首筋。
汗ばんで濡れた肌は時間をかけて綺麗にゆっくり全身全部舐めとってやりたいほど。触れた首は細く頼りなく、きっと俺がちょっと力を入れたくらいで簡単に息絶えてしまうのだろう。一瞬、やってみたいと思った。それもいいと思った。名前が俺の手で息絶える。そうしたら、名前は正真正銘俺のものになる。身も心も心臓も。全身全部すべて俺のもの、名前。そして俺は笑う。そんなこと、出来やしないのに。名前がいないと俺は死んでしまうのに。両手で名前の首に手をかけ、親指を中心にのせたあと、ゆったりとその手を肌に滑らした。


「んっ…」


首から鎖骨、胸の膨らみまで両手で円を描くよう滑らすと名前から上擦った声が出た。ぴくんと微かに震えた乳首を溢さないよう指でつまみ転がすと名前は緩く首を振る。


「や、やぁ…」

「なーにが?」

「そんな、や、めて…」


くりくりと弄れば弄るほど名前の中に埋ってる俺がきゅんきゅんと締められる。これ、無意識なんだとよ。可愛いな。でも俺的に気に入ってる締められ方、は。


「好きだよ、名前」

「…っ、」


これ。
俺が名前への溢れん想いを口にすると、名前ははっと顔を赤くして俺を切なく締め付ける。嬉しい、らしい。あーくそ、可愛い。こんな言葉で名前は嬉しくなるらしい(って、まだ締められてんだけど。きゅんきゅんしてる、ナカが)。俺としては、こんな使いふるされた言葉じゃこの想いは伝えきれないんだがな。愛してるよりも、もっともっと。この想いを表す言葉があればいいのにな。そうしたら俺がどれだけ名前を想っているのかわかるのに。でも、伝わない方がいいかもしれない。伝えられない方がいいのかもしれない。名前を殺したいほど名前を想っているなんて。名前も殺して俺も死んだら二人きりの世界に行こう。誰にも邪魔されない、天国と地獄の狭間。俺は絶対地獄落ちだから天国にいる名前を迎えにいく。天国だからきっと花がたくさん咲いてて、名前はきっとそこにいる。そして絶対被るはずがない俺に花冠を作ってくれて「おかえり」と言ってくれる。天国でも地獄でも、俺の帰る場所は名前だ。そう、ここだ。


「ゆー、り…?」

「ん?」

「ぁ…、な、泣いてるのかと、思った…」

「なんで?」

「つらそ、な顔してる…」


白い小さな手が俺に伸びて、俺の頬に触れた。ちっせぇ手。でも、俺が一番欲しいもの。その感触が気持ちよすぎてついその手に頬を擦り付ける。名前はそれを許して、撫でてくれる。俺をどろどろに甘やかす、甘やかしてくれる存在、名前。好きだ、好きすぎて苦しい。いつかこの手が何処かに行ってしまいそうで怖い。俺なんかいらないって、もう必要ないなんていつか言われてしまうんじゃないかと。
ああでもその時は死のう。名前を殺して俺も殺して、倒れた名前の上で俺も死ぬ。体も魂も逃さない。俺以外のところになんて、行かせない。


「ユーリ…?」

「ああ、確かに泣きそうかも。」

「どうして」

「名前んナカが気持ちよすぎて」

「は…っ、」


恥ずかしいこと言わないでよバカ…と小さいもう片方の甲で口を塞いだ名前。桃色の爪が小さくて可愛い。ああ、そういえばここにもあった。と、俺の頬にある手を取って指先に口付ける。まるでしゃぶれと言われているような形と小ささだな。口当たりがすごくいい。


「や、ユーリ、も、腕疲れたからはなして、」

「そうだな。もう、我慢できない?」


忘れていたわけじゃない、ただ名前の全身を愛撫するには時間が足りなさすぎる。ゆっくりと腰を奥の奥に沈めると、俺の言葉に小さく頷いた名前が苦しそうに切なさそうに顔を歪めた。やば、なんだその顔…ぞくぞくすんじゃねーか。隙間なくずくりと押し込んでやれば名前から高く上擦った甘い声が出た。五感で名前を感じる。六感目はなんだろうか。魂だろうか。


「名前…」

「ん、んぅ」


魂を喰らうよう、名前に口付けた。すべてが欲しい、名前の全部が欲しい、俺のものにしたい。俺しかいらないって、俺だけでいいと、言ってくれれば喜んで実行してやるのに。


「ぁ、ぁっ、やだ、ユーリ、ユーリ」


所在なさげに触れた名前の手は俺の腕を辿って指を絡める。名前の足を広げる手を取られて、隙間なく握った。ひとつになる。

好きだ、愛してる。
そんな薄っぺらい言葉じゃ名前へのこの想い伝えきれねーよ。
この溢れる想いは、そう。



殺したい。
それに近い。



愛故。




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