キャンパスラブ

珍しく神田くんが少しお疲れ気味だ。ぼふん、とベッドに顔を突っ込んで動かない神田くんを私は隣で見下ろし、その頭を優しく撫でてあげた。よしよし。無理もない。この年末は忘年会やらクリスマスやら新年会やらで神田くんのバイト先のようなダイニングバーは忙しくてなんぼでしょう。


「お疲れ。今日もあるんだよね。」

「………ある。」


突っ伏してるせいで声が少しくぐもってて、ちょっと笑っちゃった。疲れてるなー。という私も(神田くんがバイトをいれているので)バイトに入ってるけどそこまでじゃぁない。頑張れしか言いようがないよなー、と苦笑しながら頭を撫でてると、神田くんはゆっくりと顔と体を起して、私の腰に腕をまわしてきた。わっ、わ。


「………」

「…神田くん。」

「ん。」

「もしかして充電中?」

「充電…中…。」


ぎゅう、と強くなった腕に私の体は神田くんの胸へと抱き寄せられる。そうかぁ、充電中かぁ。私でも神田くんのエネルギーになれるのね、かなり嬉しいなぁ。でも確かに、私も神田くんに抱き付き抱き付かれたら元気でちゃうなー。
私の肩らへんに顔を埋める神田くんにふふっと笑って(幸せ笑いが止まらない)私からも抱き返せば、自然と絡まる視線。アイコンタクトで唇が触れあう。ああしあわせだなぁ。小さな可愛い音が部屋に響けば、私の体が後ろのベッドへとなだれ込む。
覆いかぶさるようにキスをされて、その内そのキスが舌を絡ませる濃厚なそれに代わって、ああこの流れは…、と感じてキスがいったん離れたところで神田くんを見上げた。


「…するの…?」

「……シたい。」


一応確認を取るように言えば(だって私一人勘違いしてたら最高に恥ずかしいよ。でも間違えたら間違えたで神田くんは優しいから受け止めてくれそうだけど)、神田くんは返事と一緒に頬にキスしてきた。そして手が私の胸元をさわさわしている。


「今日もバイトあるんでしょ?体力温存しなくていいの?」

「温存の前に充電したい。」


なんて言われて、もう、そんなこと言われたら断れないよ。
…断る気もないですけどねっ。


鼻先をすり合わせて、互いにくすくす笑い合った。しばらく甘いあまいキスを楽しんで、ふわふわした時間を味わった。神田くんの手は私のたいしたことない体の線をずっと撫でていて、リナちゃんのようにスタイルがよければ神田くんをもっと楽しませることができたのだろうけど、その前に神田くんの撫で方が気持ち良すぎてそういう意識は何処かへ行ってしまう。


「あ、待って…、神田くん…。」

「……?」


神田くんの大きな手が服の下に潜り込んで、私の下着ごと胸をやんわりと掴んだのを、私は制した。そして自分の体を起して、代わりに神田くんの体をベッドに横たわらせた。


「お疲れのご様子なので、今日は私が神田くんを気持ちよくさせてあげます。」


にっこり。
ちゅ、と神田くんにキスしたら、神田くんは一秒だけ目を丸くした後、意地悪そうな顔で笑った。いつも私を(色々な意味で)満たしてくれる神田くんに、今日は私が神田くんを(色々な意味で)満たしてあげましょう。
まずは私からのキス。キスは何度してもいいと思う。だって神田くんとのキスは気持ちいいし、どきどきしてそれが心地いいの。目線が合って笑い合うのも好き。唇のキスを何度もして、その流れでちゅ、ちゅ、と少し吸うようにして唇を顎、喉、首元へと下げていく。
神田くんにシャツを脱いでもらって、今度は綺麗に腹筋のついたお腹に顔を埋めた。そうそう、神田くんの体ほんと綺麗。いつ鍛えてんだってくらい男性らしくて。標準体重でお世辞にも軽いとはいえない私の体を軽々と持ち上げる筋力にどきっとしては惚れ直してしまう。


「きもちい?」


神田くんのお腹にキスをしてから、神田くんの乳首をぺろりと舐めた。


「どっちかというと、くすぐったい。」

「あれ?」


神田くんが少し笑ったのがお腹の揺れでわかった。おかしいな。気持ち良くなるようにやってるんですけどねー。と乳首をこりずに舐めては吸いついた。吸いつくとさすがに良かったのか、神田くんの息が少しだけ上がったきた。ああ良かった。
神田くんの気分が少しでも上がるように丁寧に体を舐めていると、神田くんの腰あたりに跨っているそこに固い感触が押しあたってきた。良さそうだ。


「…触っていい?」

「その前に、お前も脱げ。俺だけとか……。」

「ええー、いつもやられてるから最後まで私着てようと持ってたんだけど?」

「押し倒すぞ。」

「やだこわい。」


恥ずかしそうに言った神田くんに脅されて(?)私も服を脱いだ。それをじっと見られるのは恥ずかしいので、脱いだ後すぐキスをして誤魔化す。下着をつけたままキスを何度か繰り返すと、神田くんの指が私の胸をやんわりと揉んでは下着越しから先を見付けるような手つきになって、私はそれをやんわりと止める。


「だめ。今日は私が神田くんを気持ちよくするから。」


ほんとは、もっと触って欲しい。でも、今日はそれよりももっと、神田くんに気持ち良くなって欲しくて。少し不満そうな顔をした神田くんをキスで宥めて、私は神田くんのジーパンに手をかけた。
既に盛り上がってるそこを傷付けないようにゆっくりとズボンを脱がせて、下着も脱がす。下着に手を掛けた時、神田くんが半身を起して私を押し倒そうとしたけど私はそれに流れなかった。駄目だよ神田くん。今更恥ずかしくなっても、今日は私が(以下略)。でも恥ずかしい気持ちもよぉくわかるよ。だっていつも私がそれだもの。
いいね、たまに私がリードするのも悪くない。

下着を取り除いて、熱いそれを優しく両手で包んだ。あったかい、というより熱い。
そこにちゅ、と口付けて鈴口を舌を出して舐める。神田くんの熱がこもった息が浅く吐き出された。熱のこもった目、可愛い。私の行為(好意)で神田くんがこんな顔してくれるなんて。もっと苦しそうな顔が見たくて、もっと自分がすごいことをして顔を歪めてる神田くんが欲しくて、自分の口内に神田くんのを含んだ。おおよそ口全部を使ってもおさまらないそれを、足りない部分は指を使って気持ち良くなってくれるように頑張った。あまり下品な音はたてたくはないんだけど、激しくしようと思えば思う程音は出てしまう。でもすればするほど、神田くんは苦しそう、というか気持いいのを必死に我慢しながら(我慢しないでもっと声とか出してくれてもいいのに)、大きな手で私の頭を撫でる。髪と髪の間に神田くんの指が入りこんで、私も気持ちいい。


「……ッ、」

(神田くん、気持ち良さそう……。)


嬉しい。神田くんが気持ちよさそうで、私も気持ちが良くなってくる。思いつく限りの愛撫を神田くんにしてしばらく、神田くんが「もういい」とばかりに私の肩を押した。じゅぽんと音をたてて私の口から神田くんのそれが出て、いっそ最後までしてあげようと思ってたのに、と神田くんを見上げると神田くんの熱い目が、私を捉えた。


「お返し、だな。」

「え、いい…って、わっ、………んんっ」


置き上がった神田くんにとんと肩を押されて、今度は私がベッドに転がる。転がった私に覆いかぶさって神田くんが舌を絡めた。呼吸の間など許さないくらいな濃密なキスに私の頭は一瞬だけ真っ白になりかけるのだけど、神田くんの手がするするとブラとショーツを脱がして、ほんと、あの、脱がすのうまいよね!!(何そのゴッドハンド!)


「ああっ、ん、」

「濡れてるの、わかるか。」

「う、うるさいなぁっ。だって…あっ、」


片手で私の乳首をくりっとこねて、もう片方の手は私の入口を撫で上げ、すんなりと中に入っていった。神田くんの指、という異物感。…と書いて気持ちいいものと読む。さっきまで私の下で苦しそうにしていた顔はない。今はむしろ、いじめっこという名にふさわしいニヤニヤ顔。うう、さっきまではいい感じだったのに。


「なんだよ、その目。」

「ん、んぅ…っ、」


うらめしく唇を尖らせば、神田くんのジャイアン魂(いじめっこ大将)に火がついたのが指の本数を増やされて中のイイところを刺激された。下肢を快感という海に落とそうと指が手が激しく動くのにも関わらず、私の胸を揉む手つきは優しくて、私の息が上がってしまうのは仕方のないことだった。


「か、かんだくんっ、…そこ、き、もちいっ」

「もっと?」

「んっ、ちょう、だい…っ、」


私が、私が神田くんを気持ちよくさせるつもりが、結局いつものペースだ。でも薄々気付いてはいたんだ。彼は優しいから、全部を全部私にはさせない。というか隠れ(?)俺様体質だからいつまでも私にされるがままというのは気に食わないのだろう。


「ぁっ、だ、だめっ、」


神田くんの激しくもとろけてしまいそうな指使いに足先がベッドシーツを蹴る。胸に手を置く神田くんの手を取って手を繋げば、あと少し、というところでその手を引き寄せられて私は半身を起した。


「あ……、ん、」


置き上がると待っていたのは優しいキスで。舌と息を絡ませたキスは私を堕落させる。このまどろみは、天国のように気持ちがいい地獄だ。知ってしまったらもう、後には引き返せない。


「神田くん、も…、きて…。」


神田くんの腰に自分の足を絡めて、浅ましくも自分から求める。神田くんの胸に抱き付けば、優しく抱き返される。背中には神田くんの温かい手があって、それだけで今の私は感じられる。


「今日はお前が気持ち良くしてくれるんじゃないのか?」

「い、言うねぇ…。この状況で。」


言ってくれる。自分もいれたいクセに。とほぐされた入口を神田くんの熱いそれに擦りつけると、神田くんは「…っ」と辛そうな声にならない声を上げた。のだけど、私も「あっ…」なんて気持ちのよい声をあげてしまって…。互いに互いが欲しくておあいこな私達に、二人で笑った。
神田くんの体が私を押し倒して、あ、くる……と思ったけど神田くんが神田くんのそれで私の入口を音をたてて擦りつけてきて、ひ、ひどいっ、も、ほ、欲しいのに…。


「やっ、意地悪、しないで…っ」


私を閉じ込めるように脇についた腕を掴んで言えば、神田くんは熱い息を吐き出すとともに笑った。


「欲しいって、言えよ。」

「…ふっ…、」

「じゃなきゃ、やらない。」

「や、やだぁ…」


やらない、なんて。自分も限界のクセによく言う。と普段の私なら思えただろうが、この行為の最中はそんな事、言えない。神田くんが、私を煽るから。


「い…れて……?」

「何を、どこに。」

「……っ、」


神田くんが欲しくて、苦しい。死にそうだ。私の下肢は神田くんという存在を求めてざわざわと私をかりたてる。捨ててしまえ。この行為に、理性など、要らないに等しい。


「神田くんのを、わたしの、なかに…ちょうだい…?」

「…まぁまぁ、だな。」


口端を上げて笑った神田くん。普段はあんなにも優しい彼は、ベッドの中ではとても意地悪だ。どっちが本物の神田くん?きっとどっちも本物の神田くん。私が好きになったのは、どちらの神田くんだ。好きだよ。全部好き。


「……あっ、…んんっ」


私の中をゆっくりと押し広げていく神田くん。みっちりと質量のあるそれに、それがそこにあるだけで充足感がすごい。苦しい。けど気持ちがいい。そこにあるはずのものがやっと埋まった感じ。


「…はぁ、んっ、…く」

「中、わかるか?」

「……え…?」

「すげぇ、締めてくる。」

「あぁっ、ん、」


押し込んで始まった抽挿に私の体は悲鳴の代わりに嬌声を上げた。全身を嬲るようなゆっくりとした抽挿の合間に神田くんを見上げると、興奮した、男の顔があって、目が合うと余裕そうなフリをした笑みを浮かべる。なに、もう、そんな顔しないで。支配された気分になっちゃうよ。
浅く出し入れされてると思えばいきなり深くを突いてくる神田くんは、ほんと意地悪。ゆるゆるとした気持いい感覚に、急に強い快感を与えてくる。でもそれが、気持いい、なんて。わたし神田くんに開発されすぎじゃなぁい?
部屋に卑猥な音を響かせつつ、神田くんは私にキスをしてきた。腰は動いたままのキスなのだから声は出てしまう。それでも構わないと、むしろそれがいいのだとばかりにキスをしてくる神田くん。ばか、息、苦しいわ。鼻から息をするものの、神田くんからのキスが荒々しくてそれだけでは補えない。口呼吸したいのだけど、だから口はもう塞がれているの。


「はぁ……ぁ……はあ」


いつかこれで殺されるのではないか、なんてことを思いつつキスが終わると、神田くんに腕を引っ張られて、繋がったまま、今度は私が上になった。彼に跨るようになったこの姿勢に、挿入された角度が変わる。お…奥に…。その感覚に「ん、」と鳥肌をたたせると、神田くんの長い腕が私の腰を撫で、胸を揉み、腕を撫でて、また乳房をやんわりと掴んだ。


「気持ち良く、させてくれんだろ?」

「ぁ…、この、体勢ずるい…、お、奥、いっぱい…っ」


くちり、と腰を動かされてびくんと私の体に電流が走った。快感という名のタチの悪い電流だ。
神田くんを睨み下ろせば、それが気持いいとばかりに神田くんが笑った。ああもう、そんな顔さえかっこいいと思えてしまう私、重症。


「神田くんを、ひぃひぃ言わせて、やる…」

「既に上に乗ってるヤツがひぃひぃ言ってる。」


女の子が、ひぃひぃなんて、言わないよっ。私だって、言ってないよっ。…きっと。


「んんっ、んッ、…はぁ、」


神田くんのお腹に手を置きながら、腰を上下に動かす。上に動かすと駄目なくらい気持いのが私を襲って、怖くて腰を動かしたくないのに、腰は自然に動いてしまう。両胸は神田くんにやわやわと揉まれて、快感の波は上下共にきて体がばらばらになってしまいそうだ。いっそばらばらになってくれた方が楽だろうに。でもこの快感を一つの体で受け取めるから最高に気持ちがいいのだろう。そして相手も(きっと)同じ快感を味わってるから、一体感が、すごく心地いいのだろう。


「あっ…、…んっ…ん、」

「……、」


私の嬌声の間に、微かに入る神田くんの声。嬉しい。その気持ち良さそうな声、嬉しい。私の体でそんな顔と声してくれるなんて。嬉しい。気持ち良すぎて怖いけど、神田くんが気持いいなら、もっとしてあげたい。乱れて欲しい。もっと気持ち良くさせてあげたい。そう自分で腰を動かすけど、胸を揉んでいた神田くんの手が私の腕をたどって私のお尻をやんわりと掴んだ。


「や…、だ、だめ神田く…っ、ああっ、」


それに嫌な予感がしたけど掴まった時点で既に遅し。お尻を掴まれて、神田くんが下から突き上げてきた。怖くてそろそろと動かしてた腰が急に突き上げられてがつんと奥に当たる。


「んんっ……ふ、ぁっ」


やだ。やだやだ。まだ駄目。駄目だよ。
今は神田くんをもっともっと気持ち良くさせたいの。こんな、これじゃ、私、わたしわたし…っ。完全に握り返されてしまった主導権に私は頭を弱弱しく振った。


「だ、だめぇ…っ、神田くん、わた、し、……コレ、だめぇ…っ!」


いや、もともと主導権なんて握ってなかったのかもしれない。腰を抑えつけられ、逃げられない状態で思い切り突き上げられて、私はもう限界だった。もっと神田くんを気持ちよくさせてあげたいのに。でも次の神田くんのセリフに、私はあっけなく達してしまうのだった。


「ばか、気持ち良すぎる…」

「っ!」


彼は、色々と反則すぎる。



充電完了




先にシャワーを浴びさせてもらって(神田くんはいつも私を先にいれてくれる)、私の後にシャワーを浴びた神田くんを「じとり目」で迎えたら、神田くんはいつもの神田くんだった。


「…神田くん、バイトあるのに平気なの…。」

「平気だって言ったらもう一回いいのか。」

「いや、よくないけど。」


今日は、もう、無理です。前言撤回。まだ意地悪神田くんだ。まだ乾ききっていない私の頭を神田くんが自分のタオルを取ってわしわしと拭いてきて、乱暴だけどその空気が気持ちいい。でも、でもでもそれで私の機嫌が直ると思ったら大間違いだと睨むと、神田くんは頭を拭いてるタオルを引き寄せて私にキスをした。ちゅっと鳴ったリップノイズが少し嬉しい。


「充電、どーも。」

「…どういたしまして。」


…でも、神田くんが少しスッキリした顔をしていたから、ちょっとだけ許してあげようと思う。




***

2012/12/24

キャンパスカップルのクリスマスプレゼントはペアリングだそうです。




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