「ユ、ゥ、」


目の前にいる、端正な顔立ちの人の名前を意味もなく呼んだら、優しく足の太ももの裏側をするりと撫でられて持ち上げられた。曝け出されたそこに、は、恥ずかしい、死んでしまいたいと思いながら顔をそらしても、生憎ユウの視線を感じてしまう。じっと見られてる。だから、変な顔とか、声とか、出したくないのに、ユウがぐっと近くなって、こう、ゆっくり、じっくり入ってくると、どうしても顔が歪んじゃう、声も、出ちゃう。だって、すごく、リアル。リアルも何も実際そうなってるんだけど、でも、ユウが、私の中に入っていく感覚って、本当に、リアルなの。ああ、本当に、入ってきてるんだって感じ。自分の中に、ユウが、こう、割って入ってくる感じ。でも、その感覚が、窮屈で、苦しくて、息しづらくって、幸せなんて、言ったら変に思われちゃうかな。


「あ、んんっ」


奥にぐっとユウが入ってびくんって体が震えてしまった。恥ずかしい。恥ずかしいよ。目の前にユウがいて、少し汗ばんでて、前髪とか、目とか、ああもうどうしようすごくかっこいい。いつもギラギラしてる目が、熱くて、じっと私を見下してて、それだけで私の心臓はどきどきうるさく鳴っちゃう。全部、みっちり(っていう言葉が本当似合う)入るとユウがそのまま倒れ込むように私に体重を預けてきた。筋肉質な、厚い胸板が私の胸をむにゅって潰してユウの体重を感じる。少し重たいけど、けどこれユウ絶対全体重をかけてこない。かけていいのに。むしろかけてほしいのに。ユウはいつも私のこと細いから、とか、チビだから、とかいうけど、そんなことない。ユウの体重くらい、全部受け止められるもん。受け止めたいもん。さらさらと背中に流れるポニーテールは綺麗。ううん、ユウは全部綺麗なんだけど(ユウに綺麗言ったら怒られるんだけどね)漆黒の髪の毛は本当綺麗。天の川みたい。思わず髪に触って、その流れで頭も撫でたら、むくりとユウの顔が上がって、キスされた。う、嬉しい……。ユウにキスされるの、好き。ぎゅってされるのも好きだし、撫でられるのも好きだし、何されても、好きだけど、この時のキスってすっごく特別な気がする。何も着てなくて、何もない私に、ユウはキスくれるの。好き、嬉しい。


「名前」


吐息交じりの、ユウの声。そう、ユウの声はズルイ。顔も良くて体つきも申し分なくて、おまけに声もいいなんて、神様は不平等だ。こんな、全部が全部かっこいい人、作っちゃ駄目。だめだよ。目が合うだけでどきどきして、声聞くだけでくらくらしちゃうなんて、ずるい。ユウはずるいよ。ユウの全部が全部私をめろめろにさせる。


「んっん、」


はあって熱いユウの吐息を聞いたら、ゆっくり、少しだけ、ユウが腰を動かした。引かれる感覚はすごくぞくぞくする。それと一緒に、あ、ユウが、はなれちゃう、やだ、て思うけど、すぐにまた奥に入って、んっ、てなる。できるなら、私はあのまま、ユウと抱き合っていたいと思うんだけど、でも、ユウとこういう関係になって、夜(じゃない時もあるけど…!)、こうして抱き合ってる内に、もっと、って思うようになった。何故ってそれは、ああもう、ふしだらなおんなでごめんなさい。…き、…きもちいい、て、思うの。思えるようになったの。最初は恥ずかしくって怖くって恥ずかしくって恥ずかしくって、もうこんなの早く終われ!!って思ってたけど、ユウが、ゆっくり、私に痛くないか、苦しくないかって優しく聞いてくれるたびに、今度は、いつ、抱いてくれるのかな、とか思うようになった。(その時点で私は自己嫌悪に陥って蹲るのだけど「…おいどうした」「な、なななんでもない…!(ごめんなさいごめんなさいごめんなさい)」)だってこの時の、今のユウって、とても素敵。体が熱くて、目も熱くて、切なげな表情とか、少し余裕なさそうな声とか、見たことないユウがたくさん見れて、きゅんってなる。たまに我慢できずに口から洩れる吐息とか、ほんと、犯罪並にどきどきする。わあああユウもこんな声、出すの、とか、ユウがすごく苦しそう(あとで聞いたけど、とても気持ちいいんだって、恥ずかしいから二度と聞くなとかその後言われたけど。きゅん。)とか、いつもクールな人がこんな表情とかするんだって。しかもそれを今私が一人占めしてるんだとか思うと、ね…!!


「ふあっ、や、な、あに…!?」

「今、なんか違うこと、考えてた、」

「かんがえ、っ、あっ、あ、」


違うことって、ユウのことだよ!!って言いたいけど、ユウが、つ、突いてきて、声が、出ない。ううん、だらしない声は一杯出る、出ちゃうんだけど、言いたいことが、しゃべれない。溢れちゃうだらしない声を手で抑えてもすぐ、その手をユウが払って、ベッドに縫い付けちゃう。やだ、やだやだ恥ずかしい。こんな声。慌ててもう片方の手を口元に持っていくけど、それはお見通しだとばかりにユウに取られて、指が絡む。ユウの、手、大きい。指と指の隙間にユウの指が入って、やだ、私の体、ユウでいっぱいだよ。うれ、し、


「は、」


ユウの息。表情。苦しそう。汗、すごい。前髪額にはりついてて、かっこいい、どうしよう、すごくかっこいいこの人。わたしの、こいびととか、うそ、みたい。ユウの手が片方だけ私の腰を持つように支えたので、空いた手でユウの額の髪を分けてあげた。すると、ユウがその分けた私の指先に、キスして、にやって笑った。ひゃ、いまの、かお…!


「随分、余裕そうだな。」

「…ッ!あ、んんっ、よ、よゆうなん、て」


はずかしい、変な声ははっきり出るクセに、言いたい言葉は擦れるなんて。ぐんぐんと入ってくるユウのそれにユウはまた顔を顰める。苦しいの?ほんとに、気持ちいいのかな、わ、わたしは、き、き、…きも、ちい、けど、ユウは、ユウは?二度と聞くなって、いわれたけど、やっぱ不安だよ。きもちいって、ちゃんと、言ってくれないと、わからない、よ。


「んっ、ユ、ユウ…」

「んだよっ…」

「あっ、ぁ、…っ、き、きもち…?」

「……っ、あ…?」

「ユウ、は、きもちい…っ?」

「………ッ、お前は、どうなんだ、よ」

「わ、わた、わたしは、あっ、んんっ、き、もち、いっ、ひゃぁっ」


繋いでた手が、離れて、ユウの両手が私の腰を掴んで、さっきより、もっともっとがつがつ腰が、進められる。視界がぶれる。だけど、ユウしかうつらない。きらきらって、ユウしかうつらない。だらしなく開かれた足をユウに掴まれて、ユウの肩くらいに高く高く持ち上げられて、やああやめてはずかしいばかしんじゃえええって思ったらユウの顔がぐっと近くなって、奥に当たるのももっともっと深くなった。がんがんと当たって、視界がもうユウ全部になったら、ユウがかすれた声で、吐息で、唇が触れそうな、距離で、


「気持ちいい、」


って言われて、ど、どうしよう、思った以上に破壊力がっ。


「ばか、しめんなっ」


し、しめてないっ!


「その顔、やめろっ、」


可愛いんだよ、って言われて私、ああもうここで死んじゃうんだって、思った。





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