「かわいい、可愛いね」
一体誰に共感を求めているのか。情事中の髭切はよくそれを繰り返す。うっとりと、熱に逆上せ譫言のように口にしているから、誰に返事を求めているものではないかもしれない。
しかし柔らかな象牙の髪が彼の律動に合わせて乱れ、時折うざったそうに掻き上げるのだが、そのたび鈍く輝く梔子色の瞳が審神者を鋭く捉えて離さない。
「ひっ……、あっ、あぁ、ん……っ」
閨で見る髭切の瞳は金色にも見える。瞳に閉じ込められ、その鋭さに身震いさえ覚えて体を捩れば、逃げるとでも思われたのか、腰を掴まれ、髭切が杭を打ち付けてきた。
「逃げないでよ。君の、気持いいところに当たらないだろう」
「ちが……、にげて、なんか……、あぁっ」
言い訳は聞かないとばかりに髭切が深く入ってくる。審神者の両足を左右に割り、身を屈めた髭切が覆い被さるように甘苦しい重みを与えてくる。
「……ん、はぁ……」
息苦しさに押し出されたような吐息をもらせば、髭切が柔らかく目を細める。顔にかかった髪を優しくよけられ、何度も髭切に責め立てられ涙が滲んだ顔を覗き込められる。とても好いた男に見せられる顔じゃないと腕で隠そうするが、素早く掴み取られ、布団へと戻されてしまう。
「顔、隠さないで」
「い、や……っ、へんな、かお、してる……」
「ええ? してないよ。かわいい、ずっとかわいいよ」
だからちゃんと見せて、と髭切が伸し掛かる。髭切の体の下で審神者の胸が柔らかく潰れ、僅かに突起同士が擦れる。そんな些細な触れ合いだけでも痺れるほどに気持ちよくて、審神者はまた髭切に無防備な顔を見せてしまう。
「あ、やぁっ……」
「ふふ、気持ちいいね。あぁ、君はどこもかしこも柔らかくて、ずっと触れ合っていたい」
触れ合いなら、他の方法でもあるだろう。髭切に求められるのは嬉しいが、毎度こんな風に甘く責め立てられたら体がいくつあっても足りない。今さえなんとか形を守っているが、そのうちこの腕の中でぐずぐずに溶かされ、形をであったことさえ忘れてしまうのではないかと思ってしまう。
「主、あるじ」
体の線さえ手放したくなるような緩い挿入を繰り返しながら、髭切が唇を求める。髭切に呼ばれて目を向けた時には柔らかな舌が唇を割って口内に入ってきて、上も下も髭切に押し入られる。
「ん……、んぅっ、ふ、ぁっ……」
「ふふ、上手。もっと、もっとしよう」
上手とは何に対してだろうか。残念ながら審神者は髭切に求められるがまま身を差し出しているだけで、何かを返しているわけではない。でもそれでいいとばかりに髭切は審神者を甘く見詰め、蕩けるような甘い刺激を、鈍く、鋭く繰り返していく。
「かわいい。かわいいね、主」




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