「ひげきり……」
組み敷いた体から切なげな声がし、甘やかに髭切を呼ぶ。
ほっそりとした腕が自分に向けられるのを見て、髭切は目を細めた。
「うん?」
少し身を屈めてやれば、白い腕が髭切の首裏に回り、引き寄せられる。髭切はそれを受け入れ、審神者の体をゆっくりと抱き上げた。ぴったりと重なった下肢が抜け落ちけてしまわぬよう、しっかりと腰を抱いてやれば、持ち上げる際、審神者の中がまたきゅうと鳴き、その心地良さに髭切は笑った。
「ふふ、中、きゅうきゅうしてる」
そう言えば、恥ずかしそうにした審神者が髭切の首筋に顔を埋める。
「ん……、だって、好きだから……。髭切に、抱き締めてもらうの」
「………………」
首筋に頬を押しあて、擦り寄るようにした審神者に髭切は一瞬だけ目を見張り、その後、審神者にばれないようこっそりと長く息を吐いた。
「僕も好きだよ、君を抱き締めるの」
ふわふわ柔らかくて、甘くて、良い匂いがして、優しい気持ちになれる。柔らかな体を大事に抱きながら言えば、審神者がゆっくりと顔を上げて髭切を見詰めた。散々可愛がったからか、とろんと蕩けた瞳が可愛い。
「ほんとう……?」
「ほんとう」
どこか幼く感じる口調も、情事の最中らしくていい。いつもは本丸の審神者として気を張っている彼女だが、気を張る余裕など奪ってしまえば素直な言葉を口にする。普段もこれくらい甘えてくれればいいのにと思いつつ、甘えてくる姿を自分以外に見せたくない気持ちもある。では、この時この瞬間だけでも、好きに甘えさせてやればいいと思い直していれば、細い睫毛がふるふると震え、飴玉のような丸い目が髭切を見上げた。
「嬉しい」
「…………」
恥じらいつつも、素直な嬉しさを滲ませた表情で口付けられた。いや、口付けというにはあまりにも微かな感触だったが、そんなところがまたいじらしくて髭切は腹部に力がこもるのを感じた。
「待って、あんまり煽らないでよ」
優しい気持ちになれるといった側から、じりじりと何かが焚き付けられる。
「ひどくしたくなる」
笑みを引っ込めて眉根を寄せると、審神者は少し戸惑ったあと、もじもじと髭切を見詰めた。
「あ、あのね、激しいのは、つらいんだけどね。でも本当は、う、嬉しいの……。髭切に、求められて。髭切を、気持ちよくできて、わたし……」
「――ああ、もう」
喋らないでくれ。
と、抱き上げた審神者を再度組み敷いた。ぐりっと奥を強く突きながら押し倒せば、審神者の口から甘い声が漏れたが、訳がわからずきょとんとこちらを見上げる顔にうんざりする。可愛い。まだるいやり取りも、知らず自分の独占欲に火をつける無自覚な言動も、無垢な瞳も、苛々するほど可愛い。この膨らみに膨らんだ欲求を、全てぶつけてやりたい。
「何も考えないで、気持ちいいことだけ感じて、僕だけを見て」
「でも、私だけ気持ちいいの、……やぁ……っ」
優しく抱いてやりたいのに。
甘えてくれる以上に甘やかしてやりたいのに。
いつも髭切の気持ちだけをぶつけてしまう。
少しでもこの重苦しい気持ちを味わわせたくて、つい押し潰すようにしてしまうというのに、それでも髭切にしがみついて、髭切を想ってくれる。その健気さが好きなのに、今はひどく髭切の欲に火をつけてしまう。審神者の足を押し開き、乱れた姿を見下ろせば恥じらう姿に背筋がぞくぞくとした。
「僕を気持ちよくさせたいの? なら、僕の名前を呼んで、僕だけを見て。……ほら、こっちだよ」
可愛い、好き、と想うと同時に、乱したい、もっと自分という存在をその身に刻み付けたいという欲が溢れる。
でも、仕方がない。
君という存在が僕をそうさせたのだから。




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