髭切とお風呂

ひとつ、水滴が落ちる。
波紋を作ったそれは天井から落ちたものか、それとも、体を重ねる二人から溢れ落ちたものか。
「はぁ、あったかい……」
熱のこもった息と共に、満ち足りたような髭切の声が湿った室内に響く。ぎゅ、と抱き締められる腕に審神者の体は髭切へと引き寄せられ、中のものがぐっと詰まる。
「うっ……ぁ……」
髭切を跨ぐようにして足の上へと座らされた審神者は、奥に触れるかたい切っ先に目を閉じる。ぐりっと抉るそれはわざとか、わざとではないのか。審神者は、は、と短く息を吐き出して髭切の首に手をまわした。
「ね、あたたかい。気持ちいいね。僕、ずっとこのままでいたいや」
それは風呂の温度のことを言っているか、それとも審神者の中の話か。聞くには恥ずかしすぎるそれに審神者は口を結んで返答を濁そうとしたが、髭切の足が審神者の体を押し上げては返事を促した。
「ね、気持ちいいよね?」
「あっ……は、ぅ……っ」
わざとだ。下からゆっくりと突き上げてくる髭切の体に審神者の中がより深く抉られてしまう。体の奥底にある柔らかい部分をかたい切っ先で持ち上げられる感覚に審神者は「うっ……」と短く唸る。
「主、ちゃんと聞かせて?」
目蓋を閉じた向こうから髭切が楽しそうに微笑んでいるのがわかった。審神者が言うまで下ろすつもりはないのだろう。頼むから早く下ろしてくれ、と審神者は何度も頷いてみせたが目の前の髭切はつまらなさそうに口端を尖らせるだけだった。
「なぁに、さっきからだんまりで。お返事できないの?」
ぱしゃんっ、と湯が跳ねた音と共に審神者の体ががくりと落ちた。突然突き上げをやめた髭切に、審神者の体は水の抵抗を受けながらも落ちる。そしてその体は、下で待っていた髭切の熱棒によりまた鋭く貫かれる。
「……っひゃぁん……!」
案の定、口から甘やかな声が突き出ては浴室内に大きく響く。何度聞いても、何度声にしても、この時の自分の声だけは本当に聞き慣れない。いや、恥ずかし過ぎて聞き慣れるわけがない。思わず出てしまった恥ずかしい声に審神者は手を口元に押し当てたが、髭切は更に楽しそうにするだけだった。
「可愛い……。出ちゃったね、声。我慢してたんだよね? 声が響いちゃうから」
「うっ……、わ、わかってて……?」
「だって君が僕に意地悪するから」
意地悪されているのは明らかにこちらの方だ、と審神者は弱々しくも髭切を睨むが、髭切はそれにさえ「可愛い、何その顔、睨んでるの?」と嬉しそうに微笑む。
「君の可愛い声を僕に聞かせないなんて、君に冷たくされているみたいで僕は悲しくて胸が張り裂けそうだよ」
悲しいのならもっと悲しい顔をして欲しいのだが、まったく説得力のない笑みに審神者は唇を噛み締める。髭切の指が審神者のその唇をそっと撫でた。
「ねえ、意地悪しないで。もっと聞かせてくれるかい」
――でないと、無理矢理出させちゃうよ。
髭切の指が審神者の唇を割って入り込んできた。





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