一期一振

中に押し込まれていたものがずるりと抜けていく感覚に審神者は震えた。
「あ……っ、いやぁ……っ」
みっちりと詰まっていたものが抜けていく寂しさに全身が戦慄き、審神者は思わず目の前の男にしがみ付いた。まるで離れないでと言われているようで、体だけではなく心からも求められている気がして一期一振は満足そうに、たっぷりと笑みを浮かべた。
「ご安心を。貴女の一期はここに……」
「あぁんっ!」
優しい顔立ちの下に隠された逞しい腕に抱かれたと思えば、熱い肉茎が審神者を鋭く貫く。一期一振の体に組み敷かれ、柔らかく弱い場所を何度も突かれた審神者の体はぐずぐずと蕩け切っていた。体の線が曖昧になりそうだと思えば、一期一振の熱に貫かれる。すると、痺れるような快感が全身に走り、まだこの体は形を保っていることに気付かされる。
「ほら、ちゃんといるでしょう?」
わかりますか? などとわざとらしく聞いては一期一振は審神者の中をゆるゆると掻き回す。結合部からは耳を塞ぎたくなるようないやらしい音がし、審神者はやめてくれと首を横に振った。
「あっ、い、いちご……それ、や、やめ……」
「……わかりませんか? では、これならどうです」
「あっ、やぁん……っ!」
互いが溶け合った場所の少し上にある小さな粒を、一期一振の親指が撫でる。
「貴女のここと私のここが繋がっている。ほら、ね」
何が、ね、なのかきつく問い詰めてやりたいのだが、一番敏感な場所を擽られ、審神者は喘ぐことしかできなかった。
「……わかった?」
「わ、わか、わかった、から……んっ、ひぁっ!」
撫でるのをやめてくれと必死に目の前の男に訴えるも、男は口端を上げて皮肉そうに笑うだけだった。
多くの弟を持つ一期一振は優しい刀だと聞く。もちろん審神者の一期一振も心優しい刀だ。弟にも審神者にも、本丸の皆にも物腰柔らかな、穏やかな性格の持ち主だ。最愛の弟と審神者を見詰める目は蜂蜜色で、目が合うとその目はとろりとした輝きを見せる。
そう、そうだったはず。
「……いち兄ー!」
「っ……!」
部屋の外から小さなの足音が聞こえてきた。声の持ち主は秋田藤四郎だろうか。
審神者は慌てて一期一振の下から抜け出そうと体を起こそうとした。しかしそれは濁った蜂蜜色の目によって封じられてしまう。睨むように見下ろされた目は「動くな」とばかりに審神者を見下ろしていた。鋭い目に審神者がびくりと体を固まらせると、怯えたようにした審神者へその目が嬉しそうに細められる。そして、いつもは白い手袋に隠された指先が薄い唇の前に添えられる。人差し指を添えた唇は子供を黙らせるように、吐息のような声を出した。
「しー……」
まるでかくれんぼでもしているかのように楽しそうに微笑まれ、審神者は頭がくらくらとした。可愛い弟達には決して見せない、底意地が悪そうな一期一振の表情に心が震えてしまうなどどうかしている。
「いないのかな……。せっかくおやつにクッキーが焼き上がったのに」
残念そうな秋田の声が足音と共に遠ざかっていく。完全に聞こえなくなった足音に審神者が小さく息をつけば、それと同時に肉茎が審神者の中を穿つ。
「ひっ、あぁ……っ!」
ほんのしばらくの間、おとなしくしていた熱がまた審神者の中で暴れ出す。
「他のことに気を取られないで。私のことだけを考えて」
また濁りだした蜂蜜色の目に審神者は喉を引き攣らせた。
「余所見をしないで。貴女が心を奪われていいのは私だけだよ」
耳の中に蜂蜜を流すように甘い声が入り込んでくる。
一期一振が優しい刀だと、一体誰が言い出した。




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