そっと中指を伸ばすと、くちゅりという小さな音と共に髭切の指先が甘い蜜に濡れる。


「よく熟れてる」


耳元でそう囁けば、熟れてると表現した審神者がまこと果実のように赤く染まる。美味しそうだ、と色付く頬を舌先で舐めると小さな悲鳴があがる。
しかし悲鳴はいつもより苦しそうにくぐもっては息を漏らしていた。というのも、審神者の口には髭切の手袋がくわえられていたからだ。


「ふふ、それ、落としちゃだめだよ」


壁に審神者を押し付けるようにして体を密着させ、審神者の細い足と足の間に髭切は自分の足をさし入れていた。そうすることで足を閉じようとする審神者を阻止することができ、こうして審神者の体の中心部に触れることもできる。薄い下着の布をくぐって触れる審神者の花弁は熱く濡れていて、見えなくともわかるくらいに糸を引いてるのを髭切は感じ取っていた。


「すごい濡れているよ。触ってあげるね」

「あっ、ふうっ、ん」


花弁と花弁の間に中指を滑らせると、審神者はひくんと震えた。先程まで何をするのだとこちらを睨んでいたというのに、しばしの口付けで髭切に追い詰められるほどに弱々しくなる審神者に髭切の胸は甘く締め付けられる。


(口付けだけであんなにとろとろしちゃうなんて簡単すぎない?)


髭切が触れている箇所もそうだが、それ以上に審神者の表情が、指で撫でればすぐにほぐれてしまいそうな程とろけている。


「可愛い、どこもとろとろ」

「んっ、んん」


中指だけではもの足りず、薬指も合わせて花弁の蜜に濡らすと審神者の細い足がひくひくと震える。今にも手袋を落としてしまいそうに審神者の唇から吐息と甘い声が聞こえる。


「んー、主と口付けしたいなあ。でも手袋取っちゃったら主の可愛い声が出ちゃうよね」


それは駄目だよね? という髭切を審神者は睨む。ならばこんな廊下の隅で隠れてやらなければいいのだ、と。
ここは審神者の自室に繋がる廊下で、今の時間帯は各々出陣、遠征、内番と役目をこなしているので人の行き来は少ないのだが、まったく無いわけではない。だというのに、この髭切は突然、何の断りもなしに審神者を求めだしたのだ。
ねえ主、といつものように呼ばれて振り返れば甘い口付けが降ってきて、一体どうしたのだと問う前に息もつかせてくれぬ濃厚な口付けが続けられ審神者は髭切の胸に体を預けてしまった。いや、くったりと倒れてしまったと言った方が正しいかもしれない。
髭切の口付けは、悔しいことに気持ちがいい。


「んー、きすしたい。したいなあ」


手袋をくわえたまま唇をつけてくる髭切に、これはキスのカウントに入らないのかと審神者はくぐもった声をあげるも、髭切はそんな審神者を可愛いと笑ってまた口付けてくる。


「君のここを触りながらキス、したいなあ。いいよね。ちゃんとふさいであげるから」


君の可愛い声を聞いていいのは僕だけだから、と言って髭切が熱い息を吐き出した時だ。


「――ならば俺が手伝おう、兄者」

「ふぁ……、ん、んーっ」

「ありゃ」


髭切のまったりした声よりも低く、しっかりとした口調のそれが二人の間を割った。
くわえさせられた手袋が外され、審神者の顔に髭切ではない影が落ちる。優しくも有無を言わさず押し付けられた唇を審神者が受け止めると、よくできましたとばかりにぺろりと唇を舐められた。
まるで蛇にちろりと舐められた気分だ。
口付けた審神者の頬を髭切ではない手が撫でる。髭切が擽るような手付きで触れるとしたら、その手は包み込むように審神者に触れる。髭切の手袋を取り、審神者に口付けたのは膝丸。髭切の弟だった。


「うーん、お前、内番はどうしたんだい」

「休憩中だ」


安心してくれ、と髭切にいった膝丸の顔は安心してくれというよりも、残念だったなと言わんばかりで、今の今まで審神者を独り占め状態だった髭切はつまらなさそうに顔をムッとさせたが、審神者に口付けて満足そうに笑う弟の顔に仕方ないなとばかりに笑い返す。


「お前が内番だから主をこうして可愛がっていたのに」

「抜け駆けは駄目だと言ったのは兄者の方ではないか」

「うーん、そうだっけ?」

「兄者……」


弟の名前だけでなく、都合のいいことさえ忘れてしまうのか。いや、わざとな気もするが。
髭切にがっくりと肩を落とした膝丸にいつもの兄弟のやりとりを見ている気になるのだが、思い出して欲しいことに審神者は少しだけ着衣が乱れ、あらぬところを髭切に触れられている。
は、は、と短く息をあげる審神者に二人はやっと視線を戻し、しばしの間、放っておいてしまった審神者にするりと頬を寄せた。


「ふふ、そんな可愛い顔しなくても大丈夫だよ」

「君はちゃんと俺達が可愛がってやろう」

「あ、あぅ」


いやどうせならそのまま忘れられて逃げ出してもいいのだが。
すり寄せた頬から耳朶に甘く噛み付かれる。
髭切の指が再度審神者の中でくちゅりと音をたてて抜き差しされ、審神者は壁に背中を押し付けるようにして身を捩った。


「あ、あぁん、やだぁ」

「ん? 廊下じゃいやだ? そうだね、弟と君を可愛がるなら塗籠に戻った方が良さそうだ。あー、でまその前に、んー」

「は、……んっ」


ぷちゅ、と髭切に口付けられ、髭切の指が審神者の中をぐるりと掻き回す。


「んっ、んんーっ」

「主、一度達した方がいいだろう」


手伝おう、とばかりに膝丸が審神者の腕に撫でるように触れる。
いつどこで誰に見られるかわからないのに、ここでいかされるのかと審神者は弱々しく首を振ったが何の親切心か髭切と膝丸は宥めるように審神者に交互に口付ける。


「だあいじょうぶ。僕達しか見てないよ」

「ああ、気をやる可愛い顔を見せてくれ」


そう言って膝丸が自分の手袋の先を噛んではするりと外す。そして髭切が指をいれている下着の反対側から、指をするりと入り込ませる。その指は審神者の敏感な花芯を捉え、指の腹でそこをそっと撫でた。


「ああっ!」


がくんっ、と落ちそうになる体を髭切と膝丸が支え、審神者の耳元でくすくすと笑う。


「そんな可愛い声をあげちゃ駄目だよ」

「ああ、俺がおさえてやろう」

「あっ、あ、んぅ、ん」

「む、君の唇は、本当にクセになる……」


喘ぐ審神者の口を口で覆い、膝丸が唇に触れたままそう喋る。その間も髭切と膝丸の指は動き続け、審神者をどろどろに溶かす。


「ふふ、弟のキスは気持ちがいいみたいだね。中からたくさん溢れてきた。ああ……指さえ気持ちがいいよ……」

「兄者、俺も指をいれたい」

「いいよ、おいで。優しく触ってあげるんだよ」

「もちろんだ」

「ひぁっ、い、いい、や、やめっ、んんっ!」


髭切の指が何本か抜かれ、しかしその代わりに膝丸の指が審神者の中へと押し入られる。押し広げられる感覚に審神者は強く目を瞑り、そんな審神者を宥めるように二人が口付ける。


「可愛い可愛い僕達の主」

「君は俺達の愛を受け、愛を与えるのだ」


溢れる愛液を指で浴びながら、双振は審神者に愛を囁く。




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