D長編神田

「もっと洗って欲しいところ、ある?」


浴室に名前の楽しそうな声が響く。名前の細い指が自分の髪と髪の間をすり抜け、頭皮を優しくマッサージしていく。浴室いっぱいに名前がいつも使っているというシャンプーの香りが広がるが、甘ったるいだけでいまいち名前の匂いという感じはしない。多分、自分が彼女と同じシャンプーを使用しても、彼女と同じ匂いにはならないだろう。


「…耳の後ろ…。」

「ん?このあたり?」

「ん。」


こしょこしょと、擽るような音が浴室を満たし、ついでに鼻歌でも歌いだしそうな名前の機嫌のいい声がする。名前と一緒に湯につかり、髪でも洗おうかと石鹸を掴んだ手を名前に止められた。今日は私のシャンプー持ってきたから。石鹸じゃなくてこっち使おうね。あとついでに洗ってあげる。と、むしろ洗いたいとばかりに名前が背後に膝をつき、自分の髪に指をいれた。いつも使う石鹸よりもはるかに泡立ちがよく、おまけにくどいくらいの香りのするシャンプーに最初は勘弁してくれと思ったが、思いのほか名前の指が気持ちいいのと、その名前が楽しそうにしているのでまぁ悪くないと思ってしまった。


「流すね。目、つむっててね。」

「ああ。」


もう少し熱くてもいい、と思える温度のシャワー(多分名前はいつもこの温度なのだろう)が当たり、名前の指が優しく頭の泡を流していく。バスタブ内だと少し狭いのでそこから出て頭を洗ってもらっているが、そろそろ彼女の体が冷えないか気になってきた。一度気になりだすとだんだん心配へと変わっていき、おおかた洗い終えただろうというところで顔をあげた。


「あっ、まだ途中…」

「もういい。」


顔にかかる髪を後ろにかき上げ、名前の手からシャワーを奪って彼女の体にあてる。細い首、薄い肩、腕に湯をかけると、名前が小さく「…心配性」と呟いたので顔にもかけてやった。「もう!」と怒る名前を笑いつつ、やはり少し冷え始めている華奢な体に湯をあてていく。


「お前は肉が無いからすぐ冷えるな。」

「そんなことないよ。私冷え性じゃないもん。」

「……………」


少し見当違いな返答をする彼女の体にシャワーをあてつつ、肌に湯の温度を馴染ませるように体を撫でてやった。名前の肌はつるりと滑らかで、白く、でも体が温まり始めたのかほんのりと甘く色付いていた。少し距離を詰めて背中にもシャワーをあてる。なだらかな背中から小ぶりな尻へとシャワーの湯が滑り落ちる。


「あ、あの…、」

「ん。」


俺の手は既に彼女の背中から臀部へと形を沿うように撫で回しており、先程とは違う手つきに名前が困ったようにこちらを見上げていたが、恥ずかしがっているだけなのでこの場合止めてやる判断材料にしなくても良い。


「や、ユウ…、」


ほのかに甘い香りがする名前の首筋に口づけると、弱々しく胸を押されるが、これもただ恥ずかしがっているだけなので判断材料にはならない。ホルダーにシャワーを引っ掛け、円を描くように小さな尻を撫で回す。両手を使い、優しくすくいあげるように触れると名前が小さく身じろぐ。


「今日は、もう、」

「触ってるだけだ。」


と言いつつ、名前の首や肩に口付け、彼女の官能を引き出す。背中の筋をなぞるように指先を滑らせると、びくんと少し背がのけぞる。


「んっ、」

「触ってるだけ、だが?」

「い、いじわる、言わないで…っ」


耳元で低く呟けば名前から小さく「あっ」と声を引き出すことに成功し、彼女は恥ずかしそうに俺の肩口に頬を寄せた。子猫が身を摺り寄せるような仕草をした彼女の顎を持ち上げ、赤く色付いた唇に吸い付くような口付けをする。シャワーの流れる音に紛れて、俺と名前のキスの音がやけに艶っぽく響いた。


「ん、んぅ、」


薄い下唇を吸い上げ、上唇をぱくりと食べるように甘噛む。彼女の体をもっと自分の方へと抱き寄せるように、丸い尻を掴んでその肌に軽く指を食い込ませた。口づけた唇の向こうで非難するような声がしたが、塞ぐようにキスを重ねた。


「あっ、やだ、」

「嘘つけ。」


少しの間だけ放した唇からそんな言葉が出て、すぐさま笑ってやった。まあるい曲線と曲線の間にするりと中指を滑り込ませる。指先に、ひたりとしたものを感じた。キスだけで感じたのか、それともいつもと違うところを撫でられて濡らしたのか、名前は恥ずかしそうに目をそらしたが、そらしても逃がさんとばかりに中指を奥へと滑り込ませた。


「ユウ、やめて、そこ、やっ」

「そこって、ここか?」

「ちがっ、ぁ、ばかばかばかっ、んっ、」


喘いでんのか、罵りたいのかわからん反応を楽しみつつ、いつもの穴とは違う場所に指を這わせると名前は甘い声と共に体を固くさせた。


「そ、そこ、やだ、は、はなして、」

「ん?」

「やぁぁ…っ、やだぁ、ユウ、」


少しだけ指の先を食い込ませると、名前が体を押し付けるように縋り付いてきた。ひくひくと腹の下を動かした名前は甘いようなでも少し恐怖を感じている声をあげ、正直、俺はそれだけでものすごく興奮した。しかし、やだやだと繰り返す名前に無理強いはしたくないのでそっと指を放すと、名前は気が抜けたように俺の胸に倒れこんできた。


「ぁ…、怖い、やだぁ…」


既に体の軸がふにゃりと弱くなっている名前の体を抱きかかえ、バスタブの淵へと腰掛けさせる。少しだけシャワーの湯が名前の顔や首、胸にあたり、白い肌を滑る水滴とこちらを見上げる艶っぽい名前の目がなんとも言えない色気を醸し出す。


「んな顔すんな。無理やりでも試してみたくなる。」


ぷっくりとした唇を親指で撫で、また責められる前に口で塞ぐ。口付けながら柔らかな胸をすくいあげ、ピンとたった先を親指と人差し指で優しく捏ねる。きゅうっと摘まめば、名前が口づけの中で苦しそうに喘いだ。自分の触れた通りに喘ぎ、反応する彼女が可愛くて仕方がなく、俺は彼女をもっともっとと苛めたくなる。




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