へし切長谷部

背は床についているというのに何度経験してもこの感覚は慣れない。むしろ慣れたと考える暇もない。長谷部は事が始まると熱があるのではないかと思う程体を熱くさせ、何度も何度も魘されるように「主」と囁き、彼女を掻き抱いて快楽の底へと突き落す。


「は、ぁ、主、主…。」

「あっ、やぁっ、ぁ、」

「俺を、俺だけを見ていてください…、他の事など、考えないで…。」


懇願のように囁かれる言葉は最早命令に近い。喘いだ間に彼についてのことをぼんやりと考えていると、何を勘違いしているのか彼は引き戻すかのように彼女の膣奥を貫く。
―考えている事は貴方のことなのに。
それでも、まるで脳内の自分のことよりも今貴女を抱いている目の前の自分を見ろと言わんばかりに、楔をぎりぎりまで引いては最奥を狙ってくる。そのたび彼女はすすり泣く様な嬌声を上げ、長谷部にしがみ付く。そんな彼女を長谷部はうっとりと眺める。普段は彼女の嫌がることなど欠片もしない(させない)というのに、これに関しては何度止めてくれと言っても止まった試しがない。


「あっ、長谷部、や、や、なのっ…」

「いかがしました?我が、ぁ、主、」


荒い呼吸に混じった長谷部の声は艶っぽく、声だけで意識が朦朧としてしまう。それでも彼女は意識を繋ぎ留めなくてはならなかった。この激しい揺さぶりにしっかりとしがみ付いていなくては、あの感覚が襲ってきてしまう。


「も、や、やめ、て、ほ、しいっ、の、ぁ、」

「どうして、どうしてですか、貴女のココは、こんなにも、は、ほら、」

「あっ、だ、だめっ、はせべぇ…っ」


背は床についているし、長谷部の厚い肩にもしがみ付いているし、その感覚に導こうとしている長谷部も逃がすものかとばかりに抱き締めてくれている。それでも、少しでも気を抜くとそれは襲ってきてしまう。


「こ、こわい、のぉっ、ぁ、んっ、」

「怖い?ご安心ください、長谷部は、ここに、おります、よ。」

「ち、ちが、ぁっ、こ、怖いの、体が、落っこち、ちゃう…っ!」


彼に攻められていると体の浮遊感が止まらないのだ。手を放すと奈落の底へと落ちてしまうような感覚が襲い、もう落ちる事を諦めるしかないほどの強烈な浮遊感が体に走るのだ。そこが落とし穴なわけがないのに、頭では追いつかないような感覚が彼女を襲う。


「ああ、あっ、主…、主、」


底なしの穴に落ちたくなくて必死に彼の首を抱いて引き寄せる。その快楽の底に突き落とそうとしているのは間違いなくその男だというのに。
長谷部は縋り付く細い腕と比例して強く締められる膣内に恍惚の息を吐き出し、彼女の背を抱え、体を起こした。太腿に彼女を座らせ、またそこから違う角度で深く突き上げる。


「んっ、あっ、は、はせべ、」

「主、こうすれば、大丈夫です、落ちる時は、俺も、一緒です、」

「あっ、や、深、ぃ…っ、だめ、と、とまらない、の、…落ちちゃ…うっ、」

「ええ、落ちても構いませんよ、俺が、ずっと、ずっと、傍に、います、から、」


ああ、主、主。
頭からがぶりと喰われるような口付けをされ、きつくきつくその体が抱き締められる。いっそ彼の腕で絞め殺されてしまうのではないかと思う程に苦しい。でもそれがまた落ちていく感覚には拍車をかける。自分の体が落ちているのか、落とされているのか。意識を繋ごうとしているのに長谷部はそれを引き千切ろうとしてくる。恐ろしい程の、快感。


「ああ、いけませんよ主。」


―また別の事を考えていたでしょう。


(堕ちろ堕ちろはやく)




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