馬鹿だね、(3/3)



幾度も重なるキスは、いつものとは全然違うものだ。熱く、深く、近い。何故今までここまで近くにいけなかったのかと問題提起したくなる程、いつもと違うものになる。ゆっくりと唇を離せば名残惜しそうに俺となまえを繋ぐ糸が紡がれ、それが切れるヒヤリとした。それさえも、ぞくりとする。


「………まっ、待って待って!」


そろりと細い足を撫でた俺になまえは声を上げた。やっぱり。


「あのな、お前」

「やっぱ駄目恥ずかしいっ、ここは、恥ずかしいよ…!」

「恥ずかしいって…、それじゃいつまでも最後までできねぇ。」

「さ、最後までとか言わないでっ」

「なまえ」

「………っ、」


言い宥めるように、言い聞かすような声音でなまえの足に触れた。そして膝に唇を寄せ、ちゅ、と音をたてる。少し足を持ち上げればなまえの着ているものが擦り落ち、どんどん白い足が曝け出される。なまえは慌ててそこを押さえていたが、音をたてたキスを足の付け根へと進ませていくと、その手が弱弱しいものになっていく。そして。


「んっ、」

「なまえ」


下着が見えるところまでキスをして名前をもう一度呼べば、その手は恥ずかしそうにそろそろと落ちていった。なまえは目が潰れるくらい強く目を閉じていて、腹をくくったのか諦めたのか次のコトに備えているのか。全部がそうな気がする。あまり緊張させないように、怖がらせないように、ゆっくりとなまえを隠すものを脱がしていく。白い体はどこも白い。最後の砦とも言える一枚を脱がして、思いっきり目を閉じてるなまえにキスをした。おずおずと目を開けたなまえは目でもっとを促し、しばらくキスを続けた。少し息の上がったなまえの目は見たことがない程色気を含んでいて、恐ろしくなった。溺れる。俺は、この女に。この女がいないと呼吸ができないくらい、溺れる。いや、既に溺れそうな時点で呼吸はできていないのかもしれない。そんな、なんてザマだ。たった一人の女に。こんな、心臓を握られたみたいで。


「んんっ…!」


なまえが一際高い声を上げたのは、俺がなまえの中心に指を這わせたからだ。下から上へと撫で上げた指になまえはびくんと体を跳ねさせて声を上げた。


「ゆ、ユウ、」

「大丈夫だ。」


何処か不安そうに俺を見るなまえに安心させるように頭を撫で、もう一度そこに触れる。熱を持ったそこは撫でると待っていたかのようにとろりとしたものが指に絡み付き、指の先でその粘度を確かめた。


「あっ、ま、ぁ」


それを指に絡めるように指を上下させると次々になまえの声が溢れる。さっきまでのとは違う、高い声。すぐにでも中に指を入れて反応を見たいが、不安そうな瞳に俺の中の加護欲が勝った。全然加護していないが。


「んっ、ぁ、あ…あっ!」


そして上下する指は自然な動作で膨れた突起に辿り着く。円を書くような動きでそれを撫でれば、まぁ悪くない反応が返ってきて、びくびくと体を跳ねさせるなまえに執拗に攻め立てた。


「や、ユウ、やだっ、ぁ、そこっ、やぁっ」

「気持ち良さそうだが。」

「んっ、ん、なんか、へんっ、やぁっ」


どうやら刺激が強すぎるようだ。いやいやと首を振るなまえにもっともっとと触っていたくなってしまう。声が、やばい。部屋一杯に響くなまえの声が。指でこれなら自分のでやった時はもっと声をあげてくれるのだろうか。でもその前に指でどこまで乱れてくれるのか、見たい。見ていたい。自分の指で、乱れるなまえを。


「あっ、そ、そこばっか、やだぁっ、んっ」

「そうだな。」

「ふ…、は、ぁ、んんっ…!」


そこばかり嫌だという注文が出たので突起を弄っていた指をそのまま下に滑らせ、まずは一本。ゆっくりと中に入れた。その時のなまえの声は、俺の指を受け入れた圧されるような声で、思わず溜息が出た。すごく、興奮している。すぐに粘着質な音がして、指を奥に進めるたびになまえが吐息を震わせていた。


「ん、ん、ぁっ、あぁっ」


全部入った指を中でぐいっと曲げた。そこからゆっくりと指を引いて、半分くらい抜けたとこでまたゆっくりと埋めてなまえの具合を眺める。俺の脳を痺れさせるような甘い声に自分自身驚いているのかなまえは手の甲で口元を押さえているが、そんなつまらないことするなとばかりに指をぐちゅっと動かせば押さえている手は意味などない。


「あ、…ゃ、ん、んっ、!」

「声抑えるな」

「ぁ、や、やだぁ…っ、は、ぁ、んんっ」


ゆったりとした指の抜き差しは少しずつスピードを上げて、一度手を止めて今度はもう一本追加してやる。ぐっと入ったそこになまえの中は蠢いていて、これでよくやだとか言えるな、と思ったが、今のなまえにその感情はわからないのだろう。時間をかけて、ゆっくり解してやりたい。そして俺との繋がりを求めるようにしてやりたい。


「ぁ、………は、ぁ」


たっぷりと濡らしたそこから指をゆっくりと抜けば息を荒げたなまえがいて、初めての感覚にどうしていいかわからず戦っているように見えた。もっと乱れればいいんだよ、と先程攻め立てた突起を撫でればびくんと体を大きく震わせ、俺はそこを撫でつつ身を屈めた。


「っ、だ、だめっ!ユウ!何し、っ、やぁあっ」


最早の駄目の声に気がない。全てふにゃっとしたような甘い声になっている。可愛いな、なんて思いつつなまえの下半身に顔を埋め、その突起を舐め上げる。逃げ動く腰を掴み、襞を開いて舌先を伸ばせばびくびくと震えるなまえに溢れる嬌声。可愛い。俺がすることでどうにかなってるなまえが、すごく。声はひどく辛そうなのに艶帯びていて、今はその感覚に戸惑ってていい。今は俺がやる全てのことに、感じてくれればそれでいい。


「ふぁ、あ、やっ、んんっ、…っ!」


ちゅ、と突起を吸い上げるとなまえの体はがくっと力が抜けたようにベッドに静まり、綺麗に色付いている胸が激しく上下していた。そしてやっぱり、今にも泣きそうな顔で俺を見ていた。止めろその顔、すげ、苛めたくなる。


「ば、ばか、し、しんじゃえ…しにたい…」

「どっちだよ。」

「しにたい…」


死なせるわけ、ねーだろ。こういう行為でもこれからでも俺より先に逝くことは許さない。ま、行為自体だったら要相談で変えてあげなくもない。はぁはぁと息を荒くするなまえを宥めるように頭を撫でれば何とも気持ち良さそうに目が細められて、心臓が鷲掴みにされる。死にたくなった。


「ゆう、あの、あのね、」

「なんだよ。」

「う…、キ、キス、ちょうだい…」


ちろりと見上げられた瞳に頭がぐらぐらして、すぐにでもキスしてやろうかと思ったが、俺の唇はそこへと動かなかった。その代わり、にやりと動いたのがわかる。そしてその笑みに数々の経験と覚えがあるのか、なまえは嫌そうな顔を浮かべた。


「俺から絶対、目を離すなよ。」

「う、うん…?っん、ぁっ、や…っ!」


頷きかけたなまえに再び指を濡れたそこへと入れ、勢いよく出し入れさせる。先程ので十分濡れたそこは卑猥な水音を響かせなまえを乱れさせた。


「あっ、も、やぁっ、…!」

「そらすな。キス欲しいんだろ。」

「や、んっ、ん、も、いっ、いいっ、」


要らないと突っぱねてきた手に今更変更不可だと指を動かしながらキスをしてやった。してやれば甘えた声を出したなまえが結局キスを求めて、背中に腕が回った。隙間なくぴったりと触れた体と体に熱が増す。もっと、もっと欲しい。なまえが、なまえの全部が。なまえの全部を暴いて、全部俺だけのものに。


「〜〜〜んっ、あっ、…!!」


ぐっと押し込んだ指になまえがびくんっと大きく跳ねた後、ぎゅうっと指が閉められた。ああ、至近距離で、なまえの顔が見れた。びくっ、と体を震わすなまえの瞳には俺がいた。揺れる瞳に思わず心の声が漏れた。


「可愛い。」

「……うそ」

「嘘じゃねぇよ。」


そう、嘘じゃない。
可愛くて、俺は困ってるんだ。30過ぎたにも関わらず、落ち着きなくお前を求める自分に。

可愛くて、大切で、一ミリたりとも離したくなくて、全部俺のものにしたくて。

いい歳こいて、理性より本能が勝ってしまう。


「俺はお前が可愛くて可愛くて、いつも仕様がない男だよ。」


ほんと、俺も馬鹿になったもんだ。



馬鹿だね、神田先生



そんな貴方が好きなのよ。

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