お医者様の黒猫(3/3)






「神田。」


黒髪のツインテールを揺らしてリナリーは神田に声をかけた。食堂でいつもの場所、いつもの席で、いつもの蕎麦を食べている隣にリナリーは腰掛けた。


「昨日の夜、どこにいたの?部屋に行ったのに居ないんだもん。」


探したわ、とリナリーは言った。しゅん、と肩を落とすリナリーは誰が見ても可愛いと言っただろう。しかし神田は見ていないのか、興味がないのか、リナリーなど目もくれず、ただ蕎麦を啜った。


「知るか。なんでテメェにいちいち俺の居場所言わなきゃなんねぇんだよ。」

「…うん。」

「あら、リナリー様に神田様。」


どくん、と心臓が鳴った。


「ナマエ先生!」

「おはようございます。今朝の具合はどうかしら。」

「はい、元気です!」

「それは良かったわ。少しでも調子が悪かったら気軽に私の部屋に来てくださいね。」

「ありがとうございます!」


もちろん、神田様も。と言い残された声に神田はただただ、眉を寄せた。違う、その名前で呼んで欲しいんじゃない。そんな言葉遣いで話しかけて欲しいんじゃない。

ユウって呼べ。
もっと俺を撫でろ。愛でろ。

だけどそんなのきっと無理だ。


「ナマエセンセ。」


だって、


「何ですか、神田様。」


彼女は、


「今夜、行ってもいいか。」


彼女は、


「もちろん。私の部屋でお待ちしているわ。」



お医者様だから。(そして俺は彼女の、)








お医者様の黒猫
  

    

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