おはようからおやすみまで

体は寝てる、でも意識は起きた。うーん?なんで目覚まし鳴らないんだ?この時間に頭が起きたってことは、目覚ましが鳴る時間なんだけど…。
あ、そっか。今日は土曜日で、お父さんとお母さんが旅行に出て朝ごはんとかいつも通りに作らなくていいんだー。ならもうちょっと寝てようかな。
って、もぞりと動いたら、なんか動いた感覚がせまくてそっと目を開けたら目の前にユウ君がいた。


(……起きよう。)


うん。起きよう。ユウ君の肩からお布団が落ちないようそっと上半身を起こしてまぶたをこする。うーんと…、昨日の夕方からお父さんお母さんが出掛けて、夕飯食べて、テレビ見て、お風呂入って、そっか、一緒に寝たんだ。
となりですうすうと寝てるユウ君に寝顔はほんとうに天使だなーと思った(あ、起きてる時ももちろん天使だけど、起きてるユウ君ちょっといじわるだからなぁ。天使の顔したアクマだもんなぁ)。
こちらに顔を向けて、何やら口をもごもごさせながら寝てるユウ君は食べ物の夢でも見てるのかな。お腹すいたのかな。ユウ君よく食べてよくお腹すかせるもんなぁ。成長期すげぇ。
思わずユウ君のもごもご動いてる口に自分の人差し指を入れてみると、食べ物か何かと思ったのか、その先をユウ君はもごもごとくちびるで噛み始めた。


「ユウ君くそかわ…。」


思わずこぼれた言葉だけど、ユウ君はまだ起きる気配がない。あいかわらず寝起き悪いというかなかなか起きないというか。まぁ、ユウ君の予定はお昼からだからまだ大丈夫なんだけどね(土曜お昼はいつも道場にいってる)。
ああそれにしても、私の指くわえてもぐもぐしてるユウ君可愛いなぁ。写メとれないかなぁ。撮ったら起きる、よね。ユウ君カメラの音は敏感だもんなぁ。


(…赤ちゃんみたい。)


かわいいのう、かわいいのう。写メとれない代わりに心のシャッターを連射しておくね。そして月曜になったら田中に自慢しよう。ユウ君の寝顔くそかわって。指もぐもぐされたんだよって。そしてお前もそれを望んでユウ君にフルボッコされるといいよ。


(というか、ユウ君は私の指をなんだと思ってもぐもぐしてるんだろう。可愛いから別にいいんだけど…。)


でも起きたら即行動しちゃう私にとっては、もう起きたので次の段階へと動きたい。着替えるなり、顔洗うなり、朝ごはん作ったり。
なごりおしいけど、ユウ君の口から人差し指をゆっくり離す。待っててね、ユウ君。ご飯作ったらお姉ちゃんが起こしにきてあげるからね。
そう指を出すと、


「…待て…」


むにゃり、とした声でユウ君が抜いた人差し指を追い掛け、再び口にふくんだ。


「わっ、ちょ、ユウ君…!?」


今度こそ抜こうとした指を、次は手首ごと掴まれた!


「お、おき、おき、て…!」

「いま、おきた…あぐ…」

(あぐって!あぐって!もう可愛いなぁこんにゃろう!!)


あぐあぐと指をあまがみするユウ君にわたしは…!私は…!!


「まだ寝れるだろ…」

「ね、ねれる、けど、でも、おきたし…」

「じゃぁ、もうすこし、ねるぞ」

「ご飯とか…」

「んー…まだ、いい…」

「洗濯もしたいし…」

「乾燥機にぶちこんどけ…」

「掃除も…!」

「なまえ…」

「は、はい…」

「寝ろ、さむい」

「ウイッス」


ユウ君の言葉から圧力を感じて私は大人しく布団の中に戻った。朝食は毎日食べる私なので、起きたらお腹はすいている状態なのですが、ユウ君が圧をかけてきたのでがまんします。うう…。


「ユウ君、指もぐもぐしてたけどお腹すいたんじゃない?」

「バナナくった…夢で…」

「そっか、バナナか。バナナは買ってこないと無いかなぁ。代わりにオレンジむいてあげるね。」

「…なんでもいい…」

「あと何食べたい?あ!夕飯何する?」

「なまえ」

「ん?」

「寝ろ、うるさい」

「ウイッス」


なんだよう。
寝てるユウ君がもぐもぐしてたからお腹すいてるのかと思って言ったのに。わたしのおねえちゃんっぽい気持ちを放り投げやがって。こんにゃろう、こんにゃろう。ちくしょう、イケメンめ、イケメンならどんなリフジンでも許されると思いやがって。と、ユウ君の首元におでこぐりぐり押し付けたら、のそりと動いたユウ君がとろんとした目で私を見詰め、がぶりと口を開いた。


「は、鼻ーっ!!」

「うるせぇ、犯すぞ」

「ウイッス」



おはようからおやすみまで

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