市民プール

年々タチが悪くなってきているような猛暑に私はもうこれしか打つ手がなかった。扇風機じゃ生暖かい風をそよそよだし、クーラーつけたら何か負けた気がするし、アイス食べても食べ終わったらまた暑くなるし。あー!もう!ずっと涼しいとこってないのかよ!って思ったところに私は何か重大なことを忘れていたのに気付いた。そうだよ、夏だよ。今、夏だよ。夏と言ったら、夏しか行けないあそこに行けばいいんだよ!


「プールだぁあああああっ!!」

「…市民プールだけどな。」

『あ、走らないでくださーい。』



おねえさんとユウ君
〜市民プールの巻〜



「ユウ君準備運動した!?」

「ま、テキトーに。」


テキトーかよ!足つっても助けてあげないよ!お姉ちゃんプールにはしゃいじゃうから(さっきもはしゃぎすぎて監視員のお兄さんに注意されたけどね!お兄さんごめんね!)つっても気付かないからね!例え自分がつったとしても!!


「にしてもガキばっかだな。」

「市民プールだもの!」

「なんか、もっとこう違うとこじゃなくて良かったのか?」

「何言ってんの!?流れるプールだけで私は一日遊べるよ!!」

「…経済的だな。」


何ユウ君スライダーとかで遊びたかったの!?安心してよ大丈夫だよ!滑り台はあるから!スライダーとかお洒落なのはないけど、ほら、滑り台!ちょっと並ぶけど!小さいお友達の中で私達はちょっと目立つけど、いいって!遊んでる内に視線は感じなくなるから!毎年そうだったから!!あ、でもユウ君はかっこよすぎてある意味目立っちゃってるね。うんうんわかるよ少年少女達よ。幼いキミ達から見てもユウ君はイケメンだよね。その細腰に抱き付きたくなっちゃうよね。(っていうか細すぎだろその腰。ちゃんと中身詰まってんのか?ん?)


「ユウ君まず何から遊ぶ!?」

「何あるんだ?」

「流れるプール!」

「それは聞いた。他。」

「流れるプール!」

「うん。」

「流れるよ、プール。」

「ああ。」

「すごくない?」

「…すごいな。」

「滑り台もね、あるんだよ。」

「そうだな、とりあえず流れるやつでいい。」

「あざーっすっっっ!!」


お気遣いあざーっす!!チッスチッス!市民プールクオリティーに気遣ってくださってあざーっす!プールサイドを二人でぺたぺた歩きながら私はユウ君に直角お辞儀をしてあげた。その光景に監視員のお兄さんが「えっ?……えっ!?(ニ度見)」してたけど気にしないでください!


「で、どこから入るんだ?」

「え、何処からでも?飛び込みしなければどこからでも。」

「今時授業でも飛び込まねぇよ、腹痛ェよ。」


目の前に広がる大きな大きなおおーきな流れるプールにユウ君は立ち止まった。ほらほら、お姉ちゃんに続いて庶民プールデビューをさっさと済ましちゃいなさい。入ればプールなんてどこも一緒なんだから。今の今まで大きいプールに行ってたかもしれないけどね、市民プールだって立派なプールなんだからね!なんだか躊躇してるユウ君をそのままに暑くてたまらん私は一足先に足をプールに入れた。ひっー!きもちー!!


「っしゃいっ!」

『飛びこまないでくださーい。』

「と、飛びこんでません!ちょっと勢いよく入っちゃっただけです!!」


気持ちいいプールの水に思わず勢いよく体をざぶんって入れたら水しぶきが結構上がって飛び込んだのかと間違われた!でも半分飛び込んではいたかもしれない!ごめんなさい!


「おーい。ユウ君はよー。きもちーよー。」


あっつい気温を忘れさせるプール(ま、全身水につかってれば涼しいよね)に体温はどんどん快適な感じになってくる。でも、ま、入ってるのが流れるプールなので、プールサイドに手をつきながらも足は流れている。ユウ君は渋々といった感じにこっちまで来てくれて、ちょっと何、市民プールがそこまで気に食わないのか!


『立ち止まらないでくださーい、流れてくださーい。』

「い、いま流れます!」


監視員のお兄さんはめざといです。たまには流れるだけでなく立ち止まることも必要だと思いますよお兄さん。ざぷん、とユウ君の体も着水して、お兄さんの言う通り、私達は流れ始めた。


「気持ちーねー!」

「まーまー。」

「素直に気持ちいー言いなよー。」


流れるプールの流れにふよふよと漂いながらも、私達は手を繋ぎながら流れるプールを一周することにしました。一周の間、流れる人や人(主に小さい子やそのお母様方)がユウ君とすれ違う(いや、すれ流れか)たびにプールで遊ぶことを忘れユウ君のイケメンさに驚いていました。ま、こんなかっこいい人が市民プールにいたら驚くわな。水も滴るいけめんっ!in流れるプール!

そして流れるプールも一周し終わって、さて、次はいっちょ滑り台でも!って時にアナウンスが流れた。すると小さい子達は不満そうにも大人しくプールから上がりプールサイドへと座り込む。私もそれにならってプールに上がるんだけどユウ君は理解しづらかったようで。


「?なんだ、これ。」

「え、休憩時間だよ。市民プールには1,2時間に10分くらいあるから。」

「!?」

「おにぎり持ってきたけど食べるー?」

「た、食べる。」


市民プールの不思議な(といっても市民プール行ったことのある人は常識だけど)しきたり(?)にユウ君はおどろきを隠せないようです。とりあえずおにぎり頬張る姿が可愛いです。地元の小学生の姿と一緒です。


「ユウ君次滑り台いこー!っていうかもう並んでおこうよ!」

「(…コイツ、テンションが小学生と一緒だな。)………あ、ああ。」


休憩時間の間、私達はぺたぺたとプールサイドを小走り(走ってはいませんっ)で、滑り台の元へと並んだ。滑り台にはすでに並んでる子達がいて、その中に高校生な私達が混ざるのはとっても不自然な光景だったかもしれないけどそこは気にしない!というより高校生の私達というよりもイケメンなユウ君にみんなびっくりしてます!ま、こんなかっこいい人が市民プールにいたら以下略!

しばらくしたらまたアナウンスが流れて、それをよーいドンっとでも聞いたかのように皆がプールへと向かって飛びこんでいく。そして監視員の人達の声が響く。(監視員さん大変だよなー。いつもすみませんでした。)一方こちらの滑り台も再開されて、ピッという短い笛の合図で皆シュバーッと滑っていく。


「ユウ君笛が鳴ったら滑るんだよ!」

「お前馬鹿してんのか。」

「いたいっ!」


スビシッとチョップを額に喰らった。


「ねぇねぇ先滑っていい?滑っていい?ちゃんと上がって待ってるから!」

「待ってなかったら死刑。」

「命かけて待ってます!!」


ちょ、滑り台滑るの待ってなかったら死刑とか罪重くね!?市民プールで私の人生終わっちゃうの!?ユウ君怖い!さすがの俺様だよね!っていうか滑り台二つあったら一緒に滑れたのにね!市民プールこの野郎!


ピーッ


「じゃ、ちょっくら滑ってきまぎゃあああああああっ!!!!」


ユウ君に先滑るね的なことを言おうとしたらユウ君に背中を蹴られて予期せぬスタートダッシュ滑り台を体験しました。蹴られた瞬間の楽しそうなユウ君の顔は忘れません。その顔、ジャイアンにも負けず劣らず。滑り台ヒューッ楽しいーっ!なんて感情1ミリも味わえず妙な加速をつけて私は滑り台先の浅いプールに投げ込まれた。ぜ、全然気持ちよくなかった!楽しくもなかった!すげー怖かったんだけど!ざばーんっと勢いよく水しぶきをあびたけど、これ、小学生の時、田中とどうすれば一番スリル感じて滑り台滑れるか研究して寝の姿勢でやると半端ない速いけど鼻に水入る体験した時くらい…!これ、ちょ、鼻に水入ったんだけど。ツーンってしてるんだけど。めっちゃ懐かしいけど辛い感覚なんだけど。と鼻をすすりながらプールサイドに上がれば、ユウ君が滑り台を滑るというめっちゃシュールな光景を見た。


「ユウ君滑り台似合わないね!」

「似合っても欲しくない。」


だがしかし水に濡れる姿は天下一品である!美味しいです!っていうかプールサイドのお母様方何人かが携帯でユウ君隠し撮ってるんだけど!ちょ、こら!バレたらユウ君に携帯壊されるよ!!おまけにここプールだから投げられるぞ!プールに!


「ユウ君プール楽しい?市民プール楽しい?」

「普通。」

「普通か!そうか!私はすっごい楽しいけど!」

「…お前が楽しいならそれでいい。」

「デレた…!!」

「もう一度蹴り落としてやろうか。」

「あ、私すっごい流れたい気分すっごい流れるプールで流れたい気分わー流れたいわー今すっごい流れたいわー。」


最早それ滑り台じゃないよ!落とし台だよ!!という突っ込みはしまって、私はユウ君の手を取って滑り台から逃げだした。


『走らないでくださーい』

「うるせー!私は早くこの場から逃げたいんだよぉおっ!!」



おねえさんとユウ君

市民プール




(やっぱプール後のガリガリくんは格別だよねー!)

(あ、アタリ…)

(イケメンすげぇえええ!!)

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