レギンス!
「ユウ君!映画行こう!映画!私ポケモン観たい!」
リビングのドアをバーンと開けるとソファで足を組んで読売新聞読んでるユウ君がいた。ユウ君はコボちゃん派だそうです。私はののちゃん派なんだけどなぁ…。
「映画?」
「うん!出かけよう!」
もちろんユウ君が断るわけないと思ってる私はすでに準備万端である!今すぐ出れるよ!服も化粧も金もバッチリ。心の中にモンスターボールもあるからポケモン観に行こうぜ!ユウ君は「ちょっと待ってろ」って言って新聞を畳んでから二階に行った。やったぁー映画だぁー!!っていうかポケモンでいいんだね!デコピンは免れないと思ってたけど、いいんだね!あれか!私はもうあきらめられてるのか!ごめんね!土曜日はプリキュア見てて!
「待たせたな。」
「ううん!」
ユウ君は財布をジーパンに入れながら階段を降りてきた。いやぁ、私服はもちろんながらカッコイイよね。この間ユウ君に着て欲しくて買ったジャケットをこっそりクローゼットに入れといて良かった。とっても似合ってますよ弟よ!私はパンプスを履いて鏡の前で身なりを整えているとユウ君がジッとこちらを見てきた。
「な、なに…?」
「…なまえ、それはなんだ。」
と言われて指をさされたのは足で、私は「?」と首を傾げた。
「足?…太くてごめんね?」
「違う。それだ。」
と足をさされ、わかんないと言えばユウ君は少し躊躇ってから私が履いてる黒い生地を引っ張った。「これだ、これ。」と引っ張られたのは夏の女の子の必須アイテムこと、
「…レギンス?」
だった。
「え、レギンス駄目?可愛くない?」
「可愛くない。」
ずぎゃーんっ!!ハッキリ言われたよ!めっちゃハッキリ言われたよ!な、なぜだユウ君!確かに着ている私はアレだがレギンスは可愛いではないか!ほら、レースも付いてるんだよ!あとね、レギンスは美脚効果があるんだよ!ミニスカはちょっと…、と思ってる女の子に嬉しいものなんだよ!!
「どーしてぇ!今日はレギンスを履きたいのっ」
「駄目だ。…おい、あれがあっただろう。黒い長い靴下。」
「ニーハイだ、この野郎。」
どんだけ女の子のファッションに乏しいんだよ。リン君だってニーハイぐらい知ってるぞ。(きっと)あれか、お前トレンカの事、野球のアンダーソックスとか言っちゃう子か。制服にジャージ履いてると同じレベルとか思っちゃってる子か。ハニワスタイルか。
「レギンス嫌い!?」
「いや、嫌いってわけじゃ…。」
「じゃぁ何!」
「…何か見てて残念だ。」
テメー!!謝れ!!全世界のレギンス愛用者に謝れ!つまり私に謝れ!てか残念って何だし!
「それじゃぁ冬のタイツも残念の部類なのか!」
「タイツは別にいい。」
「なんだとっ」
なぜレギンスは駄目なのか!こんなにも女の子に愛されてるのにイケメンには愛されないのか!私は唇を突き出して拗ねてやりました。パンプスでユウ君の足をつんつん蹴ってやりました。
「レギンスー…可愛いではないか…。」
「俺は嫌だ。」
「……ぶー…。」
不満そうにこちらを見上げるユウ君に若干ときめきつつも私は更に唇を突き出して、最終手段のあのセリフを言うことにした。(…はやくポケモン観に行きたかったんだもん。)
「…レギンスを許してくれたらちゅうしてあげよっかなー。」
レ ギ ン ス !
「許す。」
「私、ユウ君のそういうところ、嫌いじゃないよ。」