クリスマスの誘惑

*『憂鬱』続きの火黒





「…で、黄瀬はどうしたんだよ」
「ちょっとだけ元気になって帰りましたよ」

ふぅん、と隣に並んで歩く火神は頷いたがありありと納得していないオーラが漂っていた。
それを楽しそうに見ながら、ふふっと黒子は笑う。

「何て言ったらあの鬱陶しいのが黙るんだ」
「それは秘密です」
「…ふん」

ちょっと拗ねたような気配を感じて、かわいいなぁなんて思いながらそっと大きな手を握った。
部活帰りの暗い道、すれ違う人はいない、聖夜。
刺すような空気の冷たさの中、ふと灯った温もりにぴくりと肩を震わせた後、火神はぎゅうと小さな手を握り返す。

「…なぁ黒子」
「なんですか?」
「うち、泊まってくか?」

どきり、跳ねた心臓に頬が熱くなる。
さっきまでの余裕はどこへやら。
俯いてしまった黒子を見て今度は火神が微笑んだ。

「明日も部活あるし、なんもしねーよ」
「……」
「ちょっとだけなら飯も用意してあるぞ」
「…バニラシェイクがあるなら」
「っし、買って帰るか」

照れ隠しに言った言葉でも、にかっと心から嬉しそうに笑われてほわっと黒子の胸が温まる。
はい、と呟いた返事は火神に届いただろうか。
繋いだ腕をくん、とひいて肩に額を預けた。

「Merry Christmas」

耳元で囁かれた甘い声と流暢な英語。
ぼん、と頬が熱くなったのは内緒。









(まだ続きます)










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